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コロシアム

古代ローマの円形闘技場(コロシアム)では、各地の奴隷が集められて剣闘士として育成され、血なまぐさい戦いがショーとして営まれた。賭け事の類も行われていたらしい。また、ショーは一対一の決闘の形式だけではなく、史実の戦争を再現した模擬戦や、動物との戦い、さらには闘技場に人工の湖を設け、模擬海戦が行われることもあったという。

「パンとサーカス」と言われるときの「サーカス」は、現代のサーカスを指すのではなく、円形闘技場の残酷ショーを指していた。両者はともに、ときの皇帝がローマの国民から支持を得るために、無償で提供されていた。

もともと、奴隷を剣闘士とした命懸けの決闘は、戦争のあとで捕虜を用いて行われていた習慣から派生したそうだ。それは、エンターテイメントというよりも、戦死者への弔いの意味を担っていた。つまり宗教的な行事の一環として行われていた。

その一方で、奴隷と動物を戦わせる習慣は、ある種のエンターテイメントとして慣行されていたそうだ。まったく最悪の時代だ。そして、宗教的な行事としての決闘と、エンターテイメントとしての動物との戦いが、あるとき融合した。そのとき、決闘はエンターテイメントのなかに飲み込まれていった。そういう経緯で、コロシアムは成立したらしい。

無償で提供されていた残虐ショーは、考えてみればバカバカしい限りだが、その箱である円形闘技場に莫大なコストが投じられ、そして現代にもそれが残ってしまっているのは、まったく不思議な話だ。

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