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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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#中国

【書評】菊池秀明「中国の歴史10 ラストエンペラーと近代中国」(講談社学術文庫)

【書評】菊池秀明「中国の歴史10 ラストエンペラーと近代中国」(講談社学術文庫)

 4000年の悠久の歴史を誇る中国。今やアメリカと並ぶ超大国となった中国は、自らの歴史に高いプライドを持っています。

 一方、19世紀半ばのアヘン戦争以降の中国近代史は、中国人にとって極めて苦い記憶となっています。列強の侵略を受け、清の滅亡後も動乱が続き、日本との戦争によって大きな被害を受けました。

 本書は、日本とのかかわりも深い近代の中国史の概説書です。1940年のアヘン戦争から、1936

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【書評】上田信『中国の歴史9 海と帝国』(講談社学術文庫)

【書評】上田信『中国の歴史9 海と帝国』(講談社学術文庫)

 14世紀の明の成立から、19世紀前半のアヘン戦争までを描いた入門的通史です。しかし、その守備範囲は政治史にとどまらず、経済・産業・交易・思想・大衆文化と多岐にわたります。単なる「明・清時代の歴史」の枠を大きく超えた、極めて読みごたえに満ちた大作です。

「海と帝国」というサブタイトルにあるように、主眼は海を舞台にした交易におかれています。皇帝や名宰相など、政治史上の有名人も登場しますが、やはり「

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【書評】武田雅哉『鬼子たちの肖像』(中公新書)

【書評】武田雅哉『鬼子たちの肖像』(中公新書)

 中国の映画やドラマには「抗日もの」というジャンルがあります。いうまでもなく、15年戦争期に大陸にやってきた日本兵を悪役とした物語です。

 中国人を見下し、時に残虐な行為も行った日本兵は、「鬼子」と呼ばれて忌み嫌われました。戦中に描かれた中国側のプロパガンダポスターなどを見ると、醜悪に描かれた日本人の姿を見ることができます。

 本書は、「中国人が日本人をどうとらえ、どう描いてきたか」をテーマと

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【書評】会田大輔「南北朝時代」(中公新書)

【書評】会田大輔「南北朝時代」(中公新書)

 中国における「南北朝時代」といっても、ほとんどの人はぴんと来ないと思います。

 諸子百家を出した春秋戦国時代、始皇帝や項羽・劉邦のいた秦・漢時代、多くの英雄豪傑がいた三国時代と比べても、著名人は少ないです。また、遣隋使・遣唐使という形で日本史とのかかわりがある隋唐よりもイメージはしにくいはずです。

 有名な三国時代と隋唐に挟まれた五胡十六国・南北朝時代は、多くの王朝が短期間に興亡したこともあ

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【書評】柿沼陽平『古代中国の24時間』(中公新書)

【書評】柿沼陽平『古代中国の24時間』(中公新書)

 昔を舞台にした小説やドラマ、マンガなどを見ていると、「当時の人って、本当にこんな感じだったのかな」と思うことがあります。逆に言えば、作り手は細かい描写をどうすればいいか悩むでしょう。

 戦乱や政治上の動きならば史書に残りますが、普通の人が日常どうしていたかについては中々記録に残りません。様々な記録から、生活の様子の断片を読みとって再構成するしかないのです。

 本書では、秦・漢の時代(今から2

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