書き損じのエッセー
人間という存在の不安定さのために苦難したことがある者ならば、絶望という感覚を知っているだろう。登山者でもゆらゆら散歩する者でもいいが、たとえばもしもあるとき、わたしは目を覚まして、もしくは夢の中で、視界が暗いことに気づき、しかしながらわたしは歩いているのではないかということを朧げにそう思ったとする。また全身の感覚が徐々に快復しているように思えてきたとしたら。わたしは地面が土であると思った。耳鼻はおのおのに風を感じ、一方に木々枝葉の音を聴き、一方に夜の露の湿った、ハーブと土の匂