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2019年1月の記事一覧

詩 221〜225

詩 221〜225

  日射病

袖をしぼって 汗をふき
ヘリコプターを見あげる日
まぶたでつつんだ蝉時雨
石の階段 十段目

ファスナー おろした 指が欠け
堤防づたいに歩く午後
宝探しの その 宝
ダイヤモンドかカブトムシ

大事な部品がたりなくて
握手をこばむ権利 なく
駅のベンチで金魚は昼寝

本棚 めぐって 泣きやまず
理解できない その 鼓動
出会えるのなら時間旅行も

  聖家族

髪を洗って ベランダ

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詩 215〜220

詩 215〜220

  創世

空 かぐわしく 袖 はらい
花 そよがせて 月 のせて
思いえがいた神さまは
根に 口 開き 目 ころがし

島 晴れわたり 窓 割れて
風 不機嫌で 人 ほどけ
わがまますぎてごめんなさい
罪ほろぼしは局地的

かしこいだけでゆるされて
いくつも連結 つくりあげ
失敗作を 手づかみ 食べる

変わりつづける かげ ひなた
あなたまかせの幸福は
結局 わたしのはじまりだった

  それ

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詩 211〜215

詩 211〜215

  嬰児のパレード

生まれてはじめて思い知る
風にかたちがあるように
まるで夢でも見るように
気が遠くなる やけどする

なんて不思議な発光体
行列 つくって 道を行く
平野はなだらか 山 ふたつ
港へつづく 道を行く

焼却されると知らないで
まるで明日があるように
ビニールぶくろのなかに手を入れ

同じことだけ考えて
せせら笑う 目 あなたはだめだ
見せかけの穴 もういらないから

  泥の

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詩 206〜210

詩 206〜210

  劇場

潮騒 むすんで 切る 毛糸
ただ焼く 光 針千本
フィルムを首に巻いている
軒をならべて 長い道

白黒の絵がかざられた
踊り場に立つ名もなき子
絨毯の色に目が燃える
片足で立つ赤鸚鵡

夜の女王は退屈で
気まぐれに寝て 動けない
かわいそうでもしかたなかった

川の流れは絶え間なく
瓶詰幽霊 灰皿で
ぐるぐる まわる 浄化の日まで

  乾季

色がなければ影もなく
息がみだれておさ

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詩 201〜205

詩 201〜205

  追憶

白黒 錯綜 夜明け前
遠いむかしの物語
発掘したもの そこにある
空から落ちてきたように

くもりのち晴れ 夜明け前
失われていた物語
未完成でも 不滅でも
ずっとおだやか 花 ひらく

路上に木漏れ日 めぐみ 食べ
あやまち 数回 胸をはる
陳腐な複製 鎮座まします

衰弱していく わたし 文字
距離はみじかく 被害 さけぶ
そんな資格はあなたにはない

  空中遊泳

ここからなが

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詩 196〜200

詩 196〜200

  帰還

細い目としわ 最愛の
あなたは食べかけ 毎日の
儀式にうんざり 表情は
それほど遠くはない 衛星

起こした人は誰ですか
ごらんのとおりのにせものが
あわれな おろかな赤い点
肺の中から春を呼ぶ

子供部屋でも お別れの
合図がかわされ ささやかれ
迷惑ですか こんなことさえ

口癖 忘れて もう残暑
まんざらでもない ありがとう
星空 ささえて あざやかに舞う

  無機物

手がか

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詩 191〜195

詩 191〜195

  シルバーホワイト

意外なところで光るから
さめた両目が必要で
たしかに見れば 滑走路
雨のしずくをたたきつけ

ちらばり かたまる 生命を
拾いあつめて 完璧な
立体 できたら 雪のよう
あなたの顔にたたきつけ

理想と真実 あらそわせ
負けたら ただちに廃棄して
誰かがよろこぶ わたしもうれしい

やがて裏切り すみきった
音を探して 迷いこむ
そこは夕立 どうせみにくい

  エーテル

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詩 186〜190

詩 186〜190

  むかしむかし

裏通りには なんとなく
あたらしい顔 約束に
手を置く 本の罫線は
不滅をほこる城壁で

木星 土星 イヤリング
この電線で 北風が
歌う 心を運ぶ 旅
膝をそろえて 腰かけて

口笛 ひびく 嬉々として
かつての偉大な王国の
歴史を解放する 勇気まで

抱きよせるもの 本当に
みすぼらしくて 幻滅で
手かげんせずに 愛するとしたら

  もうすぐ帰る

テーブルクロスに しみ

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詩 181〜185

詩 181〜185

  ループアンドスピン

不安なままで流れましょう
ここは飛ぶにはやわらかく
泳ぐとしてもどろどろで
ベッドだったら痛すぎて

だからね 空気 大事なの
ぎらぎら ことばをふりしぼり
くるしいふりして顔 しかめ
これじゃなんだか微熱だよ

自由にまぶたをとりかえて
それでいいなら あなた 誰
そんなループは かなしくないの

放置されそう 走馬灯
だって だから と もう 倍速
最後の手段は高気圧

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詩 176〜180

詩 176〜180

  魔法つかいの弟子

宝箱の底 横たわる
存在としてのきみだから
いつでもおいで トンネルで
いっしょに待ちたい 収穫祭

犠牲はいつでも見送られ
答案しだいでみとめられ
尊敬されるとしても なぜ
どうして わたしの声を聞く

うしなうことにおびえない
あとかたもなく 整地して
搭載 嫌悪増幅装置

癒やせないとは思わない
他愛ない罪 忘れれば
いつでも わたしの欲望 あげる

  固体

うし

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詩 171〜175

詩 171〜175

  ハウリング

「どんなハウリング」 こんな歌
炭酸 溶けない 希望 夢
必然的に 毛穴 あき
クリーム 塗りたい そんな朝

納得できない 残滓 こそ
共同幻想 「それはなに」
ブレーキランプの銀河系
同心円の獏の群

いつものあいさつ うつろな目
実はトレモロ たよりない
ホワイトノイズの平和などない

苦しまぎれの握手には
視線 集中して 貧血
かさねる 広がる ひとみに夕焼け

  音楽

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詩 166〜170

詩 166〜170

  絶交

今回だけは痛いから
この記憶力 切りはなす
たいらな岩の上で待ち
そっぽを向いてあくびする

なかまはずれは 未完成
温室のなかで なかよしで
図工の時間のいじわるも
鼻がつまって おしまいだ

腰をおろした 真正面
説明しづらいこともある
わたし 多かれ少なかれ 肉

眼光するどく 夢一夜
一夜にして 吐く アヒルの子
盗み聞きする 悪い子は どこ

  落第

言われたとおりに対岸

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詩 161〜165

詩 161〜165

  デッサン

とりとめのない虚脱感
鎧戸 のぞく 夕闇に
目がくらみ 血に 飢え しびれ
つもり つもって 無我夢中

思い上がった生返事
うずまく 黒煙 白煙 が
長々 のびる もう 歓喜
さわぐ 心が 気に入らず

力まかせに 折り やぶる
花鳥風月 また 不平
印象だけは正常でした

考えている その ゆくえ
槍で つついて 穴をあけ
詰めこむものは 亡霊くらい

  アップルパイ

そう

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詩 156〜160

詩 156〜160

  進化論

なにかがはじまる いらだちに
まぎれて 暗い 床の下
よく見てほしい わたしの血
交信中のぬくもりに

後悔なんて 幻影で
燃焼過程 だとしても
あせって ごまかし いつまでも
空虚をなげく 見捨てれば

高圧線の五線譜に
時間を閉じこめ むさぼって
そんな資格があなたにあるの

ちぎった ことばが 生きていて
先まわりして 追いついて
立ちふさがって 人は 飛べない

  めぐみ

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