魔法つかいの弟子のコピー

詩 176〜180

  魔法つかいの弟子

宝箱の底 横たわる
存在としてのきみだから
いつでもおいで トンネルで
いっしょに待ちたい 収穫祭

犠牲はいつでも見送られ
答案しだいでみとめられ
尊敬されるとしても なぜ
どうして わたしの声を聞く

うしなうことにおびえない
あとかたもなく 整地して
搭載 嫌悪増幅装置

癒やせないとは思わない
他愛ない罪 忘れれば
いつでも わたしの欲望 あげる




  固体

うしろ まうしろ さす あかり
流れる時間 何年目
横にたおせば 何光年
思い つながる ピアノ線

こわれた人が人として
生きていくのはむずかしい
ぶざまな鉄のかたまりが
くさった果実の皮 やぶり

石にも種にもなるでしょう
水や風 土 から かたち
もらって 心に歯車 かませ

やっと会えたと涙して
強いことばで 日々 語り
背がのびすぎて 夜空 ひるがえし




  ときには

ときには わたしも 卵 割り
純白 まじった 血をなめる
よく分からない なくしもの
誰が信じる ねえ 誰が

ときには わたしも沈黙し
やさしい人だと誤解され
いつもの軽蔑 忘れられ
雨天延期で また ひと息

唯一 凶器と呼べるもの
思うぞんぶん 投げつけて
優先席で被害者 演じて

口実 皆無 脈をとり
翻訳したなら四百字
泣きごと マイムマイムの準備




  見学希望

長袖 ボタン 全部 かけ
ほんの少しでいいから と
わたしの目から身をかくし
気どる バレリーナ 今夜だけ

首にかかった腕の輪で
たった一度のあやまちで
へたなジャンプに身をささげ
ちぢれた髪がかわいそう

勇気を出して話しかけ
口唇 噛んで 息をとめ
なんて かわいい 影絵のいちご

こわがりだから クロールは
最上階から見てるだけ
なにがちがうか おしえてあげよう




  転校生

かたい木の床 広々と
果ては 壁だか 窓辺だか
あるいは斜面 おぞましく
ぞっとするほど 自由な日

風通しがいいことだけで
存在 選んで こまってる
なにがおかしい なにもかも
循環しないで白骨化

ねじの回転 はげまして
行けども 行けども 卑屈な日
たずねる人は鍵穴だらけ

品行方正 ほめられて
胴あげの餌食 おとなしく
凹凸 ならせば 夏のロケット

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