創世のコピー

詩 215〜220

  創世

空 かぐわしく 袖 はらい
花 そよがせて 月 のせて
思いえがいた神さまは
根に 口 開き 目 ころがし

島 晴れわたり 窓 割れて
風 不機嫌で 人 ほどけ
わがまますぎてごめんなさい
罪ほろぼしは局地的

かしこいだけでゆるされて
いくつも連結 つくりあげ
失敗作を 手づかみ 食べる

変わりつづける かげ ひなた
あなたまかせの幸福は
結局 わたしのはじまりだった




  それでもあなたは

波うちぎわの葉の上に
降りたつあなたは退屈で
これからなんにも起こらない
いまさら帰れもしないから

うつろな胸に髪をはり
きつく編みあげ そっと触れ
音を しらべを たしかめた
産声 ひびかせ 歌いだす

水は泡だち 風が吹く
光 ほほえみ 花も咲く
鳥 めざめたら 魚 生まれて

それでもあなたは退屈で
落とした涙が ほら たまご
殻をやぶった わたしと世界




  混血種

しずまりかえり ここにいた
たしかに さっきは いたはずで
枯枝なんて 魔女の指
空へ向かって 雨を呼ぶ

世にまたとない歌声は
長く尾を引き 透明に
くつろぐわけにもいかないで
草むら そっと目をとめた

いちごは割れて ただ一個
拾われるのを待っていて
わたしはなぜかあなたを思う

わたしの座標 定まらず
ただよいながら 遠くなり
とうとう 風船 渡せなかった




  遭難

寝る前 置いた 首かざり
下に天気図 引く おろか
色あせ 酸化 紺碧に
空だか 海だか 背中だか

あなたの胸は無限大
マトリョーシカも阿呆船
電球 蝋燭 ランプ 燐
守ってあげる 憎悪さえ

身のほど知らずのクリオネは
わたしは胎児 顔が濡れ
帆柱 たおれる 見たくなかった

信じていたのに 舌を出す
悪魔に席はないらしい
やせる ほろびる 広い おだやか




  降臨前夜

前髪 そろえて 地平線
ヤギの頭に鳥がのり
スポットライトはどこからで
誰を照らすの 月面で

煙突 たおして 水平線
ネジの山でも ビスケット
水玉模様が埋めつくし
ボタンも 目玉も 見つからず

カチューシャ たくさん 集めても
明日になったら捨てるから
バレエシューズを贈ってもらえる

夜は重くて 爪を噛む
スカート はくなら こんなとき
うまく飛べたら 空は本物

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