絶交のコピー

詩 166〜170

  絶交

今回だけは痛いから
この記憶力 切りはなす
たいらな岩の上で待ち
そっぽを向いてあくびする

なかまはずれは 未完成
温室のなかで なかよしで
図工の時間のいじわるも
鼻がつまって おしまいだ

腰をおろした 真正面
説明しづらいこともある
わたし 多かれ少なかれ 肉

眼光するどく 夢一夜
一夜にして 吐く アヒルの子
盗み聞きする 悪い子は どこ




  落第

言われたとおりに対岸に
まやかし 置いて たねあかし
白 黒 はえる 灰色の
扁桃腺の わたし 糧

因果律には しめだされ
睡魔がひそむ しかめっつら
ひとつくらいは みとめたい
堂々として 罵倒 うけ

なんにもしない いい人は
無防備 うろたえ 息 つまる
まったくもって 豊穣 沈黙

旅路の傾斜の計算も
落第 とり消すこと できず
せいぜい いまのうちに またたく




  傍観

ひとつ と 数える 命の火
二匹 三匹 四人 だけ
雪が つもった 原っぱで
ここで輪になり 腹 すかせ

すきとおる 肌 顔 うつし
金魚 よろこぶ 機械 酸
なんて陳腐な言いぐさで
おはなし 語る 口 にがい

ふやけた指が しめすほう
聞こえてないふり 見ないふり
うなり とどろき 爆発するのに

できることって なんだろう
枝毛 つむこと ねじること
裏がえせ 泡 いまなら まにあう




  箱庭ミュージアム

ピント ずらして 地下鉄の
点滅 つながり パプリカの木
さくらんぼから ふる しずく
目に うつくしく ドア ふるえ

つのをはやして まるで柵
帽子をかぶり 深々と
防空壕になる 硬直
せきとめるのは 高周波

あの宇宙船 青インク
赤蝋燭で 下書きの
あなたは 教室 居残りだっけ

音の神秘に魅せられて
きれいごと など ジグザグで
あざやかに咲く ひまわりまつ毛




  繁殖期

屋根は北側 風 東北
しとしと したたる 氷水
産卵するのに こんなにも
おあつらえむき 三個体

かまきりの血をひく あなた
行ったり来たりの そのうちに
鏡の流れは氾濫か
城にこもって 落胆か

蔓延しつつあるメタン
愛とか 絶望 あるいは蘭
含有量が不足している

青い石けん 裏側に
カミソリ きざむ 道しるべ
あなたがつけた わたしの あだ名


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