進化論のコピー

詩 156〜160

  進化論

なにかがはじまる いらだちに
まぎれて 暗い 床の下
よく見てほしい わたしの血
交信中のぬくもりに

後悔なんて 幻影で
燃焼過程 だとしても
あせって ごまかし いつまでも
空虚をなげく 見捨てれば

高圧線の五線譜に
時間を閉じこめ むさぼって
そんな資格があなたにあるの

ちぎった ことばが 生きていて
先まわりして 追いついて
立ちふさがって 人は 飛べない




  めぐみ

そっとのぞいてみてごらん
あでやか マスカラ こぼれそう
まくらの山の途上では
松葉杖 つき 廃少女

そっとのぞいてみてごらん
うつろい マニキュア ひからびる
サフランの目の視線 避け
輪投げ 興じる 菊人形

だったらいいな うれしいな
清く ただしく うつくしく
今夜は マリンバ たたいて 寝ない

だったらいいな うれしいな
強く ほがらか 愛らしく
さずかった もの ほどこす めぐみ




  シーラカンス

水に住む人 さいわいだ
昼寝のあいだに タンバリン
むらさき パピヨン もてあそぶ
斑点 ちらばる 怪物だ

悪いことして 免罪符
剥奪されて しじま 閉じ
はてしないもの ひとりごと
拍手のようなアルペジオ

あなたがママなら 静粛に
かなしいけれど 断末魔
ほうっておいて なにも変わらない

ガードレールにぶらさがり
つめたくなって死んでいた
否定したものと同じになった




  初体験

最後に近づく舞台では
大つぶ どんぐり 手榴弾
哀願動物 コヨーテの
手まねき しり目に 棒 にぎる

生き生きとして いとおしく
世界のすべてを知りたくて
がまんできない わたしから
天使と悪魔 ひきはがす

早熟すぎた花柄も
もがけばもがくほど あせて
風も少しはおさまるでしょう

みんなで 真下で 立ちつくし
わざわざ 浴びる 屈辱に
不可能はないと いまさら気づく




   再会
 
たまねぎの皮 かきあつめ
寒そう 暑そう うるさそう
胸に恋でもあるように
なでおろしている かたい胸

トランプだらけの展覧会
多感で はにかむ はらがたつ
大気圏には まだ早い
十秒だけだと言ったのに

愛を説くのに性急で
先に肖像 用意して
すばらしいことだけれど どうして

相談 ひとつ しなかった
ほら ほら 高く 明るくなって
わたしの手には ふれられなくて

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