#15 非常プランはA案とB案を用意する
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#15 非常プランはA案とB案を用意する

ここまで内水氾濫や外水氾濫、土砂災害、高潮、風による影響や危険性を示すフラグ(手がかり)について確認してきました。そうした災害から身を守る方法について実践的に考えていく方法をお伝えします。

この記事は「デジタル防災リテラシー」マガジンのステップ3の記事です。

非常プランは2案用意しよう

災害時に何をしなければならないか考える時には、A案とその代替案としてのB案という2つを作っておくことをお勧めします。

A案はいわば理想的な対応計画です。身を守るためにしなければならないことが全て順調にできると仮定して作ります。例えば、「外水氾濫が発生すると自宅2階でも浸水する可能性があるので自治体が指定する避難所に早めに避難する」といったものです。

しかしこのA案だけでは不十分です。避難行動が全てうまくいくことを前提としていますが、実際の災害時には様々な阻害要因が発生するためです。

阻害要因の洗い出し

例えば避難所へ避難しようというA案を持っていたとしても、道路冠水や氾濫型の内水氾濫が先行して発生してしまうと次のような状態になるため、移動を伴った避難が困難になります。

地面から30cmの浸水が発生した時の影響
地面から30cmの浸水というとあまり深くない印象を持たれるかもしれませんが、子どもや高齢者への影響は大きく、安全に避難することが困難となります。車の排気管やトランスミッションも浸水する深さに当たるので、車での避難も断念する必要が出てくる深さです。

地面から50cmの
浸水が発生した時の影響
地面から50cmほど浸水すると、子どもや高齢者だけではなく、その他の大人でも徒歩で避難することは難しくなるでしょう。車も浮き気味になります。住宅ではこの段階から床上浸水が発生する可能性が出てきます。

雨が強く降ったり、風が強く吹くだけでもA案の実現が難しくなるかもしれません。川の増水や土砂災害の危険性の高まりなども避難ルートに影響する場合もあるかもしれません。

理想的なA案を作る際には、A案の実施を邪魔する阻害要因もできるだけ具体的に洗い出しておきます。

B案も持つ意義

様々な阻害要因のため、A案で決めた対策が取れない時に何をするか。それがB案です。B案はいわば非常プラン中の非常プランという位置付けで、条件がすでに悪くなっている中でも取れる最善の行動を考えておきます。

例えば気づいた時には河川が決壊し、家の中の水位がみるみる上昇してきたことをイメージしてみてください。「危なくなる前に避難所に避難」というA案的な対応が取れる段階ではもちろんありません。こうした場合のB案の例は「屋根に逃げる」などです(自宅の2階にいても危なくなりそうな場合)。土砂災害で危険な箇所から逃げ遅れた場合、「崖から離れた2階以上の部屋に緊急的に避難する」などもB案です。

B案は阻害要因でA案どおり行動できない時以外にも、予測や避難に関する情報などがタイミング的に間に合わず、急激に状況が悪化する際にも利用できます。

A案用の気象情報/B案への切り替え用の気象情報

ここまでのA案、阻害要因、B案に関する話をまとめると次のようになります。

A案:身を守るために必要な行動が全て順調に進む前提で作られた案
阻害要因:何がA案の行動を阻害する要因になるか(B案への切替条件)
B案:手遅れになった時はどうすれば身を守れるか。非常中の非常プラン

この阻害要因ですが、「これが起こったら(起こるなら/起こってしまったら)A案での対応は困難。だからB案でいくしかない」というように、B案への切替条件になります。

ここまで紹介してきた気象情報や防災情報の中にはA案に適したフラグもあれば、B案への切り替えフラグ*として使えるものもあります。

*気象情報の中には今後の予測ではなく、すでに危険な状態の真っ只中にあることを示すものがあります。例えば氾濫型の内水氾濫や中小河川の洪水、土砂災害などが発生している可能性を示す情報などです。例えばそうしたものが現れているのであればA案ではなくB案を取らざるを得ないと判断できます。

自分にとっての阻害要因を洗い出し、その阻害要因が発生する可能性を示す情報は何かという視点から改めて整理してみましょう。そうすると、A案からB案への切替時期が明確になり、A案を実施するのであればもっと前の段階で発表される情報を手がかりに判断すべきであることが分かります。

A案B案の検討シート

情報の整理用に検討シートのサンプルを作成しましたので適宜ご利用ください。下のシートを使われる場合は、最初に「直面する可能性がある災害」を書き、「理想的な行動計画」をA案として立てます。その実施を阻害する要因は「A案の阻害要因」の欄に書き込みます。その阻害要因が発生した時でも命が守れるような「非常中の非常プラン」をB案のところにまとめた上で、もう一度戻ってA案からB案の切替条件の「手がかりとなる情報」を整理していきましょう。

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09 湛水型の内水氾濫の手がかり
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11 特に被害が大きくなる川の外水氾濫の手がかり
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渡邉 俊幸|気象予報士|気象とコミュニケーションデザイン代表

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気象情報の使い方・伝え方に潜む問題を的確に指摘し、改善方法が提示できる気象予報士。気象防災分野での国内外の経験豊富(豪州・欧州・アフリカ等)。防災メディアに寄稿中。気象情報は使い方次第でもっとあなたの役に立ちます! https://twitter.com/wpcdnote