#04 大規模河川の外水氾濫と ハザードマップの使い方
見出し画像

#04 大規模河川の外水氾濫と ハザードマップの使い方

誰もが一度は目にしたことがあるかもしれない防災情報が洪水のハザードマップです。しかし、漠然とハザードマップを見ているだけでは読み取れる情報が限られてしまいます。防災対策に効果的に使うためには、次の5つの問いを持ちながら見ていくことがお勧めです。

【ポイント1】浸水の深さ
【ポイント2】住宅が流される可能性の有無
【ポイント3】浸水が継続する時間
【ポイント4】避難先と避難経路の確認
【ポイント5】避難にかかる時間

インターネットなどで公開されている洪水ハザードマップをお手元に用意しながら、それぞれのポイントを確認していきましょう。最後のところでは補足としてハザードマップのない中小河川のリスクを調べる方法もまとめます。

この記事は「デジタル防災リテラシー」マガジンのステップ1の記事です。

浸水想定区域図で使われている想定

一般には水害ハザードマップや洪水ハザードマップなどの名称が浸透していますが、ある条件下でどこが何メートル浸水する可能性があるかなどを示す図面は「浸水想定区域図」と名付けられています。

浸水想定区域図は、対象とする河川流域で想定に基づいた降雨*が降り、堤防が決壊したと仮定した場合の各種のシミュレーション結果**をまとめた図です。

* 浸水想定区域図には、河川の整備上の目標降雨(この雨量までは安全に流そうという目標として使われる雨量)によってシミュレーションをしたものと、その流域で降ると考えられる降雨のうちもっとも多いものを前提にシミュレーションしたものの2種類があります。整備上の目標降雨が使われている場合は「浸水想定区域図(計画規模)」、考えられる降雨のうちもっとも多いものが使われている場合は「浸水想定区域図(想定最大規模)」と表記されることがあるので、何の前提に基づいているのか区別できるようにしておきましょう。想定最大規模の浸水想定区域図の方が計画規模のものに比べて浸水の深さや範囲などが一般に大きくなります。
** 浸水想定区域図には、予想される浸水の深さを示すのものの他に、家が流される可能性があるかを示す図(→ポイント2参照)や、浸水が継続する時間を示す図(→ポイント3参照)などがあります。

【ポイント1】浸水の深さ

自宅や勤務先などが最大でどの程度浸水する可能性があるか、その規模の浸水が発生した際に安全が確保できるかをチェックします。

(例)1階の天井まで冠水する可能性がある場合
2階以上に避難(「垂直避難」や「屋内安全確保」と呼ばれる対応)ができればひとまず安全ですが、平屋であったり、2階に避難が難しかったりする場合、その場所にとどまるのは危険です。

自宅等で安全が確保できない場合、安全なうちに外部への避難(「水平避難」や「立ち退き避難」と呼ばれる対応)が必要です。

【ポイント2】住宅が流される可能性の有無

洪水によって住宅が流される可能性がある場合も外部への避難(水平避難)をしなければなりません。ハザードマップの中には、浸水の深さを示す図面だけではなく、木造住宅が流される可能性がある場所を示すものがあります。

家屋が流される可能性がある場所は、「河岸侵食による家屋倒壊等氾濫想定区域」や「氾濫流による家屋倒壊等氾濫想定区域」と呼ばれます。それぞれの違いは次のとおりです。

河岸侵食による家屋倒壊等氾濫想定区域
増水した水で川岸が削られて住宅が倒壊・流出するおそれのある区域

氾濫流による家屋倒壊等氾濫想定区域
決壊した堤防から流れ込む水の勢いで木造住宅が倒壊・流出するおそれのある区域

河川を管理する機関(「河川管理者」と呼ばれます)のホームページで家屋等氾濫想定区域図が公開されていることがあるので、自治体が作成したハザードマップ上で見当たらない場合は「○○川 河川管理者 家屋等氾濫想定区域図」と検索してみてください。以下は江戸川の氾濫流による家屋倒壊等氾濫想定区域を調べた例です(出典はこちら)。赤い丸で表示された部分は氾濫した水の流れによって家屋倒壊のリスクがある場所です。

画像1

【ポイント3】浸水が継続する時間

洪水が発生した後、水がどの程度の期間溜まったままとなる可能性があるのでしょうか?もし長期間に渡って浸水状態が継続する場合は、そうなることを見越した対応が必要です(備蓄を増やす/外部へ避難するなど)。

ハザードマップが公開されている河川では、氾濫した水がある場所で一定の浸水深(50cm)に達してからその浸水深を下回るまで「浸水継続時間」の図も準備されています。自治体が作成したハザードマップ上で浸水の継続時間が見当たらない場合は「○○川 河川管理者 浸水継続時間」と検索してみてください。

試しに「江戸川 河川管理者 浸水継続時間」と調べると、次のページが出てきます。この中の「洪水浸水想定区域図(浸水継続時間)」を見ていくと該当の情報を確認することができます(下図。出典はこちら)。

画像2

浸水継続時間の図を見ると下のように色別で情報が示されますので、凡例と照らし合わせて確認してください(出典はこちら)。

画像3

マンションの上層階なども注意!
上層階で直接の浸水を免れても、電気やガス、水道などのライフラインに影響が出る可能性があります(受変電設備やガスのマイコンメーター、上層階への給水ポンプなどが浸水被害を受けるため)。長期に渡って浸水が想定される場合、自宅に避難することが現実的かという面も考慮しておきましょう。

【ポイント4】避難先と避難経路の確認

外部への避難が必要な場合、どこに避難するかについて検討します。自治体が開設する避難所だけではなく、親戚や知人宅も可能であれば選択肢に入れて考えます。身を寄せる先の安全性についてもハザードマップで確認しておきましょう。避難経路を確認する際には、内水氾濫や土砂災害などの面で問題となりそうな場所がないか把握が必要です。アンダーパスなどを通過するルートは最初から避けて考えておいた方が無難です。

【ポイント5】避難にかかる時間

避難に要する時間は個人の状況により異なってきます。皆さんは、最短でどの程度の時間があれば避難が完了するでしょうか?避難しよう決めてから30分で完了するのか、それとも1時間以上かかるでしょうか?

気象情報や防災情報の中には残り時間わずかなタイミングで発表されるものがあります。もし避難に時間がかかると当初から見込まれている場合は、早い段階で提供される情報を使って避難の判断をしなければなりません。その見極めのために、避難にかかる時間を考えておきます。

ハザードマップを使うときの注意

ハザードマップで予測されていない場所でも浸水が発生したり、予想される浸水深よりも深くなったりすることがあります。ハザードマップで色が付いていないから安全というわけではありません。非常時にはハザードマップで想定されていないことも起こりうると覚えておいてください。

ハザードマップのない中小河川のリスクの調べ方

中小河川の場合はハザードマップが準備されていないことがほとんどです。山地を流れる河川では中小河川といえども外水氾濫で命の危険があるため、危険となる場所に該当するかは把握しておきたいものです。

ハザードマップがない場合の手がかりは地形です。河川の水面(普段の水面ではなく増水した際の水面)と同じような高さで山地や台地の間に広がっている低平地(谷底平野)が特に危険です(下図参照。出典は気象庁の資料より)。地形だけではなく、過去の伝承災害記録などで被害が起こっている場所であればリスクありと判断して良いでしょう。

画像4

(関連記事)

この続きをみるには

この続き: 0文字
この記事が含まれているマガジンを購入する
気象予報士と学ぶ「デジタル防災リテラシー」のマガジンは全16本の記事で構成しています。7つの記事(#08-#14)だけ1記事あたり100円となります。4記事以上お読みいただくときはマガジンをご購入いただいた方がリーズナブルです!

「台風や豪雨の時にいつ何を見て避難したらいいんだろう?」という疑問に答えるマガジンです。どんな災害に合うのかを調べ、そしてそれに対応する気…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
渡邉 俊幸|気象予報士|気象とコミュニケーションデザイン代表

記事をお読みいただきありがとうございました。よろしければスキやフォローもお願いします!

ありがとうございます!
気象情報の使い方・伝え方に潜む問題を的確に指摘し、改善方法が提示できる気象予報士。気象防災分野での国内外の経験豊富(豪州・欧州・アフリカ等)。防災メディアに寄稿中。気象情報は使い方次第でもっとあなたの役に立ちます! https://twitter.com/wpcdnote