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#03 内水氾濫リスクのある場所

気象庁は内水氾濫に対して警戒を呼びかける情報を発表します。内水氾濫は堤防の内側(市街地や農地などの側)で発生する形の氾濫ですが、気象庁ではこれをさらに2つのタイプに分けた上で情報を出しています。この記事では気象庁の分類を解説するとともに、それぞれのタイプの内水氾濫のリスクがある場所について整理していきます。

この記事は「デジタル防災リテラシー」マガジンのステップ1の記事です。

「氾濫型の内水氾濫」と「湛水(たんすい)型の内水氾濫」

気象庁は内水氾濫を、「氾濫型の内水氾濫」と「湛水型の内水氾濫」に分けています。湛水(たんすい)というのは「水をたたえる」という意味です。それぞれの違いをイラストにしたものが次の図ですのでまずは見てみましょう。左側が氾濫型の内水氾濫、右側が湛水型の内水氾濫の概念図です。

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氾濫型と湛水型の違い(気象庁のホームページより転載)

氾濫型の内水氾濫は、市街地などに短時間のうちに降った大雨が排水できずに発生するものです。湛水型の内水氾濫は河川の水位が上昇したために、住宅街などから排水できなくなって発生するタイプです。川の水位上昇に伴って河川からの水が下水管などを通って逆流する場合もあります。

次にそれぞれのタイプの内水氾濫で危険となる場所の例を見ていきましょう。

氾濫型の内水氾濫で危険となる場所の例

氾濫型の内水氾濫では、行き場を失った水が流れ込む「低い所」が特にリスクの高い場所です。例えば、道路や鉄道の下をくぐり抜けるアンダーパス(下の図のような場所)、地下構造のある建物、谷のような地形となっているところ、周辺に比べて地域全体が低い場所などは特に要注意です。

アンダーパスの例

湛水型の内水氾濫で危険となる場所の例

湛水型の内水氾濫のリスクが高いのは、河川の周辺で他の場所よりも低くなっているところです。令和元年東日本台風(台風19号)の際には多摩川周辺などで湛水型の内水氾濫により被害が発生しました。以下の図は神奈川県川崎市内で湛水型の内水氾濫が発生した場所を示すものです。

クリックしていただくと拡大表示されるのでご覧いただきたいのですが、地図上で青色で表示されている部分が浸水の発生した範囲です。多摩川は図の上部の部分を左から右に流れています。多摩川沿いにある赤丸の箇所は樋管(ひかん)の場所を示しています。樋管というのは、堤防の内側(市街地側)に降った水を川へと流す排水路が堤防の中を通る水路です。水位が低ければ問題ないのですが、多摩川の水位が上がった影響もあり樋管周辺で湛水型の内水氾濫が発生していることがわかります。

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令和元年東日本台風では増水した多摩川沿いで内水氾濫が発生(青色部分)(出典)川崎市作成資料から抜粋

内水氾濫が起こりやすい場所をマップで確認

内水氾濫が起こりやすい場所はではどうしたら分かるのでしょうか?自治体の中には浸水が起こった場所を記録した図面(「浸水実績図」などと呼ばれます)や内水氾濫の想定図をインターネットなどで公開しているところがあります。浸水実績図を見て過去に何度も内水氾濫が発生しているような場所であれば、周辺に比べて低い地形の可能性があることを疑ってみましょう。

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東京都大田区の浸水実績図の例

内水氾濫への対処

内水氾濫に対してリスクが高い場合、避難の方法(垂直に避難するのか、別の場所に避難するのか)や避難のタイミングについて検討しておくことが必要です。特に浸水型の内水氾濫は雨が降り出してから浸水が発生するまでの時間が限られることがあるため、短時間で対応ができるようにしておくことが必要でしょう。

なお、内水氾濫自体では特段の被害が発生しなくても、スムーズな避難の妨げとなることがあります。内水氾濫のリスクを確認する時には、自宅周辺だけではなく、避難経路上の浸水リスクも考慮しておきましょう。

コラム:浸水の深さによる車への影響

車で避難する際に冠水したアンダーパスを見かけたら、無理に通ろうとしてはいけません。70cmほど冠水すると水圧のためドアが開かなくなると言われています。アンダーパスで立ち往生し、人的被害が発生してしまう可能性もありますので、可能であれば避難ルートからアンダーパスを除外しておいた方が良いでしょう。

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浸水の深さによる車への影響(国土交通省の資料より)

【10cmの冠水】ブレーキが効きにくい
【30cmの冠水】ドアステップの高さに至るとエンジンに水が侵入
【50cmの冠水】車体が水に浮き気味となる
【70cmの冠水】水圧のためドア半分の水位でドアが開けづらくなる
【ドアの上20cm】車体が浮き流され始める

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