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写真という名のテクスト(写真作品制作記録簿)

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作家 a.k.a. 無職。写真を撮っていますが、クライアントワークも、コミッションワークもしておりません。写真作家とでもいうのでしょうか、プリントやNFTで作品販売をしています。…
運営しているクリエイター

#個展

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(6)

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(6)

動物をモチーフにすることが多かったのだけど、今のところそれもあまり関心がなくて… 例外は鹿かな。鹿は撮りたいのです。

あと鯉。鯉の退廃的な出自はやはり魅力的です。人工生命というか… 日本のデカダンスを感じるんですよね。

ただ鯉をモチーフにしても水面のゆらめきの中で泳ぐ姿を捉えた写真(ノンフィクション)と、下の写真のように地中を泳ぐ架空の地底世界を現実世界から眺めた下の写真(フィクション)では異

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個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(5)

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(5)

三日坊主で終わるはずだった個展の宣伝noteですが、なんと5回目です。
自分でも驚いているのです。こんなに言いたいことあったのか、と。
正確に言えば「言わないでおこう」と思っていたことなんですけどね。

こんな駄文をか書いている暇があったらステイトメントを書けと叱られてしまいそうです。まあそんなに簡単に書けるようなものでもないですし… アレたいへんなんですよ。例えば色について触れたとします。当然そ

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個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(4)

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(4)

『Someone Drowned In My Pool』(誰かが私のプールで溺死した)
James George Thirlwell のプロジェクト「Wiseblood」の曲です。アルバムをリリースするごとに名義を変える(プロジェクト名でリリースしたり)ので、少々把握しづらいのですが日本ではジム・フィータスの名前が一番通じるかなと思います。

美しい渓谷、茫洋とした海、陰鬱な沼。風景の中に現れる「

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個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(3)

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(3)

また個展のことです。何故いまになってこんなにくどくどと長文を書いているかというと、今回はステイトメントがないのです。そんな馬鹿な、と思われるでしょうがないものはないのです。

個展をやることだけは決まっていたのですが、肝心の中身を「これから撮るものでつくる」としか決めていなかったから、コンセプトはおろかステイトメントもなく、9月の時点では書き散らかした大量のメモ(CotEditorとUlysses

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個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(2)

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(2)

くどいのは承知ですが、、、
個展をやります。 もう2024年だというのに何をやっているのでしょうか。
10年ほど前に初めての個展を開催しました。
その時には2つのシリーズ「BLACK」「Subterranean」を軸に展示を構成しました。

「BLACK」は主題と手法の一致を試みた作品群です。モノクロームではなくカラーの“黒”。色を重ね、或は抜くことで“黒”をつくっております。 色に対する認識は器

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個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(1)

個展『New Dawn Fades』3.22-4.2(1)

個展を開催して頂けるというお話になったのは2023年の夏の終わりだったと思います。その頃の僕は錯乱していました。このまま今までの作品の延長線上で制作を続けることに懐疑的であったこと、生活を支えてきたクライアントワークを辞めたことなど様々な問題を抱えきれずにジタバタしていたのです。

そこに個展開催のお話を頂いて、僕はそれに飛びつきました。とにかく何か行動することに逃げたのだと思います。それは今まで

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50作品 仕上げるまで働かない

50作品 仕上げるまで働かない

「50作品 仕上げるまで働かない」とほざいてしまったのがたぶん八月、それ以前に(いつだか忘れたけど)「今後、エディションはすべてUnique(一点モノ)にする」などと宣言してしまったので、そもそもつくらないと売るものがないのです。

思えばずいぶんと無茶なことをしてしまいました。

ともかく、そんなこんなで引っ込みかつかなくなったタイミングで、
「個展しませんか」というご連絡をいただきました。

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BLACK †rhinoceros

BLACK †rhinoceros

BLACK †rhinoceros, 2014
33.3× 19 cm /13.1 × 7.4 in
Archival Giclee Print

洞窟壁画からアルブレヒト・デューラーの犀など、様々に描かれきた大型獣。木漏れ日が織り成す地面の影が美しくこの位置に来るまで辛抱強く待ったが、犀の特異なフォルムが加わり神秘的なまでに美しい影が生まれた。

From cave paintings

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†soil and sheep

†soil and sheep

†soil and sheep, 2015
80.3×26.5 cm / 31.6× 10.4 in
Archival Giclee Print

霧の中、ぼんやりとした陽光が描いた頭の黒い羊の風景を伝統的な写真の作法に則り制作をしました。ですが重要な一点、つまりアスペクト比について「伝統的な写真の作法」に異議を呈示しております。写真のアスペクト比は工業製品の規格(もちろん規格の美、という美しさも

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†deer

†deer

†deer, 2019
30× 50 cm / 11.8 × 19.7 in
Archival Giclee Print

この覚満淵の風景を見たときにふと思い立って鹿をあしらってみた。吹雪いた湿地帯の墨絵のような光景、不鮮明な視界はおおいに思索の助けとなった。
それは大抵の場合、人間の視覚よりも多くのディテールが写っているという現代の撮影機材の秀逸さに引きずられるようになった解像力による“驚異の

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†rhinoceros

†rhinoceros

†rhinoceros, 2014
19× 33.3 cm / 7.4 × 13.1 in
Archival Giclee Print

ありえないことではあるけれど、日本のありふれた風景に犀がいる風景が頭の中に浮かんだ。それがずっと頭から離れず様々な土地へ行き、頭の中に浮かんだイメージと同じ風景を探した。動物園の犀、長瀞の河原、箱根の芒、日光の森をベースにイメージ通りの風景を制作した。一本の芒、

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†carp

†carp

†carp, 2019
72.8×106 cm / 28.6×41.7 in
Archival Giclee Print

撮影から完成まで9日間、僕の制作では最も短期間で完成した写真。 そんな短期間で仕上がったはもう長いこと主題として考えていた“デカダンス”の光景であったからである。ここでいう“デカダンス”とはユイスマンスやアルトーの描いたそれであることは明記しておきたい。日本の文化、風土におけ

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Subterranean

Subterranean

僕の育った家の地下室は奥半分が父の書斎でした。本棚に仕切られた手前のスペースには小さなソファとテーブルが置かれ、三方の壁には本棚が並んでいました。蔵書のほとんどは翻訳家であった明治生まれの祖母のものと、映画製作を生業にしていた父の資料、仏文科を卒業した母の本でしたが、小学生の頃には本棚の1番下の段(こどもですから)に自分の本を置くことを許されていました。

地下室特有のひんやりとした空気は夏には過

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“EMACIATED ETERNITY”

“EMACIATED ETERNITY”

New Yorkで個展が始まります。初めての海外出展がNew Yorkというのもびっくりですが、それが個展ともなるとかなり気が動転いたします。

「個展のタイトルどうしますか?」と突然の電話で聞かれたのは2月の終わりか3月か、あまり記憶は定かではないのだけれど「あぁ... タイトルあるんだ」とかなり重たい驚きと、今日中にタイトル決めなきゃという湧き上がる焦りで血の気が引いたことを覚えています。

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