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なぜ、いま、VoC経営なのか。#8 第2章VoC活用シーン ⑤対応の最適化DX

Insight Tech CEO 伊藤です。不満買取センターを運営し、独自のデータ×独自のAIで「声が届く世の中を創る」ことを目指しています。

このnoteは連載「なぜ、いま、VoC経営なのか。」の第7回(#8)をお届けします。【#1~#7も是非ご覧ください】

#8は第2章の5回目です。
第2章ではVoCの具体的な【活用シーン】について以下の5度に分けてお伝えしています。今回は「5.ユーザー対応・問い合わせ対応を最適化する」です。

【VoC活用シーン】
1.CS・NPSを高める鍵を具体的に理解する
2.既存商品・サービス改善のヒントを得る
3.新商品・新規事業のアイデアを創発する
4.ユーザーとのコミュニケーションを深化させる
5.ユーザー対応・問い合わせ対応を最適化する ←今回


多くの企業で顧客と直接接点を持つ場である「コンタクトセンター」。まさにVoCが最も集まる場といえます。これまでは苦情受付や質問受付などが中心でしたが、業務効率化を徹底的に進めつつ、より高度な役割を期待する企業が増えています。早速お話を進めていきましょう。

コンタクトセンター=大切なCXセンター

皆さんは生活者・ユーザーとしてコンタクトセンターに電話したことありますか?おありの方、どんな気持ちでお電話したでしょうか?

コンタクトセンターは形式上は「気になることを聞く」「伝えたいことを伝える」ための接点であり、企業からすると事務的な役割のように思えますが、生活者・ユーザーからすると、提供企業との接点としてそこでの体験が企業・プロダクトへの評価に直結するのではないでしょうか?

つまり、生活者・ユーザーから見ると、コンタクトセンターでの会話やそこでの対応は「その企業が提供するサービスの一つ」であり、まさに直接的にCX(カスタマーエクスペリエンス)を提供する場になっています。

私たちが運営する不満買取センターにも「コンタクトセンター」の対応への不満が多く寄せられています。例えば、携帯キャリアのコンタクトセンターへの不満を述べた不満のうち、2割がその不満を契機に他社へ乗り換えたとしており、乗り換えを検討したとする不満と合わせると7割近くがスイッチングのきっかけとなっているのです。

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作業負荷が応対品質を低下させる

コンタクトセンターでの生活者・ユーザーとの接点が、自社の評価を左右する大きな要因になっているとすると、当然、そこでの対応をより丁寧に、的確に、先回りした品質にしよう、となります。

一方で、コンタクトセンターの受電者・オペ―レーターは1件1件の電話対応で負荷(ときにストレスフルなクレームもあると思います)がかかり、且つ対応以外の付帯業務(記録・報告など)も加わり、物理的にも精神的にも丁寧・的確・先回りを実現しにくい状況にあるのも事実です。

実際、コンタクトセンターではオペレーターの人材確保が重要課題となっており、上記の業務負荷の高さが一因になっているものと想像できます。

少し古いデータですがコールセンターに従事するスタッフを対象に実施されたアンケート調査からも物理的・精神的な負荷の高さがうかがえます。

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沖縄県「コールセンターの課題改善アンケート調査 報告書」(平成24年)

VoCに耳を傾ける最前線で活躍されるオペレーターの皆さんの物理的・精神的負荷を以下に最適化するかがVoC活用の大前提となるのです。

3つの最適化DX

最前線のオペレーターの皆さんの負荷を下げ、ユーザー対応の品質を高めるためにはデジタル技術の活用が有効であると考えます。まさにVoCデータ×AI技術によるDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

すぐにでもできる最適化DXとして以下の3つがあると考えます。

最適化DX① 分類・仕分けの半自動化
最適化DX② 類似事案・FAQのアシスト
最適化DX③ 要注意事案への早期アラート

私たちInsight Techも多くの企業様と一緒にこのようなDXを推進し、VoCの活用度の底上げをサポートしています。

◆最適化DX① 分類・仕分けの半自動化

多くの企業では、「どのような問い合わせが何件くらいあったのか?」を定量的に集計するために、各社独自の分類軸(ラベル軸)で1件1件の問い合わせ・意見を分類・仕分けしています。この分類軸が数百~千を超える事例もあり分類作業に大きな負荷がかかります。

この業務に対して、音声認識技術と自然言語処理技術を掛け合わせることにより、会話の内容を自動的に記録でき且つその内容に応じた分類軸を電話が終わったところでレコメンドしてくれる世界が実現できます。

これによりオペレータの方の記録の負荷、分類選択の負荷が低減できるのは言うまでもありません。

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◆最適化DX② 類似事案・FAQのアシスト

コンタクトセンターに寄せられる意見や質問は多岐にわたり、それぞれの問い合わせにどう回答するかを記憶・理解することは非常に難しい業務です。問い合わせに対する回答を調べる検索ツールもありますが、キーワードの設定の仕方によっては適切な回答が得られないなど検索ノウハウを必要とするのが実情です。

この業務に対しても音声認識技術と自然言語処理技術を掛け合わせることにより、会話の内容に応じて回答の参考となる過去事案をレコメンドしたり、会話の内容に応じたFAQを自動提案できるようになります。

これによりオペレータの方の記録の負荷、分類選択の負荷が低減できるだけでなく、いち早く解決に至るためユーザーの満足につながるメリットがあります。

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◆最適化DX③ 要注意事案への早期アラート

コンタクトセンターに寄せられる声のうち、一部はハードなクレームや緊急的な対応を要するものが含まれます。これらについては、オペレータだけでは解決できないことも多く、上司・上席へのエスカレーションが必要となります。一方で、その基準があいまいであることも多く、連携が後手に回り結果として負荷が大きくなることがあるのが実情です。

この課題に対しても、AI技術やデータアナリティクス技術を活用することで、会話の内容やユーザーの声色などを捉えてユーザーの感情や内容の緊急度を判定することが可能となり、トラブルになりそうな事案を早期に特定することが可能となります。

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上記はあくまで例示ですが、丁寧・的確・先回りが必要となる業務だからこそ、デジタル技術によって代替あるいは補完する余地は十分にあると考えます。

実際、多くの企業がコールセンターDXに取り組まれているのは様々なニュースで見られる通りであり、「VoC経営」の実現を目指す私にとっても非常にうれしいニュースです(私たちも頑張ります!)。

VoC×AIで人はより高次な役割へ

いうまでもないですが、VoCデータ×AIによる最適化DXはあくまで手段です。目的はコンタクトセンターで生まれるCXの価値を高めること。

より多くのユーザーが「丁寧でしっかりとした対応だった」「良い体験だった」「このブランドがもっと好きになった」と感じられるようになること。そして、より多くの本音のVoCが寄せられるようになり、企業で活用されるようになること

VoCデータ×AIによる最適化DXによって生まれたオペレーターの時間・余裕を本質的なユーザー対応に充てることでユーザー・企業のWIN-WINが生まれます。これこそが「VoC経営」の礎だと考えます。

現場の仕組み×組織の仕組みでVoC経営の実現を

先に挙げた「3つの最適化DX」はコンタクトセンターの受電業務の最適化であり、いわば「現場の仕組み」をアップデートする取り組み。

これに加え、一部の先進的な企業ではコンタクトセンター=CXセンターとすることを明確に組織系統、つまり「組織の仕組み」でも実践しようとされています。

例えばローソンさんはコンタクトセンター統括部を経営戦略部に位置付け、そこで得られたVoCを経営の意思決定に活かそうという明確な意志を行動・実践に移されています(図がうまく表示できずすみません)。素晴らしいと思います。


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このような【現場の仕組み】&【組織の仕組み】をもとにVoCを起点に経営革新を進めようとする企業が増えていくことを願ってやみませんし、私たちインサイトテックはそのミッションを実現していく所存です。

まとめ

今回はVoC活用シーンの「5.ユーザー対応・問い合わせ対応を最適化する」に着目し、そのシーンの背景・課題・対応方向について以下の論点でお話ししました。

コンタクトセンター=大切なCXセンター
作業負荷が応対品質を低下させる
3つの最適化DX
VoC×AIで人はより高次な役割へ
現場の仕組み×組織の仕組みでVoC経営の実現を

このコラムが皆様のお役に立てばうれしく思いますし、VoC経営に取り組むきっかけになればこんなにうれしいことはありません。
今日はここまでです。今回も長文をご覧頂き、有難うございました!

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「第1章 So Why?(総論)」に続けて展開した「第2章 VoC活用シーン」は今回までです。

次回はこれまでの連載を少し俯瞰しつつ、「VoC経営」の実現に向けた鍵を皆さんと認識共有できると嬉しいな、と思います。

いよいよ連載もクライマックスです。どうぞお付き合いくださいませ。

では、また次回!

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