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タブレット

 ポール・グレアム(Paul Graham)が執筆したエッセー「Tablets」の日本語訳になります。

2010年10月

私は最近、iPhone・iPad・アンドロイドが動く類似のものたちを表す一般的な用語がないことがどれほど不便であるか考えていた。最も近い一般的な用語は「モバイルデバイス」に思えるが、それは(a)どのモバイルフォンにも当てはまるし、(b)iPad の特徴を実際にはとらえていない。

数秒後、私たちがこれらのものを呼ぶことになるだろうものはタブレットであると私は心に思った。私たちがこれらを「モバイルデバイス」と呼ぼうと考える唯一の理由は、iPhone が iPad より先行したからである。もし iPad が最初に登場していたら、iPhone を電話として見なさなず、耳まで持ち上げるのに十分小さなタブレットとして見なしていただろう。

iPhone はとても電話の代替となるような電話ではない。これは一般的なパターンになるものの初期の実例であるから、重要な違いである。ほとんどではないにしても多くの私たちの周りにある特殊用途のモノが、タブレットで動作するアプリによって取り替えられるだろう。

これは GPS、ミュージックプレイヤー、カメラのような場合において既に明らかである。しかし、どれほど多くのものが取り替えられるかが人びとを驚かせると私は思う。私たちは鍵を取り替える1つのスタートアップに出資した。フォントのサイズを簡単に変えられる事実は、iPad が実質的に読書メガネを取り替えることを意味する。もし加速度計にクレバーなトリックを使って体重計を取り替えることさえできたとしても、私は驚かない。

1つのデバイス上にあるソフトウェアで物事を行うことの利点は、非常に巨大であるからソフトウェアに変われるすべてのものがそうなることである。だから、今後数年間、スタートアップにとって良いレシピは、タブレットのアプリで不必要になる可能性がある人びとがまだ気づいていないものを捜してあなたの周りを見回すことだろう。

1938年、バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)は、物理的機械が現在私たちがソフトウェアと呼ぶだろうものによって取り替えられる傾向が高まっていることを説明するために、「エフェメラリゼーション(短命化)」という用語を作った。タブレットが世界を支配するだろう理由は、スティーブ・ジョブズと会社が(ただの)工業デザインの魔法使いであるということではなく、彼らの後ろにこの力があるからである。iPhone と iPad は事実上、エフェメラリゼーションが多くの新しいエリアに流れ込ことを許すひとつの穴をあけた。テクノロジーの歴史を研究した人誰もがその力のパワーを過小評価したくないだろう。

私は Apple が彼らの背後にあるこの力と共に持つことができるだろうパワーについて心配している。80年代や90年代のマイクロソフトのようなクライアント・モノカルチャーのもうひとつの時代を見たくはない。しかし、エフェメラリゼーションがタブレットの普及を推進する主要な力の1つであるのなら、Apple と競合する方法はより良いタブレットのためのプラットフォームになることを意味する。

Apple のタブレットに加速度計があるのは素晴らしいことだと分かった。デベロッパーたちは Apple が想像すらできなかった方法で加速度計を使った。これがプラットフォームの本質である。ツールがより用途の広いものであるほど、あなたは人びとがそれをどのように使うか予測しにくい。だから、タブレットのメーカーはそこに他に何か付け加えられるだろうか? を考えなければならない。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも。私たちはデベロッパーに他に何を与えることができるか? ハッカーに1インチ与えると、彼らはあなたを1マイル連れて行くだろう。

このエッセーの下書きを読んでくれた Sam Altman、ポール・ブックハイト、ジェシカ・リビングストン、ロバート・モリスに感謝する。


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