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時代を知るためのひとつの方法。それはサブカルチャーの歴史をひも解くことなのかもしれない。『若い読者のためのサブカルチャー論講義録 - 宇野常寛』【書評】

その時代を知る方法のひとつとして、その時代の文化や流行を学ぶ。サブカルチャーも同様に、ひとつの歴史として、数々の時代、歴史を作り上げてきたわけです。

2016年4月から7月に京都精華大学で開講された講義「サブカルチャー論」を再構成した本著。評論家であり批評誌「PLANETS」の編集長を務める宇野常寛さんは、本著の中でこう語る。

(本著を)読み通すと、この国の若者たちがある種のサブカルチャーを通じて世の中をどう捉えてきたかがわかるようになっています。

それは政権の移り変わりや経済指標だけを追いかけていては絶対に見えてこないもうひとつの、しかし確実に存在した目に見えない「歴史」のようなものです。(はじめに より)

時代とサブカルチャーとは、どのように呼応してきたのだろうか?

サブカルチャーに触れることで、世界の見え方が少しでも変われば、きっとそれは読者の人生を豊かにしてくれる。著者はそう考えます。
前述の通り、その時代を生きた人たちの欲求や時代の空気感があり、それらが求める先にサブカルチャーが存在する。サブカルを知ることは、歴史を知ることに他ならないからでしょう。

本著の目次に目を通せば、オタク・週刊少年ジャンプ・アトム・鉄人28号・ガンダム・エヴァンゲリオン・涼宮ハルヒ・アイドル・AKB48など、キーワードを目にするだけで、その時代を思い浮かべられるトピックが並びます。

時代の移り変わりとともに、若者たちの求めるものも移ろう。そして、それを代弁するように、サブカルチャーの流行も姿を変えていく。その証拠に、本著ではアニメブームやアイドルブームの栄枯が語られている。時代の空気感を象徴するように、それぞれの時代に求められた数々の作品解説と共に。

なぜ、サブカルチャーの評論家が、社会問題を論じる仕事をしているのか。その答えを、「サブカルチャーを語ることが、社会を語るうえで有効であるとされてきたからだ」とする著者。

サブカルチャー時代の到来は、「世界を変える」のではなく、「自分を変える」方向への転換。政治運動からサブカルチャーに移行していったと著者は語ります。そう聞けば尚のこと、歴史とは切っても切り離せない、歴史を捉えるうえでの重要なファクターといえるでしょう。

海外に向けてどのように日本文化を伝えていくかが重要視される昨今。サブカルと聞くと、日本を代表する文化のひとつと考えられていますが、本著ではサブカルチャーの終焉についても言及されています。

サブカルチャーが持っていた新しいものを生み出す力が弱くなっているし、それと同時に、サブカルチャーについて語ることが社会を語ることと結びついていた時代の前提が、ゆるやかに崩壊しつつある~ (38ページ より)

若者に興奮と熱狂を与え続けたサブカルチャーが、なぜ終焉を迎えようとしているのか。本著でその歴史を追体験しながら、現代へと辿り着いた読者には、その答えが用意されている。

日本を代表し、世界にも誇れる数多くの名作を生み出したサブカルは、これからの時代、どこへ向かうべきなのか。著者は未来に向けてのメッセージも示してくれています。

きっと誰もが若かりし頃、触れてきたであろうサブカル。年を重ねるごとに、求めるものは変われど、いつもどこかで目にし、耳にする作品たち。

これまで生きてきた時代の中で、どういった文化が輝きを放っていたのか。サブカルチャーを背景とし、まるで自分史をひも解くように振り返ることのできる本著。日本の歴史を知る切り口のひとつとして、本著が興味深い手引きになるのは間違ないと思うわけです。


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