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とん汁、ぶた汁。

豚汁。

この文字を見るだけでなんかほっとしませんか。
あったかくて、やさしくて、野菜たっぷり。
でもお肉が入ってて食べ応えもあって、汁物の中でも豪華な気分のひと品。

豚汁という文字を見て、みなさんが思い浮かべるのは、きっとこんな感じですよね。豚肉とたっぷり野菜を味噌で煮た、いわゆる味噌汁仕立てで、上から振りかけるのは七味か一味唐辛子。

定食屋さんでお汁物として出てくる、ひとつのお味噌汁のバリエーション。

🐽想い出は透明、そして“とん”でもない

でも自分にとって豚汁の文字を見て最初に思い出すのはこんなひと皿です。

何かが違いますね。

お汁が透明。
透明なんです。

これが実家の豚汁でした。
ちなみに大きなポイントなのですが、呼び名も“とん汁”ではなく、“ぶた汁”といいました。

何、それ。
といわれると思いますが、今回はそんな“ぶた汁”を作りつつ、その由来をはじめて知ったというお話です。

🐽では作ります

まず野菜の中でもメインになるキャベツ。
ざくざくと刻みます。

🍚材料(2~3人分)
・豚肉…50グラム
・キャベツ…2枚
・玉ねぎ…1/4個
・にんじん…1/2本
・干し椎茸…2個
・干し椎茸の戻し汁…1カップ
・水…4カップ
・顆粒コンソメ…小さじ2程度
・粗びきこしょう…お好みの量
・塩…お好みの量

玉ねぎは厚めにスライス、にんじんはいちょう切りにして、干しシイタケを戻しておきます。

具材的にはあとは大根なんかも入れてましたね。
でもゴボウはNGです。“とん汁”にはけっこう入ってると思いますが、我が家の“ぶた汁”は香りの強いゴボウを入れると別物になってしまうので、美味しいのはわかっててもここは我慢。あくまで忠実に再現します。

豚肉を炒めます。

色が変わってきたら野菜を入れて、さっと油を全体に回すようにひと炒め。

しんなりしてきたら、干しシイタケもスライスしてプラス。

水とコンソメ、干しシイタケの戻し汁を入れて煮込みます。

野菜がくったりとして全体がなじんだらできあがり。

🧂今回もソルトレス

味を見て、お好みで塩を加えてください。

個人的にはコンソメにも塩分があるので、塩はなくてもいいかなと思ってます。

そのあたりは“トケイヤkitchenおもてなし”いつものソルトレスな感じです。

刻んだねぎをトッピングして、あらびきコショウをふったら完成です。
野菜をくたっとするまで煮ているので、ねぎの食感はけっこういいアクセントになります。

🐽よく考えたらフレンチ的

これが懐かしい“ぶた汁”です。

実家では普通にお味噌汁的な感じでごはんのときに汁物としてお椀に入って出てきていたので、なんの違和感もなかったのですが、大人になってからよく考えてみると、ベースがコンソメということは、これっていわゆるフランス料理のポトフ的ですよね。

(↑途中から有料記事です)

でもホントに普通にお味噌汁とか、お吸い物みたいに、ごはんのときに汁物として出てきてたんですよね。そしてけっこう好物でした。

🐽二種類あるという当たり前

大人になって豚汁を“とん汁”と読む人の方が多いと知ったとき、あれ? と思って、さらにその“とん汁”が具だくさんのお味噌汁的なひと品だということを知ったとき気になっていたのですが、実家を離れて長くなるうちに、その疑問はいつしか霧散するように消えていました。

自分が料理をするようになると実家風の“ぶた汁”はいつでも再現できるし、味噌仕立ての“とん汁”も作れます。さらに後者は定食屋さんでも出会えます。

いつしか“我が家のぶた汁がちょっと変わったとん汁”という意識はなくなり、“豚汁”という料理が二種類あるというのが自分の中の当たり前になっていたんですね。

ちょうどシチューにビーフシチューとクリームシチューの二種類があるようなものでしょうか。たとえばキーマカレーも欧風カレーもどっちも“カレー”のひとことで呼べるのとおなじかもしれません。

🐽ばあちゃんやったんか

でも、やっぱり心のどこかで気になっていたのだと思います。
帰省したある日、急にぶた汁のことが頭に浮かび、ついに母に聞いてみたんです。

「あー、あれはな、おばあちゃんや」
「え?」
「おばあちゃんがな、コンソメで作ってはってん。私はぶた汁ゆうたら味噌や思ててんけどな、ここのおうちにきたらコンソメやってんわ」
「そうなん?」
「そやで。まあそれも美味しいなと思たから、ぶた汁ゆうたらコンソメゆうふうになったんやわ。味噌汁は別に豚以外でも作れるしな」

なんと。

実家の懐かしい“ぶた汁”は祖母の味だったみたいです。
それが祖母の創作だったのか、なにかを参考にしたのかは、祖母が亡くなって久しい今となっては永遠の謎です。

ちなみに今は味噌仕立ての“とん汁”も作るときがあります。

多めに作って残しておいたコンソメの“ぶた汁”に味噌を溶いて味変的に楽しむこともあれば、最初から作ることも。いちから作るときは、かつおだしにしてより和風に仕立てることもあります。

これはこれでやっぱり好物なんですよね。

🐽とんなのかぶたなのか

豚汁。

今でも自分の中では、懐かしいコンソメスタイルを“ぶた汁”、味噌仕立てを“とん汁”と呼んで区別しています。

なぜ実家で豚汁をとん汁と読むのかを母に訊いてみたら、こんな返事でした。

「関西弁なんちゃうかぁ?」

たしかに、関西は牛肉文化。
ただ単に“肉”といえば牛肉です。

カレーも基本はビーフカレー、肉じゃがも牛肉、コンビニでは肉まんと呼ばれるひと品も“豚まん”と呼んでます。

なるほどなぁと思いました。
“とん”ではなく“ぶた”と呼ぶことで、豚肉はいってますよ、と伝えやすくしてきたのかもしれません。

これからの季節、ますます美味しくなる豚汁。
ことしも我が家では“ぶた汁”、“とん汁”どちらも活躍しそうです。

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