きんぴら旅情
故郷を離れた生活、もう何年経つでしょう。
🚅故郷への旅
水があり、緑があり、それなりに街で生活の不便もなく、離れたからこそわかるその魅力。
その街で暮らしていた頃には気付かなかった、故郷のよさは日常でなくなってはじめて、認識できるようになった気がします。
外出や旅がふつうにできる、そんな世の中に戻って、年末年始、GW、夏と帰省するたびに、あの頃は特になにも思わず目にしていた景色を眺めては、きれいだなぁと思うようになりました。
いつの間にか見なれた景色が日常ではなくなり、まるで旅をしているような気分になるようになったことが不思議に思えます。
🍚懐かしい食卓
でもそれは、それだけ長い期間故郷から離れて暮らしてきた証。そしてその生活が自分にとって日常化したということなのでしょう。
故郷に移動することを旅と感じるようになり、旅の目的地となった故郷でしみじみとした思いを感じるのは、その地で過ごす時間に限りがあるからなのかもしれません。
実家では食卓にも、懐かしさをしみじみ感じます。
毎日食べられたあの頃はがつがつ食べて、ぱぱっと済ませていたかもしれない実家の味。いまはひと品ひと品ゆっくりと箸をつけながら、自分の中の記憶をそれぞれの料理に重ねているように思うのです。
🥢ノスタルジック・カテゴリ
現在の日常の中にも、そんなノスタルジーを感じる食卓はあります。
子どもの頃から好きなメニューは、そのひとつのカテゴリ。たとえばハンバーグ、たとえばオムライス、たとえばビーフシチューにコロッケにエビフライ。
自分でつくるときは、どの料理にも複数のレシピがあります。それはお気に入りのお店の味を再現するいくつかのレシピと、実家で食べたオンリーワンの母の味を再現するレシピ。もちろん、郷愁をそそられるのは後者のほうです。
そしてもうひとつ、懐かしい気持ちになるカテゴリ。それが和食。
やっぱり日本人なんですね。個人的な嗜好としては、洋食好きを自認しているのですが、お醤油、みりん、砂糖、出汁の味付けは心と体が欲します。そしてそのカテゴリだけで組み合わせた食卓は、どこか気持ちをほっとさせてくれるのです。
🍱The和食のお弁当の懐かしさ
そして、ときにはそんな和食をテーマにした、お弁当を作ってみることもあります。
この日はおいなりさん、牛肉のしぐれ煮、ほうれん草のおひたし、玉子焼き、きんぴらごぼうに大根のお漬物。
こういうThe和食のお弁当は、ハンバーグやえびフライのはいったお弁当と比べて、見た目は地味かもしれません。
でもひと口、またひと口と食べるにつれ、故郷の景色が頭に浮かぶ気がします。いつも食卓に並んでいたとか、学生時代のお弁当の中身がいつもこれだったとか、そんなわけではありませんが、食べ慣れた味に郷愁をそそられるのです。
🔪きんぴらごぼうの材料
そんな中でも特にほっとする味で、和のお弁当をつくるときは、必ず入れたくなるのがこれ。
きんぴらごぼうです。
パリパリした食感、お醤油風味で甘めの味付け。お弁当の箸休めといいつつ、結構存在感もあって、おうちごはんの小鉢にすれば、お酒も白いごはんも進むひと品です。
🔪材料(つくりやすい分量)
・ごぼう…1本
・にんじん…1/3
・酢…適量
・水…適量
・醤油…大さじ2
・みりん…大さじ1
・砂糖…大さじ2
・鷹の爪…1本
・粒ごま…適量
つくるときは、ごぼう1本を使い切るのがつくりやすいかなと思うので、いつも多めにつくってそのまま作り置きの常備菜にしています。
🔪さあ、きんぴらつくろう
では、きんぴらづくりスタートです。
ボウルに水を張ったらお酢を少し垂らしておきます。そこにささがきにしたごぼうをどんどん投入。酢水につけてアク抜きします。
ささがきのコツは鉛筆を削る要領で…なんていいますが、近ごろは鉛筆自体使う機会が減りましたよね。そのうち、逆に鉛筆の削り方がわからない人に、ごぼうをささがきにする要領ですよ…なんて説明をするのかもしれません。
にんじんは薄く切って、細切りにしておきます。
ごぼうの切り方はささがき以外に、細く切るスタイルもありますが、個人的には断面の広いささがきのほうが味がよく染みるように思います。さらに繊維を断つ角度に包丁が入ることもあって、硬さ的にも食べやすいのもポイントかなと。
鍋にごま油を敷いて、鷹の爪を投入。あまり辛くない仕上がりにしたい場合は、種を入れなければOKです。
水気を切ったごぼうと、にんじんをいれて炒めます。
しんなりしてきたら、醤油、みりん、砂糖をプラス。
味をからめながら、調味料の水分で炒め煮にします。
味がなじんで水分がほぼなくなったら、火を止めてごまを振り入れます。
しばらく冷まして、味を染み込ませます。
これで、きんぴらごぼうのできあがり。
🗾きんぴら旅情
ごぼうのパリパリした食感、ごはんにも日本酒にもビールにも合う、甘辛い和風味。この味に懐かしさを感じるのは、やはり日本人だからなんでしょうね。
きんぴらごぼうは、お弁当の箸休めにもぴったりです。牛肉のしぐれ煮、玉子焼き、おいなりさんとやわらかいメニューが居並ぶ中で、そのパリパリ食感はとってもいいアクセント。
きんぴらを食べて懐かしい気分になったとき、思い浮かぶのは故郷の景色。
そこにいつしか加わった、旅のような帰省の感覚。自分にとってのきんぴらは、どこか旅情に似た感覚を呼び起こすメニューなのです。
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