【レビュー】『世界中を震撼させた8日ぶりの大逆転劇』~グループE 日本VSスペイン~

試合結果

2022 FIFA カタールワールドカップ
グループE
12/1 28:00K.O. @ハリファ国際スタジアム
日本(2-1)スペイン
11分 アルバロ・モラタ
48分 堂安律
51分 田中碧

スタメン

マッチレポート

8日ぶりの大逆転劇。スペインを撃破し、堂々の首位突破

ハリファ国際スタジアムが再び歓喜に包まれ、蒼き侍の勇姿が早朝の列島を沸かせた。

グループリーグ突破をかけた第3戦。日本は細かいパスをつなぐスペインのスタイルを踏まえ、システム変更を行った。2試合続けて採用してきた[4-2-3-1]ではなく[3-4-2-1(5-4-1)]でスタートすると、相手をマンツーマンで捕まえながらボールを奪う機会を虎視眈々と狙っていく。しかし、立ち位置を微妙に変えるインサイドハーフを捕まえきれず、プレスが空転する。開始直後から押し込まれる中、11分にセサル・アスピリクエタがフリーで蹴り込んだクロスをアルバロ・モラタに頭で合わせられ、先制を許してしまった。

0‐1で迎えた後半、森保一監督が堂安律と三笘薫を投入する。そして、プレスを強めた。前半は相手のウイングをマークしていたウイングバックが相手のサイドバックに向かっていく。日本の逆襲が始まった。

48分、敵陣深い位置までボールを奪いに行った三笘の動きに連動して相手ゴール前まで圧力をかけると、伊東純也が敵陣で身体を張ってパスカット。ルーズボールを収めた堂安がPA右角から左足を一閃。強烈なシュートがGKウナイ・シモンの手を弾き飛ばし、ネットに突き刺さった。

反撃の狼煙を上げた同点ゴールからわずか3分後だった。51分、伊東が敵陣でボールをキープし、堂安がPA右を縦に突破してクロス。これはファーサイドに流れるも、三笘が懸命に足を伸ばす。ゴールラインギリギリのところから中央に折り返し、最後は田中碧が押し込んだ。VARチェックの結果により、三笘のクロスがゴールラインを割っていなかったという判定が下され、逆転ゴールが認められた。その後、選手交代で攻勢を強めるスペインに対して、日本は冨安健洋、遠藤航を投入して守備の強度を高めると、リードを死守。2-1でスペインを撃破した。

誰が予想していただろうか。優勝経験のあるドイツ、スペインと同居する“死の組”を首位で突破することを。強豪国を前に厳しい予想が飛び交う中、「新しい景色を2022」というスローガンを掲げたチームは快進撃を見せた。第1戦でドイツを下すサプライズを起こし、第2戦でコスタリカに苦汁を飲むも、第3戦でスペインを打ち破った。世界との差は縮まっている。欧州で日常を過ごしている選手たちが力で、結果で日本サッカーの真価を示した。


コラム

スペインの猛追を許さなかった右サイドの冨安健洋

68分、1点を追いかけるスペインが動いた。左ウイングにアンス・ファティ、左サイドバックにジョルディ・アルバを投入する。バルセロナでリオネル・メッシの背番号10を継承した20歳、初戦にアシストとPK獲得で大勝に貢献した33歳の超攻撃的サイドバックを加える。スペインが攻勢を強めたことは明らかだった。

しかし、日本はスペインの左サイドに決定的な仕事を許さなかった。同じタイミングで森保一監督は冨安健洋を投入していたのだ。これまで彼が代表で務めてきたのはセンターバック。守備の要としてゴール前中央でクロスを跳ね返し、シュートをブロックしてきた。そんな冨安が任されたのは右サイドバック(ウイングバック)。ファティのドリブルを食い止め、アルバにクロスを入れさせない。スペインの左サイドからの攻撃を防ぐというミッションを与えられた起用だった。

代表では馴染みのないポジションでのプレーは、途中出場でスペインの猛攻から逃げ切りを目指すという難しいシチュエーションだった。しかし、所属クラブではサイドバックを任されている背番号16は抜群の安定感を発揮。日頃から世界有数のドリブラーを相手にしているため、慌てることなく対応していく。身体の強さでドリブル突破を許さず、冷静な判断でクロスを上げさせない。圧倒的な守備力で右サイドに防波堤を築いた。

ドイツ戦での負傷から復帰した冨安がサイドの守備を補強し、スペインから逃げ切ったことは大きな成功体験になる。頼もしすぎる守備職人に頭が上がらない。

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