【欧州サッカーの勝因】『柔軟性と忍耐力で上回ったインテルがウノゼロ』~セリエA第31節ユヴェントスVSインテル~

2021-2022 セリエA 第31節
4/3 27:45K.O. (日本時間) @アリアンツ・スタジアム
ユヴェントス(0-1)インテル
45+5分 ハカン・チャルハノール

世界平和を訴えるジョンレノンのイマジンが鳴り響く中、迎えたイタリアダービーはアウェイのインテルがウノゼロを完成させて勝利を収めた。

立ち上がりに主導権を握ったのはユヴェントスだった。[4-4-2]のプレッシングでインテルのビルドアップをけん制して、素早いカウンターで攻め入る。9分、右サイドに追い込んでロングボールを蹴らせて自陣で奪うと、ダニーロ、モラタが縦にパスをつなぎ、ヴラホヴィッチがPA左からシュートを放った。ヴラホヴィッチとディバラが交代しながらインテルのアンカーを務めるブロゾヴィッチを監視することで中央を封鎖して、サイドに追い込むプレスが効いていた。11分にはディバラが、15分にはクアドラードがミドルシュートを放って、ゴールに迫っていく。

しかし、インテルも黙っていない。GKハンダノヴィッチを中心とした守備陣が粘り強い対応で、ユヴェントスの攻撃をしのぐと、徐々に主導権を取り返していく。基本システムこそ3バックだが、シュクリニアルが右に、バストーニが左に開いてPAの幅を取る。そして、ダンブロージオが右のタッチライン沿いに立ち、左からペリシッチが下りてくることで、4バックを形成。前プレスをかけてくるユヴェントスの4枚に、4枚のディフェンスラインでかみ合わせることで、中央のブロゾヴィッチが浮くようになった。

ユヴェントスとしてはインテルのビルドアップの要である背番号77をケアすれば、サイドから前進を許し、サイドを封鎖しようとすれば、中央が空いてしまう。2トップが攻から守の局面で歩くシーンが散見されるようになると、徐々にボールの奪い所が定めなくなり、プレッシングの勢いが影を潜めていった。

3バックから4バックに可変するインテルのビルドアップが、ユヴェントスのプレッシングから主体性を取り上げたのだ。

そして43分。中央が空いた瞬間を逃さなかったインテルが試合を動かす。

ユヴェントスがプレッシングをかけるために[4-4-2]をセットしようとするも、最前線のヴラホヴィッチとディバラが歩いているため、中央を封鎖できない。

すると、バレッラが中央からボールを運んでいく。ユヴェントスのダブルボランチをくぎ付けにして、ボランチの背中に潜ったチャルハノールにパスを出し、右サイドに展開。幅を取ったデュンフリース、下でサポートするチャルハノール、内側に入ってきたバレッラで三角形を築いて、PA右角で数的優位を作ると、バレッラがボックス内に突進していき、こぼれ球をデュンフリースが拾った。そして、ドリブルで突っ込む背番号2が倒されてPKを獲得。チャルハノールのPKは防がれるも、GKが先に動いたのか、シュートを打たれる前にユヴェントスの選手がPAに入ってしまったのか。PKはやり直しになり、チャルハノールが2度目のPKをゴール左隅に流し込み、インテルが先制点を奪った。

インテルは後半の序盤も前半と同じようにユヴェントスのプレスから押し込まれる時間を過ごすも、集中した守備でゴールに鍵をかけた。そして、カウンターから2点目を狙いに行きながら試合を進めて、勝点3を持ち帰った。

ユヴェントスのプレッシングは強度もあり、連動性もあるが、長くは続かない。プレッシングは最前線の選手による限定があってこそ成り立つ。サイドに追い込むのか、中央におびき寄せるのか。前の選手の追い方、立ち位置を見て、狙い所を定めた後ろの選手が連動して奪いに行く。この試合だとユヴェントスの2トップがスイッチを入れて、初めて連動性のあるプレッシングが発動していた。

ユヴェントスがプレッシングから主導権を握って攻め入ったのは、前半の立ち上がりと後半の立ち上がり。いずれも、キックオフ直後から発揮した集中力が源になっていた。2トップが高い集中力を発揮した前半と後半の序盤に攻め入り、ゴールまで奪うことができていたら、違った結末になっていたのかもしれない。

インテルは、攻められた時間帯で失点しない忍耐力を持っている。高い集中力を発揮して守り切ると、柔軟にビルドアップの形を変えて、主導権を握り返す。そして、ユヴェントスの集中力が切れた一瞬の隙を突いて、先制点を奪ってしまった。90分を通して試合巧者ぶりを見せつけたウノゼロは会心の勝利だったのではないだろうか。

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