タカギタカシ/TKG

サイエンスと経営と。高エネ物理修士のあと銀行に就職すると、なぜか企画マンになり、あっこ…

タカギタカシ/TKG

サイエンスと経営と。高エネ物理修士のあと銀行に就職すると、なぜか企画マンになり、あっこれ経営の道極めるしかないわと肚を括る。シンガポールでMBAを取得。細々と雇われ人街道。書評というより、本をダシに喋りたいことを喋ります。お腹空いたね、ごはん行く?

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地方の問題と「ストーリー」

ちまたでは、「地方の時代が来る」と言われています。 その文脈は様々で、インターネットの時代だからとか、コロナ禍の時代だからとか、少子化対策だとか、将来の大災害に備えて東京一極集中を避けるべきだからだとか、色々あるような気がします。 でもどれもこれも、「地方の時代が来てほしい」という願望にすぎないように感じられます。 うちの父方の祖父は、若い頃に立身出世のために香川から大阪へやって来たようです。少なくとも江戸時代中盤からは長子続きの家系の長男で、立場は悪くなかったのだろう

    • 力が欲しいか、ならば演じてみよ

      僕はといえば、小さい頃から内向的で、外で駆け回りもする一方、部屋で本を読んでいる方が好きな子供でした。たとえば、ボール遊びは好きだけど、大声で怒鳴ったり、怒ってボールを人にぶつけたりする子供のことがとても苦手で、ガキ大将みたいなものが大嫌いでした。 中学校に上がると、周囲は住んでいる地域のガラの悪さがテキメンに現れていて、クラスではいじめは行われていたし、窓ガラスを割って回る不良もいたしで、環境が荒れていました。 そのころ僕はフルコンタクト空手を習っていました。誰に言われ

      • マネージャー、このか弱き存在

        そういえば、ずいぶん前に、『もしドラ』って本が流行りましたよね。野球部のマネージャーがドラッカーを読んで野球部を立て直していく話でしたっけ。筋書きはめちゃ定番でしたが、それだけに当時はすごく受け入れられ、売れていた記憶があります。 組織の活動がうまくいくようにマネージする、というのは部活のマネージャーも、会社のマネージャーも変わらないと思います。しかしながら、不思議なことにマネージャー=エースだという誤解がまかり通っているような気がしてならないですね。 平社員(いわゆるイ

        • 回帰の誤謬〜部下の教育と自己認識に現れる共通の罠

          みなさんは回帰の誤謬という言葉を知っていますか? 回帰とは平均回帰のことで、誤謬(ごびゅう)とは誤り・エラーのことです。早い話が、「ものごとはだいたい平均に回帰するのに、その挙動に必要以上の意味を見いだしてしまう」ことです。 多くの日は同じくらいの成果をだすけれども、たまには大当たりもし、たまには大きなミスもするということです。あたりまえ過ぎて馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、多くの人は、大当たりも大ハズレも長続きしないこということを忘れがちです。 上記は、日々のパフォーマン

        地方の問題と「ストーリー」

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        • 本のダシ
          35本
        • 雑記
          3本

        記事

          「なるようにしかならない」を活用する

          お前は○○なんだから××であるべき。 これ、僕が嫌いなフレーズの一位に燦然と輝くやつなんですけど、あろうことか、僕にこれを言ってくる人が後を絶たないのです。 「おまえはこういう人間なんだからこうすべき」というのは、だいたいは僕が一方的に損をして相手にかしずけという意味です。ひどいことに、その損を、苦しみを快感として感じろというマゾの勧めまであります。「苦しめ! そして喜べ!」というわけです。正気か。 だいたいの友達は僕が型破り(というか型がない)ことを理解してくれている

          「なるようにしかならない」を活用する

          タダで贈るよりも高いものはない(ただしリターンはないと心得よ)

          エコノミックアニマルである僕たちは、常日頃、経済原則のことを考えて生きています。これをするのはそれだけの価値があるのか? 投入する労力に見合うのか?  この文脈で至言だと思っているのは、このライトノベルのセリフです。 損得勘定は我らの共通の言語。それはこの天と地の間で二番目に強い絆だ。 (『まおゆう魔王勇者』) 経済感覚というのは、言葉が通じない二者の間でさえ、交渉を行う場合の確固たる原則です。むしろ、経済的に見合わない決定する相手を軽蔑するほどの勢いです。お買い得なオ

          タダで贈るよりも高いものはない(ただしリターンはないと心得よ)

          愛すべき仕事を自分でつくるということ

          やりがいのある仕事をしよう! ちまたに溢れたこんなフレーズ。言うは易し、行うは難し。真面目に考えはじめると、自分のやりたいことでは稼げないよなあとか悩んでしまうでしょう。 キャリアコンサル系の人は、自分がやりがいを感じることを要素分解して、やりがい要素の多い仕事を見つけましょうとか言います。たとえば、「医者になりたい!」を分解していって、人を支援するのがやりがいだと気づいたのなら、医療職でなくても人の支援ができる仕事を探すといいよ、とか。 まあなかなかそういう簡単なもの

          愛すべき仕事を自分でつくるということ

          慣性なんてぶっとばせ⑤

          「この世の悪を煮詰めたような人」というのにはさすがに出会ったことはないにしても、「ダメ会社員を煮詰めたような人」というのに出会ったことはないですか? セクパラパワハラ当たり前(「セ・パ両リーグ制覇」ってやつですね)、えこひいき当たり前、気に入らない部下の報告は無視し、トラブル案件の方針変更進言には「言い訳してないでさっさとやれ」と詰め、同じ内容でも上からの指示には従い、下からの提案はくだらないと一蹴する。 でも意外にも、そういう絵に描いたような悪い会社員ですら、社内の人全

          慣性なんてぶっとばせ⑤

          慣性なんてぶっとばせ④

          この『慣性なんてぶっとばせ』シリーズは⑤が最後になります。今回は最後の一個前ですね。 昔、水泳をやっていた中学生のころ、バタフライの足(ドルフィンキック)がばらけていてバタ足になっていると指摘を受けたことがあります。自分ではまったくわからなかったのですが、そう言われるので仕方がない。 なるべく意識をして両脚を同時に動かすように努めたのですが、コーチから見ればまだばらけている。らしい。僕にはそのあたりがどうもわからなかったのです。で、どうしようもないので、コーチに両脚をロー

          慣性なんてぶっとばせ④

          慣性なんてぶっとばせ③

          「本当に飛び抜けたかったら、得意で好きなことを突き詰めるんです。それ以外に投資しても無駄です。苦手を克服して平均的能力を獲得してもトップにはなれませんから」 そう言っていたのは、誰でも知っている米系グローバル企業の大ボスでした。それを聴いたとき、目が覚める思いがしたものです。そのときの僕ときたら、必死で苦手をどうにかしようとしていたんですから。 人はついつい「ダメなところ」に注目してそれを改善しようとしてしまいます。 おそらく、受験勉強ではそれでうまくいったのだと思いま

          慣性なんてぶっとばせ③

          慣性なんてぶっとばせ②

          僕は最近、量子力学の総ざらいにはまっています。「え、何でそんなことをしてるの?」と思われるかもしれませんが、じつは僕は経営学以前には物理学を大学で専攻していたのです。量子分野は専門分野だったのです。 こんなことを再びやりはじめるなんて、もちろん、今年の初めには考えてもいませんでした。しかし、状況は流動的なのです。ジャングルの奥地では、思いも寄らなかった作戦変更が行われる場合だってあります。 さて、個人のライフプランですらこんなふうに状況に応じて刻々と変化していくのに、組織

          慣性なんてぶっとばせ②

          慣性なんてぶっとばせ①

          note を書くのはずいぶん久しぶりになりますね。会社に全力投球していたのですが、「組織外の活動とバランスをとるのはどうだろう」というアドバイスを受け、なるほどそれもそうかと思い再びペンを執った次第です。 なんだかんだ、従来の僕は社外活動の多い人でした。なので結局、回帰してきたということです。「らしからぬ」行動よりも「らしい」行動の方を勧められてしまうあたり、人はその「本来」からは離れがたいのであると思わされます。 組織文化という幻想さて、人は「組織」で働いています。「会

          慣性なんてぶっとばせ①

          退職エントリが流行っていますね

          「退職エントリが流行っていますね」などというと、アレかな? コレかな? と複数思い浮かべられてしまうよな世の中になってきました。それ自体は個人の自由な発信なので良いとして。 どなたかがツイートされていましたが、退職エントリを書くということは、その会社が好きだったということなのだというのは同意します。僕もいくつか会社を変えていますが、全部が全部書く気になるかというそうでもないので。 そういえば、退職エントリは書いてないですが、退職実況はしましたね。うん。 ところで、企画と

          退職エントリが流行っていますね

          武器よさらば: 会話から武器を取り外そう

          折しも、幸福に関する駄弁りの二回目で「あなたは銃を片手にコミュニケーションをとっている」という話を書いたすぐ後だったのですが、ある女性から、「男って、女に対していつも武器を片手に話すよね」という記事を共有され、「おおそうか」と思ったのでした。これがまさか、男女論になるとは……。 上記の記事では、「女性は男性を見るだけで恐怖を覚える」というものでした。体格差から物理的な力の差が示唆されるところから、丸腰同士でも男性は武器を持っているに等しい、となっており、男性に原罪を植え付け

          武器よさらば: 会話から武器を取り外そう

          幸福について駄弁る③

          僕は自分の心が荒ぶりがちなのはよくわかっていて、それはド治安の悪い中学校で唐突に喧嘩をふっかけられることに対応するために仕方なく進化(退化?)したものと思っているのですが、一度身につけてしまったその荒さをunlearnするのがなかなか至難の業でして。 僕の父親も相当に危機意識の強い男でして、常に内部でアラートが鳴りっぱなしなのはよくわかっていました。口癖は「平和ボケしおって」で、常に悪い事態に備えることを考えている戦士のような男でした。 そんな状況だったからか、父は若いこ

          幸福について駄弁る③

          幸福について駄弁る②

          安定——あらゆる種類の安定——に基づいた道徳に依拠している人々は道徳的ではありません。なぜなら、安定願望は恐怖の結果だからです。私たちが道徳と呼んでいるものは恐怖と強制であって、実は少しも道徳的ではないのです。  —— クリシュナムルティ 前回は仕事人としての幸福について考える回だったのですが、今回はもっと、プリミティブなほうへと降りていってみましょう。 今回のダシ(失礼)は、アドラー心理学を取り扱った二冊、『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』です。 僕は心理学の専門家

          幸福について駄弁る②