見出し画像

慣性なんてぶっとばせ⑤

「この世の悪を煮詰めたような人」というのにはさすがに出会ったことはないにしても、「ダメ会社員を煮詰めたような人」というのに出会ったことはないですか?

セクパラパワハラ当たり前(「セ・パ両リーグ制覇」ってやつですね)、えこひいき当たり前、気に入らない部下の報告は無視し、トラブル案件の方針変更進言には「言い訳してないでさっさとやれ」と詰め、同じ内容でも上からの指示には従い、下からの提案はくだらないと一蹴する。

でも意外にも、そういう絵に描いたような悪い会社員ですら、社内の人全員から嫌われているわけでもないのです。これはどういうことなんでしょう?

今回はこちらの本から、評価に関するお話をネタに頂戴します。

人を評価するとは、評価者の趣味の開陳である

これはリーダーがメンバーを評価する場合の話ですが、ある調査では、リーダーによるメンバーへの評価の54%は、リーダー(評価者)の趣味による成分だとわかったそうです。

人事評価は評価される側にとっての鏡ではなく、評価する側にとっての鏡となっていると言えるのです。

たとえば、あるリーダーが「誰が見てもAさんはハイパフォーマーだ! 俺は公平公正だ! お前ら異論はないよな!」と言ったときには、周りは(ああ、このリーダーはAさんみたいな人を好ましいと思うのね……)と思う。それ以上でもなんでもないのです。そして、他者評価とは根源的にそのようなものです。

上司にこびへつらって部下に厳しい、部下に評判の悪い人がなぜか昇進していくことがあります。しかし、これは「なぜか」でもなんでもなく、人事評価の五割超が評価者の趣味であるという前提に立てば、何の不思議もない。上司にこびへつらうのは最適戦略だと言えます。人間的に褒められた話ではないですが。

「ハイパフォーマー」ってなに?

そもそも、「パフォーマンス」とはふわっとしたものです。普通の人事評価では、そういうふわっとしたものついて、テキトー(≠適切)な指標を置き、指標に沿って測定することで「パフォーマンス」が出ていることを客観的に見ようとします。

これは「健康診断」と同じで、「健康」を「BMI」だとか「コレステロール」だとかの指標で測ろうとするのと同じです。

けれども、健康診断を全部クリアしたからといってその人が「健康」かどうかなどわかりません。パフォーマンス測定も似たようなものです。

「人事評価」は、健康診断のための指標を、評価者の好みでチェリーピッキングしたものだと考えるとわかりやすいです。ああ、この評価者はBMI重視なのね、とか、コレステロール重視なのね、とか、その程度のものです。そこには、評価者の趣味が色濃く表れます。

そう思うと、評価者の好みが開陳されるわけですから、本格的に趣味嗜好がバレて恥ずかしいのは評価者の側ですね。

昔、とある会社で、関西で採用された一般職女子の外見はみんな素朴だったのに、関東で採用された一般職女子がみんなパリピ寄りだったというような話を聞きました。ここまで露骨だと、東西の採用者の女の趣味だよなーなんて噂されたり。

人間を評価することが主観にすぎないとしたら

真面目な話に戻ると、人事評価はさらに、時と場合によってもぶれるので、測定誤差があまりにも大きい。前日に評価者が被評価者と喧嘩をしただけでもぶれそうなものです。おなかが痛くてもブレそう。測定のたびに変わるような数値は、データサイエンスでは信頼しないはずです。

本書では、メンバーを「客観的に」評価するくらいなら、いっそ思い切り「主観的に」評価したほうがマシだと言っています。

確かに、あるリーダーにとって、「重要な仕事をAさんに任せたいですか?」という問いへの答えは、そんな数日・数か月でブレるものではありません。

そういう意味では、信頼性のあるデータが取得できそうです。とはいえ、ここでは「高信頼性」は「ブレない」ということであって、「正しい」ということではありません

けれども、リーダーが「仕事を任せたい」と思っている相手は、独立にエンゲージメントサーベイを行うと、「自分は期待されていると思う」と答える傾向にあるそうです。

思いは伝わっているということですね。

つまり、「客観性」を排除して「主観的に」評価することで、リーダーとメンバーのラブ度をそこそこ的確に測ることができます

本書では、この「主観的な測定」のほうがまだ有用だと言っています。繰り返しになりますが、これは「正しい」測定方法ではありません。何も測れないよりは、ラブ度を測ったほうがましだと言っているにすぎません。ことほどさように、他者評価とは一喜一憂に値しないものなのです。

(あなたが評価者のことをラブだと思っている場合は、評価者がどう思っているのか、とても気になると思いますが。。。いいのかこんなことで)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?