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退職エントリが流行っていますね

「退職エントリが流行っていますね」などというと、アレかな? コレかな? と複数思い浮かべられてしまうよな世の中になってきました。それ自体は個人の自由な発信なので良いとして。

どなたかがツイートされていましたが、退職エントリを書くということは、その会社が好きだったということなのだというのは同意します。僕もいくつか会社を変えていますが、全部が全部書く気になるかというそうでもないので。

そういえば、退職エントリは書いてないですが、退職実況はしましたね。うん。

ところで、企画という仕事を長年やっていると、自社に限らずさまざまな会社の経営サイドの中身が見えます。そして、経営サイドの意識と従業員サイドの意識というのはなかなかに噛み合っていないのが見えます。マジに噛み合っていません。

どんどん社員が辞めていく。でも手を打てていない。打てないのには理由があって、経営者たちは本当に解っていないのです。なぜ人が辞めるのかを。

もう終わっている会社

辞める人は一様に言います。「この会社はもう終わっている」と。何が会社を終わらせてしまったんでしょうか? まだその会社は存続しているのに。そして、どういう会社が「終わっていない」のでしょうか?

ぴったりの名前の『もう終わっている会社』という本に、いくつかヒントがありました。もしかすると正しくはないと怒られるのかも知れませんが、経営陣が未来を見ていないときに、「終わっている」と思われるのではないかと、僕は思います。

どういうことか? たとえば世間には、SWOT分析のような、有名な分析手法があります。内部の状況と外部の状況を分析してウンヌンするアレです。

これをやると経営陣は、「なるほど、こういう外部環境で、弊社はここが強いのか。なるほど。ならばこの路線で行こう。他は選択と集中により廃止だ」となることが多いです。

でも気をつけて! それって、あなたの会社のAs-Isでしかないから! ようするに、その会社がいま上手く行っているところに金を投下すると決めているだけなんです。SWOTを採用しても良いし、コアコンピタンスを考えてもいい。でも、分析手法を間違えると、あたかも過去のことを未来かのように思い込んでしまいます。

そうです。過去です。現在ですらないです。そりゃそうです。分析表に載るのは、きのうまでの状況です。下手をすれば、先月の、もっと出典情報が古いと去年の情報です。そんなものを根拠に、あしたの仕事を決めるんですか?

中期経営計画となんとかは使いよう

こんな仕事を長年やっていると、いろんな会社の経営者の方の意思決定の場に居合わせます。中には、「去年と同じで良いんじゃないかな」とか言いだす人もいます。

儲かっている業界で、儲かっている業種ならそれもありです。経営者の存在価値はないに等しいですが、邪魔をしないだけマシです。でも、三年ごとに前回と同じ中計をつくってどうするんですか。どこの会社も変わり続けているんです。自分の任期さえ全うできれば良いとか思ってるんじゃないですか。

人は言います。中期経営計画なんて当たらない、と。初年度はそこそこ当たる数字を掛けたとしても、二年目三年目なんて当たらない、ひどいものだと。

僕も、三年間数値を当て続けた中期経営計画なんて見たことはないです。でも、そうじゃない。中期経営計画は当て物じゃないんです。当たったらボーナスが出たりするものじゃないんです。なんで当てることにこだわったり、当たらないからやる意味がないとか言いだすんでしょう。

いや、そもそも三カ年である必要もないです。優れた会社の中には、先を見通すのが難しいから、一年間の計画だけに切り替えたところもあります。それでもいいです。でも、計画は必要なんです。たとえそれが当たらなくても。

計画というのは、リーダーが仲間を引っ張っていくときに描く地図です。当たる必要はないのです。当たらなかったときは当たらなかった理由を考えて軌道修正する。それでいいんです。

けれど、計画なしには、会社という集団はストーリーを持つことができません。共有されたストーリーのない会社はどうなるか? 瓦解します。

未来を引き寄せる

いろんな理由で計画をつくらない場面に出くわしてきました。

「きみはわかっとらんのだろうが、現場が数字を管理するのは負荷が高いんだよ」

「もし計画値を下回りでもしたらどうする? 恥ずかしいじゃないか」

恥ずかしいのは、自分たちの仲間を引っ張っていくための、宝の地図を描かない経営者・責任者のほうです。他の言い訳も聞いてきました。

「前社長の方針が知りたい。前社長にきいて来てくれ」

「前社長は方針を知らないだと? じゃあ創業者だ。創業者の方針が我が社の方針になるに違いない」

そりゃあ、創業時にはなんらかの目論見があったでしょう。前社長ももしマトモな経営者なら、何かの目的を持って経営をしていたでしょう。でも、それがなければ何も決められないというのは違うでしょう。

あなたは船頭として何がしたいのですか? これはあなたの会社です。あなたのチームです。やることを決めるのはあなたです。

さいわい、あなたの部下は優秀で、Slack や yammer で会社の未来について話しています。彼らは現実の世界が見えています。中には、未来絵図をそれなりに描いている人もいます。

現状分析はたかが現状分析です(というか過去分析です)。大事なのは、未来について考えること。……未来がどうなることかを当てるということじゃあないです。未来はこうなるべきだと、自分が仲間のための北極星になることです。

経営者になった人たちに言いたい。リーダーになった人たちに言いたい。あなたたちは、環境の中でうまく波乗りをするのも仕事だけれども、一番大事な、「どこへ向かうのか」を決めるという仕事を抱えているのです。あなたのいま乗っている船が進んでいる方向は前船長が決めたかも知れない。けれど、いまからどこへ進むのかを決めるのは、あなたなんです。

肚を括ってください。そうでなければ、あなたの会社は「終わり」です。未来を描けないことが即「終わり」なんです。未来を描ける人から順に、あなたの船を下りてしまいますよ。

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