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『データ駆動型社会』

IoTやビックデータ解析、そしてAIという言葉が広く使われるようになって、長い年月が経ちました。

今ではApple Watchのようなウェアラブル端末と呼ばれるIoT機器が一般的に利用されるようになり、それらから派生するデータを使ってビックデータ解析やAIという技術がビジネスで使われるようになりました。

これらの技術は少しずつ幅広い分野で使われ始めていますが、これらの技術が浸透することによって社会にはどのような変化が生まれると考えられているのでしょうか。また、日本政府としてどのような社会を目指しているのでしょうか。

今回の投稿ではそのキーワードとなる「データ駆動型社会」を扱い、データ駆動型社会とはどのような社会なのかを整理していきます。

また日本政府が打ち出しているSociety5.0との関係についても見ていきます。

1.データ駆動型社会という言葉

データ駆動型社会は経済産業省における議論の中で登場しました。

IoT、ビッグデータ、AI等のITの技術革新がもたらす産業構造・ビジネスモデルの大変革でどのような取り組みが求められるのかを議論するために設立された情報経済小委員会が2015年5月に発表した、中間取りまとめ ~CPSによるデータ駆動型社会の到来を見据えた変革~ で初めて登場しています。

その後、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」では、「Society5.0」と共に「データ駆動型社会の共通インフラの整備」が重点課題として掲げられました。

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上の図は情報経済小委員会の中間取りまとめで紹介された図になります。

「CPSによるデータ駆動型社会」という言葉でデータ駆動型社会が記載されていることが分かります。

CPSについては以下の定義がなされています。

○CPS: Cyber Physical System。デジタルデータの収集、蓄積、解析、解析結果の実世界へのフィ ードバックという実世界とサイバー空間との相互連関。ドイツが掲げる第四次産業革命(industry4.0) は概念としては同義であるが、実際には製造プロセスにおける取組が中心。

少しわかりにくいですが、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータを収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析を行い、情報や知識に変換して実世界に還元するという相互関係を定義しているようです。

2.データ駆動型社会の定義

では、データ駆動型社会の定義について詳細を見ていきます。

○データ駆動型社会: 上記CPSがIoTによるモノのデジタル化・ネットワーク化によって様々な産業社会に適用され、デジタル化されたデータが、インテリジェンスへと変換されて現実世界に適用されることによって、データが付加価値を獲得して現実世界を動かす社会。

2.1「インテリジェンス」

まず気になるのが、「インテリジェンス」というワード。
ここでいう「インテリジェンス」とは、「情報」や「知識」にあたります。

「データ」、「情報」、「知識」の違いは以下のようになります。

「データ」とは、モノや事象を記録した数値、状態、名称を示すもの。
「情報」とは、収集されたデータを特定の目的や方向性に沿って加工・選別を行い、意味付けをしたもの。
「知識」とは、作成された情報が他の情報、経験則等によって理解され、分析・洞察されたもの。

つまり、「インテリジェンスへと変換」することは、ただ単にIoT機器から出力されたデータを、意味のあるものに変換していくことになります。

2.2「現実社会を動かす」

次に気になるのが、「現実社会を動かす」というワード。

ここでは、2つの意味があるようです。

一つ目は、大量で多様なデータを使って人が意思決定することを通して社会を動かす、ということ。

人が意思決定をする上で、情報や知識は欠かせないものになります。モノがIoT機器になることによって、あらゆるデータが集約され、リアルタイムに全体像が可視化されることになります。この圧倒的なデータ量と種類、そしてリアルタイムな可視化によって人は手に取ったように状況を把握し、判断することができます。

二つ目は、人が介在することなしにデータが自動で社会を動かす、ということ。

AIの発展により、AI自身でデータを自動的に知識に変換して学習し、それにもとづく判断をするようになりました。AIの特徴としては、データの量、種類によって精度を高めることができ、また人よりも迅速に判断することができます。大量で多様なデータを使うことでAIによって自動的に最適な判断をすることができます。

3.情報社会とデータ駆動型社会の違い

データ駆動型社会について説明してきました。ここでは、一般的によく知られている「情報社会」という言葉と「データ駆動型社会」の違いについて触れたいと思います。

「情報社会」とは、情報が諸資源と同等の価値を有し、それらを中心として機能する社会になります。社会の発展段階のひとつとして使われることが多い言葉です。狩猟社会、農耕社会、工業社会と社会の発展が進む中で、メディアの発達、インターネットの発達、通信デバイスに伴い、「情報」に価値が生じたことから、「情報社会」と呼ばれるようになりました。価値を生み出す源泉が「情報」である社会になります。

これに対して「データ駆動型社会」とは、これまで見てきたように価値を生み出す源泉が「データ」である社会になります。

先ほどの2.1「インテリジェンス」の箇所でも触れましたが、「情報」と「データ」は異なる意味を持ちます。

「データ」とは、モノや事象を記録した数値、状態、名称を示すもの。
「情報」とは、収集されたデータを特定の目的や方向性に沿って加工・選別を行い、意味付けをしたもの。

IoT、ビックデータ解析、AIの技術の発展によって、大量・多様なデータを使ったリアルタイムな可視化をすること、そしてAIによる学習を行うために、特定の目的や方向性に沿って加工・選別される前の状態であるデータにより高い価値が生まれ始めました。

このようにデータに価値が生じたことから、「情報社会」と区別して「データ駆動型社会」と呼ぶようになりました。

4.データ駆動型社会のその先(Society5.0)

2017年6月2日に閣議決定された「科学技術イノベーション総合戦略2017」では、「Society5.0」という言葉が提唱されました。

これは、「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな経済社会であり、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済的発展と社会的課題の解決を両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の社会」と定義されています。

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先ほど「情報社会」について見てきたように、「情報社会」とは価値を生み出す源泉が「情報」である社会になります。

これに対して、「データ」が価値を生み出す源泉となる「データ駆動型社会」では、大量・多様なデータに対してリアルタイムな分析やAIを駆使することによって、これまで画一的なサービスしか提供できなかった分野でも、個々の利用者のニーズに対応したモノやサービスが幅広い分野で提供可能になります。

このような「データ駆動型社会」の特徴を用いて、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会を実現するというのが、「Society5.0」になります。

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5.まとめ

今回は、「データ駆動型社会」という言葉について整理しました。

「データ駆動型社会」とは大量・多様なデータによって「情報」や「知識」を生み出すことで現実社会を動かす社会であり、これまでの「情報社会」と比べて価値の源泉が「情報」から「データ」に変化した社会であることが分かりました。

また日本政府としては「データ駆動型社会」の特徴を用いて、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる「Society5.0」という社会を目指しているということが分かりました。

今回の投稿は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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