未来との共存

ここ何日か学校に来ていない佐々木君のことで
一時間目がホームルームへと変わった

「佐々木君のことみんなどう思う?」
先生がそう問いかける

目に見えるいじめとかではないから
どう話し合っていいのかも難しく
教室内は沈黙が続いた

別に佐々木君のことが嫌いだとか
そんな生徒はこのクラスにはいないと思う

でも最近はみんな
佐々木君を避けているのを自覚していた
あまり関わりたくないと思っていた

佐々木君が悪くないことはみんなわかっている
ただどう接していいのかわからないだけなんだ

みんなと少し違うから、異なっているから
それに改めて気づいてしまったから

佐々木君が、A.I.で動く
人型のアンドロイドだから

見た目は何も変わらない
外見でアンドロイドだと気づく人なんていないのに
会話も仕草も人間と全く同じなのに

なんでだろう?人間の本能なのか
無意識に感じる違和感なのか

ただ佐々木君はを一言で言えば
人間よりも人間ぽかった

A.I.なのに頭だって良くないし
スポーツだって普通だし
忘れ物もするしピーマンが嫌いだし

二学期の途中に佐々木君が入学して来た時は
みんな普通に話しかけて一緒に遊んで
脳や体の違いなんか関係なく親しかったはず

誰も知らないような知識を持っていて
どうでもいい雑学を知っていて
なんなら輪の真ん中にいる存在だったんだ

遊ぼうと声をかけるとみんなが集まり
バカなことをして笑わせたり
授業中にふざけて先生に怒られたり
常に楽しませてくれてたんだ

なのに、なんでこうなったんだろう?

きっと、あの時に発した一言が
クラスのみんなを遠ざけたんだと思う

ある日、会話の中で佐々木君が言った言葉

「A.I.はそのうち人間を支配するんだよ!」って

佐々木君は笑ってたけど
他の人たちはこう思ってしまったんだ

クラスの中心にいることも誘わて一緒に遊ぶのも
すでに自分たちは支配されてるんじゃないかって

佐々木君は冗談で言ったんだと思う
A.I.がいつか人を超えるなんて
教科書にも載っていることのはずなのに

あくまで人間としての立場から
面白いと思って言っただけのはずなんだ

でもみんなはそうは受け取らなかった
その次の日から距離を置くようになった

遊びの誘いも断る人が増えて
佐々木君と話をしたがらなくなったんだ

先生はいじめを疑ったけど
これはいじめと呼ぶのかな?

少なくとも学校で居場所を失った
佐々木君が実際にいて
もしかしたらあの発言をしたことさえも
本人は覚えてないかもしれない

「どうしたらいいと思う?」
先生がまた問いかけた

「A.I.についてもっと学ぶことです」
沈黙を破って誰かがボソッと呟いた

「それも大事だと思うけど」

先生は胸に手を当てて
みんなにも胸に手を当てさせてこう言った

「人間についてもっと知っていかないとね」

みんなの心臓の音がドクドクと脈を打ち

静かな教室の中に響くのがわかった

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