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おためし中 (本の紹介などを光触媒のごとく・・・) 2023.10.21〜

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おためし中 (本の紹介などを光触媒のごとく・・・) 2023.10.21〜

マガジン

  • 奈倉有里さんプロムナード

    奈倉有里さん 2023年下半期日経夕刊プロムナード水曜日

  • 本屋さん

    本屋さん

  • 若松英輔さん「言葉のちから」

最近の記事

坂村真民さん「詩集 念ずれば花ひらく」

 疲れすぎて何もやる気が起きず、寝てばかりの週末。ふとこの詩集を開くと今の自分にピッタリな言葉がありました。  一方、ある本では、いつまでも人生があると思うな!と言わんばかりに下記のように語られます。  心と体が元気な時は共感できますが、どちらもやられている人にとってはつらい言葉です。  仮に「今日が人生最期の日になるかもしれない」とした場合、おそらく引越しのように片付けをし、引継書兼遺言書を完成させ、晩は引継書を受け取ってくれる相手と美味しいものを食べながら、思い出話

    • 反田恭平さん「終止符のない人生」/きっと芽吹く時が・・・

       数年前、音楽番組でショパンの「雨だれ」を演奏する反田さんの姿が印象的でした。  曲調として、雨音が強くなる前は鍵盤に顔を近づけ静かに、雨が強くなった時は険しい表情で鍵盤を叩いて押し込むように、雨が少しやわらいだ時は晴れ間を見上げるように演奏する姿。  演奏だけでなく、見せ方もうまいなと思った記憶があります。  この本は、反田さんの幼少期から2021年10月のショパンコンクールで2位になるまでの過程やその後を見据えた内容が語られます。  コンクールの曲目や苦悩のほか、身

      • 小川糸さん「椿ノ恋文」/自筆の手紙の魅力

         鎌倉が舞台の「ツバキ文具店」。  シリーズ3作目となる「椿ノ恋文」は「キラキラ共和国」に続く作品で、相変わらずクオリティを維持したいい作品でした。  主人公の雨宮鳩子(ポッポちゃん)は代書屋を先代から引き継いだという設定で、「代わりに手紙を書いてほしい」という依頼に応える形で様々な人間模様が描かれます。  ポッポちゃんに家族が増えたり、先代の秘密の手紙も驚きの内容で印象的でしたが、義理の娘QPちゃんとの手紙のやり取りを通じて互いの心の距離を縮めていく部分が最も印象に残り

        • 眠るとき君は死に 朝起きてよみがえる/奈倉有里さんのエッセイ「朝、ブリューソフ」日本経済新聞夕刊2023.12.6

           ロシア文学者の奈倉有里さんが日本経済新聞水曜夕刊で連載中のエッセイも今月で終わりかと思うと寂しく感じます。 2023.12.6は「朝、ブリューソフ」 〈泣くな 悩むな 過去など ない!〉 ワレーリー・ブリューソフ  奈倉さんが詩に元気づけて欲しい時、応援歌のようなブリューソフの詩がいいよ!と紹介してくれています。 泣くな 悩むな 過去など ない! 愛想よく にぎやかに 光が とびこんでくる 眠るとき 君は死に 朝起きて よみがえる 無心で見よ 空の彼方を 永遠に続くは

        坂村真民さん「詩集 念ずれば花ひらく」

        • 反田恭平さん「終止符のない人生」/きっと芽吹く時が・・・

        • 小川糸さん「椿ノ恋文」/自筆の手紙の魅力

        • 眠るとき君は死に 朝起きてよみがえる/奈倉有里さんのエッセイ「朝、ブリューソフ」日本経済新聞夕刊2023.12.6

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        • 奈倉有里さんプロムナード
          6本
        • 本屋さん
          7本
        • 若松英輔さん「言葉のちから」
          6本

        記事

          年末年始に読み直したい本/神田昌典さん「非常識な成功法則【新装版】

           年末年始に読み直したい本と言えば・・・ ・「プロフェッショナルの条件」ドラッカー ・『「夢のリスト」で思い通りの未来をつく  る』ブライアン・トレーシー ・「ブレイン・プログラミング」  アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ ・「メモの魔力」前田祐二 などが挙げられますが、神田昌典さんの「非常識な成功法則」もはずせません。  冒頭の「目標は紙に書くと実現する。」を基本として、下記12項目にまとめた内容で行動したくなります。  まとめとして、「いまこの瞬間をハッピーに過ごすこ

          年末年始に読み直したい本/神田昌典さん「非常識な成功法則【新装版】

          若松英輔さん「言葉のちから」偶然と運命について〜九鬼周造の思索/日本経済新聞2023.12.2

           日本経済新聞土曜の若松英輔さんのエッセイ「言葉の力」を毎週楽しみに読んでいます。  12.2は「偶然と運命について」 「運命」について、若松さんは「人生の創造の可能性」を説きます。  まずリルケの書簡に触れ、「生きるとは運命を開花させることである」とし、「抗えない運命」というよりも「それぞれの人生に託された神聖なる義務のようなもの」と捉えます。  続いて、「命」という言葉について。  宿命について定義し、「使命とはおそらく、天命を自覚し、おのれの宿命を受け容れたとこ

          若松英輔さん「言葉のちから」偶然と運命について〜九鬼周造の思索/日本経済新聞2023.12.2

          渡辺 優さん「ラメルノエリキサ」

           2015第28回小説すばる新人賞受賞作です。  高校生の小峰りなは小さい頃から復讐気質。 ある事件の被害者となり、犯人が残した「ラメルノエリキサ」という言葉を元に犯人を探すことになります。  設定が独特でいろんな人を疑ってしまう推理小説風の作品ですが、主軸は「心の闇」部分を描いているような気がしました。    非現実的な設定にあって、病んだ心を深掘りしないところが現実的な感じがし、破滅一歩手前あたりで戻ってこられる「心の闇」作品を他にも読んでみようと「自由なサメと人間た

          渡辺 優さん「ラメルノエリキサ」

          ミシェル・クオ「パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会」

           台湾系移民の娘である著者は、ハーバード大学を卒業後両親の期待に反して、最貧地域のひとつアメリカミシシッピデルタの学校で期間限定教師として赴任します。  ここは、ドラッグや喧嘩など不良を最終的に放り込むスターズと呼ばれる学校で、後に苦難を背負う15歳のパトリックと出会い、教師として寄り添い続けた軌跡を描きます。  アメリカの経済格差や差別、移民問題など色々考えることはありますが、社会の底辺を歩くパトリックに作者が寄り添い続けられる心の推進力の正体を知りたいと思い、分厚い本で

          ミシェル・クオ「パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会」

          荒木 飛呂彦さん「荒木飛呂彦の漫画術」

          「ジョジョの奇妙な冒険」がジャンプで連載開始した当時、巻頭カラーの「石仮面を被った人間が美女の返り血を吸うシーン」は強烈な印象でした。  この本で「『ジョジョ』は王道漫画だ」と荒木先生はおっしゃいますが、主人公が1部の最後で死んでしまうという発想は、「魁!!男塾」で死んだと思われた塾生が生き返ったり、「ドラゴンボール」で孫悟空が生き返ったりする場合と比べて違和感があり、人気がなくて、もう終わるのかな?と思った覚えがあります。 「なぜジョナサン・ジョースターを死なせたか」の

          荒木 飛呂彦さん「荒木飛呂彦の漫画術」

          フランソワ・ルロール「幸福はどこにある」-LE VOYAGE D'HECTOR

           精神科医ヘクトールが休暇をとって旅に出る際、よりよい精神科医になるため「幸福の秘密」があるのならつきとめたいと考えます。  旅先で様々な経験をしながら作成した19のリストが下記です。 幸福について 1.だいなしにするよい方法は、比較すること 2.しばしば思いがけずやってくる 3.未来のなかにしか見ていない人が多い 4.もっと金持ちになったり、もっと偉くなった  りすることだと考えている人が多い 5.ときには、わからないままでいること 6.見知らぬ美しい山のなかを気持ちよく

          フランソワ・ルロール「幸福はどこにある」-LE VOYAGE D'HECTOR

          若松英輔さん「言葉のちから」「良知」とは〜王陽明の教え/日本経済新聞2023.11.25

           日本経済新聞土曜の若松英輔さんのエッセイ「言葉の力」を毎週楽しみに読んでます。  11.25は「良知」とは  若松さんが、王陽明の言葉を集めた「伝習録」(溝口雄三訳)を読んでおられた際、「孟子」の一節「忘るな、助くな」を「おこたるな、せくな」と読ませていることに驚きます。 「忘る」を「おこたる」と読ませる理由は、「忘れるのは、小さな怠りが積み重なった結果」であり、「忘れてはならないことを忘れたのは、言い訳できない自分の怠りである」と示唆している旨伝えます。 「ドキッ

          若松英輔さん「言葉のちから」「良知」とは〜王陽明の教え/日本経済新聞2023.11.25

          スキマスイッチ『POPMAN’S WORLD 2023 Premium』

           本の話ばかり書いてきましたが、少し「積み上げたものをぶっ壊して」みます。 2023.11.25sat  スキマスイッチの20th Anniversary公演に行ってきました。  16,000人収容の会場は満席で、17時過ぎに開演し、ノリのいい曲→バラード→MCと進み、「モニタリング」に出演した際、経堂駅で歌ってる時に大橋さんの知り合いから「今経堂駅で歌ってる?」と連絡があった話や常田さんが名古屋から乗るはずの新幹線が遅れた話(豊橋で不審物騒ぎがあったが結局は弁当だった)な

          スキマスイッチ『POPMAN’S WORLD 2023 Premium』

          奈倉有里さん逢坂冬馬さん「文学キョーダイ」

           3歳違いの姉、弟の対談です。奈倉さんの「夕暮れに夜明けの歌を」と逢坂さんの「同志少女よ、敵を撃て」を読んでからこの対談を読むと作品への理解がさらに深められました。  戦争の話が多かったことを振り返り、奈倉さんが最後にこうおっしゃいます。 「閉塞感に苦しむ人の心が少しでも和らぐような、世界の人たちが少しでも協力して平和な社会を築いていこうと思えるような、風を吹かせていこう。」 「ペン」という銃を持ったセラフィマが「敵を撃つ」のではなく、「強い意志を持った静かな風」を吹かせ

          奈倉有里さん逢坂冬馬さん「文学キョーダイ」

          川尻久子さん「橙書店にて」

           熊本で本屋兼喫茶店を営む川尻さんが、編集者の大河さんから「一緒に本を作りたい」と言われた後、冒頭のように何度か催促を受ける話を書いた「常連さん」、お店での朗読会に村上春樹さんが来られた話をまとめた「秘密の夜」など36話のエッセイです。  解説の滝口悠生さんが「書店というのは、本を買うためだけの場所ではない。そこは本と出会うための場所だ。」と書かれていますが、ネコの白玉やお客さん同士の交流など、「橙書店」は、本だけでなく人と出会う場所のようです。  いつか訪ねてみたい本屋さ

          川尻久子さん「橙書店にて」

          奈倉有里さんのエッセイ「幸福、ゴンチャロフ」日本経済新聞夕刊2023.10.4

           ロシア文学者の奈倉有里さんが日本経済新聞水曜夕刊で連載中のエッセイを毎週楽しみにしてます。 2023.11.22は「太陽、バリモント」 〈太陽のようになろう!誰が僕らを 栄光の道に導くかなんて忘れて(・・・)いつも若々しい太陽になり灼熱の花を撫でよう〉 コンスタンチン バリモント 「太陽のようになろう」 でした。一方・・・ 2023.10.4は「幸福、ゴンチャロフ」 〈幸福はまず幻想と希望と、人を信じやすい心と自信で織りなされ、そこに愛や友情が加わって・・・〉 イワン

          奈倉有里さんのエッセイ「幸福、ゴンチャロフ」日本経済新聞夕刊2023.10.4

          上林暁「野」

           中学3年生の宮本輝さんに 「あんたにこの小説がわかるかな」 と『野』をすすめたのは本屋の親父さんだったそうですが、私に「上林暁」という作家と『野』をすすめてくれたのは宮本輝さんの「本をつんだ小舟」でした。 「面白くもなんともなかった」と感じた宮本さんは、本屋の親父さんに 「どうでした?」 と聞かれた際、曖昧な笑みを浮かべます。 すると、 「こういう小説も、なかなかええもんです」 と返ってきます。  宮本さんは12年後、この小説と再会し、本屋の親父さんに言われた「こういう

          上林暁「野」