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心理系大学院に行くまでの勉強

だれかに憎しみを抱いても、必ずしも実際に暴力を振るうとは限らない。暴力をふるうかどうかの分かれ道はどこにあるのだろうか。 傷害や単発の衝動的な殺人事件(単純殺人事件)を起こしやすい人には三つの重要な要素があると言われている。「怒りを溜めやすい」「衝動的」「抑制がききにくい」である。つまり、怒りをかんじたらすぐに暴力を振るい、鬱憤を晴らそうとする人が傷害事件や単純殺人事件を起こしやすい人物像だと言える。 これらの要素を抱えるようになるのは、生まれつきよ気質と置かれた環境に原因が

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      集団の中の役割や地位が人々の行動を変えてしまうことがある。この例として「スタンフォード監獄実験」と呼ばれる有名な心理実験がある。 実験は1971年にアメリカのスタンフォード大学の心理学者ジンバルドーによって行われた。 実験の参加者達は看守と受刑者の役をランダムに割り当てられた。実験が進むにつれて、看守役の人々は受刑者役に対して独房への監禁や素手でのトイレ掃除の強要などの虐待を行うようになって。その結果、2週間の予定だった実験はわずか6日で中止された。 この実験結果から、人は権

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        周囲に多くの人がいると、人は誰かを手助けすることが少なくなる傾向がある。このような心理学的効果を傍観者効果という。 傍観者効果が注目されるようになったのは、1964年、アメリカのニューヨークで女性が暴漢に襲われて死亡した事件がきっかけだった。当時の報道によると、事件がおきた時間に38人もの人が女性の叫び声や物音を聞いていたのに誰一人女性を助けに行ったり警察に知らせることはなかった。 アメリカの心理学者ビブラタネらは「38人もの人が事件を認識していたにもかかわらず誰も助けに行か

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          まわりの意見に影響されて、周囲に合わせた行動をしてしまうことを「集団の圧力」(同調)という。 アメリカの心理学者ソロモンアッシュは同調が起きやすい条件を調べるために次のような実験を行った。まず、基準となる線を提示する。その後、基準となる線と同じ長さの線を含んだ長さの異なる3本の線を見せる。対象者にはこの3本の線の中から基準の線と同じ長さの線を答えさせる。対象が一人でこの問題に取り組んだ場合は正答率はほぼ100%だった。しかし複数のサクラに同じ誤った解答をさせてから対象者に解答

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          集団で意思決定を行う際に個人の判断や感情、行動などが集団でのさまざまなやりとりを経て極端な方向に強くなる現象が起きる。これを「集団極性化」と呼ぶ。 1961年のアメリカの社会心理学者ジェームズストーナーは集団でリスクの判断を伴う意思決定を行うと、集団内の個人が元々もっていた考えの平均よりもリスキーな結論が導かれやすいことを発見した。ストーナーはこれを「リスキーシフト」と呼んだ。 ストーナーの実験ではまず実験参加者に1人ずつリスクの高い手術を受けるかどうか悩む人に対して「成功率

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          「社会的促進」とは課題や作業を行う時に1人で行うより誰かがそばにいることで作業のや行動の成績が高まる現象を言う。社会的促進のうち特に見られることによる効果は「観客効果」と呼ばれる。 この効果を最初に発表したのはアメリカの心理学者ノーマントリプレットである。ノーマンは1898年に論文を発表した。論文によると自転車競技で、時計で時間を測りながら1人で走る場合と、他者と一緒に走る場合では後者の方が20%もタイムが早くなった。また、自転車競技のように競うものではなくとも、同じ作業や課

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          私達は家族や学校、会社、スポーツチームなどさまざまな組織や集団に属している。その集団には、課題を解決する、業績をあげる、試合に勝つなど明確な目標がある場合が少なくない。こういった集団の目標を達成に導く役割や過程を「リーダーシップ」という。一般にリーダーシップというと能力のある人が集団の先頭に立ちメンバーをぐいぐいと引っ張ることをイメージしがちだが、実は特定の個人が発揮する機能に限らずメンバーの誰もが発揮できる集団の機能のことをいう。 また、集団のメンバーに影響をあたえリーダー

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          集団の中の人々は共通の目標に向かって団結する。しかし、複数の集団が存在すると、とくに原因がなくても集団間に敵意が生まれる傾向がある。それを示す「ロバース・ケーブ実験」が1954年にアメリカの心理学者ムザファシェリフによって行われた。 この実験で2つのグループには対立が生じた。 集団間で激しい争いが生じる理由は、いくつかの理論から説明できる。たとえば「現実的集団葛藤理論」では集団間で乏しい資源を巡って避けられない競争が生じ、資源を奪い合うことで争いが生じると考える。 一方、乏し

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          ドイツ出身者のアメリカ人心理学者クルトレヴィンは人の考え方や行動が他者との関係性や個人を取り巻く集団などに影響されることに注目した。ここから、人間関係に注目して心のしくみを考える「社会心理学」が生まれた。社会心理学はゲシュタルト心理学の考え方を受け継いでいる。ゲシュタルト心理学は人間の知覚は要素の単純な合計ではなく要素の置かれ方などの「環境」によって決まると考えた。知覚だけでなく思考にまでこの考え方を適用したのが社会心理学である。

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          好きな人に対して心臓がドキドキした経験は誰しもあると思う。感情(情動)と心拍数の上昇や手足の震えなど体の変化には深い関係がある。 しかし同じ心拍数の上昇でも抱く感情が違うこともある。どのような感情をもつかは生理的変化だけでなく周囲の状況もかかわってくる。アメリカの心理学者スタンレーシャクターはこれを「情動二要因論」と読んだ。 シャクターらは1962年にこのことを示す実験を行った。あらかじめ「興奮作用がある」と説明されて注射を打たれた人に、陽気な女性(サクラ)が話しかける。する

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          フットインザドアテクニックとは、急に持ちかけられたらなかなか承諾しないような厄介な依頼でも「これくらいなら」と思えるような「些細な依頼」を引き受けた後ではつい引き受けてしまうという人の心理を利用したものである。 1966年アメリカの心理学者ジョナサンフリードマンはその心理効果を実験で確かめた。 事前に些細な依頼を引き受けたことで次の別の厄介な依頼がきても自分は人の依頼を引き受ける人間だという態度が準備されてしまうのだと考えられる。

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          アメリカの心理学者ゴードンオルポートたちは流言の広がりやすさを「R〜i×a」という式に表した(流言の法則)。Rは広がりやすさ、iは情報の重要さ、aは情報に対する証拠の曖昧さ、〜は比例を表す。 この式によれば流言の広がりやすさは情報の重要さと情報に対する証拠の曖昧さが大きければそれだけ大きくなる。しかしどちらかがゼロになると流言の広がりやすさはゼロになる。

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          私達は社会生活を営むにあたり、国や組織、年齢、性別などのさまざまな社会的カテゴリーに属している。そしてそれぞれカテゴリーに属する人たちは共通の特徴をもっているものだと信じ込んでいる。そういった特徴を単純化した概念のことを「ステレオタイプ」という。 私達がステレオタイプを日常の中で強く意識することはほとんどない。しかしステレオタイプ通りの情報に接すると私達は無意識にそこに目がむいてしまう。たとえばビール好きのドイツ人に会うと全てのドイツ人がビール好きとは限らないにも関わらず「ド

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          「人を外見で判断してはいけない」という訓戒は人が外見で判断しがちだからこそ言われる。 例えばスーツを着こなした外見の良い人はなんとなく仕事もできそうなイメージをもたれやすい。このようにある点がすぐれていると本来は関係ないはずの別の点まで高く評価してしまうことを「ハロー効果」という。ハローとは後光や光背という意味の英語だ。 ハロー効果は古くから1920年代から研究されている。また、ハロー効果とは逆になんらかのネガティブな特徴があると別のところまで低く評価してしまうという「ホーン

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          心の中に矛盾する考えが存在し、不快や緊張を覚えている状態を「認知的不協和」という。アメリカの社会心理学者レオンフェスティンガーが提唱しま。認知的不協和を解消するために人は考え方(認知)のほうを修正して心の均衡を図る。例えばダイエットをしたいのに甘いものを食べてしまう時「我慢をするとストレスで太るから」と自分の認識を変えることで行動や状況を正当化する。 1959年のフェスティンガーの行った実験でこんなものがある。参加者に退屈なさぎょをしてもらい「面白かった」と次の作業者に伝える

          心理系大学院に行くまでの勉強

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          自分の人格を大切にする気持ちを「自尊心」という。人はこの自尊心を守るために無意識の行動をとることがある。たとえば試験の前日に遅くまでゲームをしてしまったり、いつもはやらない部屋の掃除をしてしまう、などである。こういった行為を「セルフハンディキャッピング」という。これは失敗して傷つくことを恐れ自尊心を守るために先に予防線を張っている。 こうした心理は誰もが持っている。自らにハンディキャップを課すことでたとえ失敗しても「自分の能力のせいではない」と言い訳することができる。逆に成功

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