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【インサイト探索の意味を体験する】 観光戦略(マイクロツーリズム)のインサイト 1
インサイトって何だろう。インサイトの意味や理論は分かったけれど、実際にインサイトを見つけるにはどうしたらいいんだろう?インサイトは現実の場面でどんなふうに役に立つんだろう?
このnoteでは、過去のケーススタディではなく、今、気になる市場のコンシューマー・インサイトを抽出しています。いわば現在進行形のインサイト探索です。
これまで「マスクとメイク」「在宅テレワーク」のインサイト抽出を行いました。「マスクとメイク」は化粧品メーカーや流通、「テレワーク」は、行政、情報関連産業や不動産業界などに必要なインサイトですが、その業界の人でなくてもインサイトは探せます。インサイトは業界視点ではなく、消費者・生活者視点に立脚しているからです。
材料はSNS、誰もが目にし、必要であれば検索して情報を得ることのできるツイッターです。
マイクロツーリズムのインサイトはどこまで見えているか
今回は「マイクロツーリズム」(自宅から1時間程度の『小さな旅行』)のインサイト探しです。
マイクロツーリズムはコロナ禍のなかで観光地が取るべき第1ステージ戦略であることは前号で説明しました。
今、GoTo トラベル キャンペーンが本格化、大きな話題になっていて目を奪われがちです。しかし、観光地のアフターコロナも見据えた再構築のために、また「地方創生戦略」と結びつくためにも、足元からの見直しが大事な時だと考えています。
まずは、世の中でマイクロツーリズムはどのようにとらえられているかを簡単に理解しておきましょう。
そもそものマイクロツーリズムの提唱者、星野リゾートのHPには、「ご近所旅行のススメ」が掲載されています。
マイクロツーリズムとは
遠方や海外への旅行に対し、3密を避けながら地元の方が近場で過ごす旅のスタイル。自宅から30分〜1時間程の距離で、安心、安全に過ごしながら地域の魅力を深く知るきっかけになり、地域経済にも貢献します。保養目的で旅館やホテルに行き、温泉や自然散策、料理を楽しみ、活力を取り戻す滞在旅行です。
マイクロツーリズムの3つのポイントとして
01 地域内観光
02 地元の魅力を再発見
03 地域の方々とのつながり
が挙げられています。
この内容から、星野リゾートが考えるマイクロツーリズムのインサイトを読み取ると
・「安心して過ごせる」~遠距離旅行のコロナ感染拡大の不安がない
・地元の魅力を再発見できる
・保養で温泉や自然散策、料理を楽しみ、活力を取り戻せる
が主なインサイトと言えるでしょう。さすが、その業界の方たちが(おそらく)経験的に考えた的確なインサイトです。
ツイッターのつぶやきからインサイトを探す
一方、生活者発のインサイト探しには、ツイッターを利用します。他にはインタビュー調査や日記調査、行動観察調査などがありますが、当然、調査の手間と費用がかかります。内容的にも「問う―答える」こと自体で生じるバイアスがない、問わず語りのツイッターはインサイト素材が豊富です。
私たちは、材料を見ておよその「インサイト含有率」を判定します。ツイッターと他の消費者調査のインサイト含有率が10:1だったことがあるほどです。
最初にやることは、検索ワードの設定。「マイクロツーリズム」を一般生活者がつぶやくキーワードに変換する必要があります。今回は「近場×旅行」に設定しました。20年8月23日直近1ヶ月で、11,660件のツイートがありました。
いくつか、拾ってみるだけでも生活者側の気持ちが浮かんで来ます。
ほんと、今年は海外旅行が絶望的なので、近場の温泉地とか行って地元を見直すのもいいかもしれないですね♨️👍
— 佐能 鴻一郎 (@SanoKoichiro) July 26, 2020
永ちゃん感激です!🤗
姉妹二人旅♡♡
— ゆずぴ( *˙˙*) (@yuzupeace_) August 19, 2020
なかなか旅行に行けない今だけど
どうしても行きたくて
近場の熱海で(((o(* ˙-˙ *)o)))♡ pic.twitter.com/qJyxyNHJ4d
めちゃくちゃめちゃくちゃ最高。ごはんも美味しい、一切立たなくていい、家族みんなで一緒にテーブルに着ける。皿洗いもお風呂掃除も洗濯もない世界。幸せ。幸せ。近場でも家族旅行充分楽しめる。移動のストレスの無さがまた良き。
— u8ri (@u8ri) July 25, 2020
わたし日本は好きなんだけど、あんまり遠くに旅行に行ったりするのは好きじゃないんだよね笑🐰🌷近場で遊んでるのが好きな感じ🍨🍦遊んでてもすぐに自宅に帰れる安心感って言うのかな?笑🍥わかるかな?この気持ち笑💫
— 🐰🌷小春🌷🐰 (@so_cute586) July 25, 2020
自然と触れ合う旅に出ていました
— ひとで@野球と猫 (@hitode20071030) August 18, 2020
宿泊は豪雨被害の大きかった筑後川温泉。
少しでも応援できればな…と
旅行に行くことをこんなに迷ったのはもちろん始めて。
今回は近場でなおかつ蜜を避けた結果、クソ暑いのもあってか人とすれ違うことすらあまりなかった pic.twitter.com/pkykY6LleQ
マイクロツーリズムのインサイト(業界からの視点と消費者視点との違い)
結論から言いますと、私たちが見つけたインサイトのうち、鍵となるインサイト(キーインサイト)は次の4つです。
このコンシューマーインサイトを先ほどの業界視点からのインサイトと比較してみましょう。
〈星野リゾートが考えるマイクロツーリズムのインサイト〉
・「安心して過ごせる」~遠距離旅行のコロナ感染拡大の不安がない
・地元の魅力を再発見できる
・保養で温泉や自然散策、料理を楽しみ、活力を取り戻せる
〈SNSから見つけたインサイト〉
・近場ならではののんびり・贅沢
・美味しい食事が旅行気分にしてくれる
・密でないところでリラックス
・地元観光力再発見の楽しみ
星野リゾートの「地元の魅力を再発見できる」はSNSインサイトの「地元観光力再発見の楽しみ」とほぼ同じです。同様に「安心して過ごせる」は「密でないところでリラックス」に重なります。
少し違うのはSNSインサイトの「近場ならではののんびり・贅沢」や「美味しい食事」に焦点が当たっているところです。
「近場ならではののんびり・贅沢」というのはどういう意味でしょう。星野リゾートの「遠距離旅行のコロナ感染拡大の不安がない」に近いとも言えますが、「不安がない」と「のんびり・贅沢」は違いますね。
また、星野リゾートの「保養で温泉や自然散策、料理を楽しみ、活力を取り戻せる」にも「食事を楽しむ」が入っていますが、SNSインサイトの「美味しい食事が旅行気分にしてくれる」は「食事こそが旅行気分の大事な要素なのだ」という意味に受け止められます。
インサイトの特長は、「そのインサイトからプロモーションや新商品、新事業のアイデアが触発される」ことです。SNSインサイト解析では、キーインサイトからどんな生活者の気持ちが連なっているかを知ることができます。生活者の欲求を深く理解し、生活者視点に立つことが新しいアイデアを刺激するのです。
それを次号で見ていきましょう。
(金、富樫)
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