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【インサイト探索の意味を体験する】 観光戦略(マイクロツーリズム)のインサイト 2

先号では、マイクロツーリズム(ご近所旅行)での、星野リゾートの考えるインサイトとSNSから抽出されたインサイトの比較をしました。

〈星野リゾートが考えるマイクロツーリズムのインサイト〉
・「安心して過ごせる」~遠距離旅行のコロナ感染拡大の不安がない
・地元の魅力を再発見できる
・保養で温泉や自然散策、料理を楽しみ、活力を取り戻せる
〈SNSから見つけたインサイト〉
・近場ならではののんびり・贅沢
・美味しい食事が旅行気分にしてくれる
・密でないところでリラックス
・地元観光力再発見の楽しみ

今回は、星野リゾートさんがとらえたインサイトとSNSから得られたインサイトのうち比較的近い2点を比較してみましょう。

「地元観光力再発見の楽しみ」のインサイト

星野リゾートの2番目「地元の魅力を再発見できる」と、SNSからのインサイトの4番目「地元観光力再発見の楽しみ」はほぼ同じです。
さて、インサイトというからには、それで地元のホテル、旅館は、観光施設は、そして観光協会や旅行代理店は何をしたらいい?どんなプロモーションのアイデアや新商品、新サービスのアイデアが生まれる?に答えなければなりません。

「地元観光力再発見の楽しみ」は、直近1ヶ月間の「近場 旅行」で検索した11,660件のツイートから探し出された代表的なインサイト、キーインサイトです。
そこにはキーインサイトを支える関連インサイトがあり、自分たちの戦略によってはその関連インサイトを次の戦略開発のためのインサイトとして選択することも出来ます。そういう意味で私たちは「インサイト候補」と呼んでいます。
それは次のようになります。

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「地元観光力再発見の楽しみ」を支えるインサイト候補群の先ず最初は、
「観光地が多い県に住んでいてよかった」「近場での楽しみを再発見するチャンス」の流れ。

このうち「観光地が多い県に住んでいてよかった」について、「うちの県は観光地が少ないから当てはまらないや」という県があるでしょうか?どの県も「いいえ、うちの県も観光地が多い、知られてないだけ」と答えるでしょう。

このインサイト候補「観光地が多い県に住んでいてよかった」には「うちの県はこんなに観光地が多い」というコミュニケーションの基本スタンスの必要性が示されているわけです。
自県の観光地の整理と再アピールという戦略可能性があります。その際に旧来のリストを持ち出してくるのではなく、これからの魅力に光を当てて再編集することが必要です。そのためには、先号で触れたミレニアル世代(ロストジェネレーション)の価値観に照らすことが必要です。ミレニアル世代とその下のジェネレーションZはSNSの活用からソーシャルな世代と言われています。
自県、地元の観光地の再ピックアップには、「いつでも行けると思って行けてない場所」のインサイト候補も切り口もヒントになります。

また、「観光地ではなくあえて人のいない場所」「知らないお店、知らない場所にふらっと寄る楽しみ」は、有名観光地ではなく、身近な旅行感覚のマイクロツーリズム、withコロナ期の旅行欲求を表しています。観光地とは呼ばれてなかった「人のいない場所」の掘り起こしを考えてみてはいかがでしょう。

「密でない所でリラックス」のインサイト

SNSからのキーインサイト、3番目は「密でない所でリラックス」です。星野リゾートのインサイトでは「安心して過ごせる~遠距離旅行のコロナ感染拡大の不安がない」が意味的に重なりそうです。

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「密でない所でリラックス」する所では、宿泊施設の中がまず挙げられます。「施設内でレジャーが完結する宿希望」「近場でいいからプール付きのホテル」など具体例、施設内の過ごせる場所のアピールが効きそうです。レジャーでなくてもロビーや施設内の眺め、浴場、喫茶などちょっとした短い時間を過ごせるサービスを積み重ねる手もあります。
そして、部屋の中、「友達と部屋の中で延々とゲーム」「おふとんで1日中漫画を楽しむ『漫泊』などはミレニアル世代の欲求理解に役立ちます。Wi-Fiはもちろん、お部屋でのサービスを「過ごせる」視点で再構築する機会かもしれません。「密でない広い部屋」はダイレクトなコロナ禍で生まれた欲求です。

施設外では「密を避けるには近場のアウトドア」「密を避けて自然と触れ合う旅」、そして「広々とした穴場スポット的な遊び場で」。アウトドアの魅力の掘り起こしや新しいアクティビティの開発地元の人が知っている隠れたお薦めの場所。
観光客の多い人気の観光スポットであっても、人の少ない時間帯の情報なども歓迎されるでしょう。
インサイトはお客様の潜在ニーズ、潜在欲求ですから、その視点に立てばアイデアは次々と生まれます。

例えば、ホテルオークラ福岡のはかた・マイクロ・ツーリズム、 ”ガイドブックにない「小さな旅」をお楽しみください” はよく出来たマイクロツーリズムのプログラム。でもこのインサイトを知ることができれば、近隣のきれいな空気が感じられる公園、身体を動かしたりリラックスできる所などちょっとしたアウトドア気分の楽しみも加えることが出来るでしょう。


次号では残りの2つのキーインサイト「近場ならではの”のんびり”・贅沢
」「美味しい食事が旅行気分にしてくれる」を見て行きます。
(金、富樫)

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