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鶴見俊輔『日本の地下水―小さなメディアから』についてのメモ⑤―読書会第2回目

 以下の記事で紹介した鶴見俊輔『日本の地下水―小さなメディアから』(編集グループSURE、2022年)の読書会の第2回目で使用した資料を紹介したい。

1. 今回の本を選んだ理由
最近趣味誌(同人誌、ミニコミ誌)を調べているが、サークルという集まりの共通点と違う点がどこにあるかということに興味を持った。サークル、趣味団体、読書会、(在野の)研究会という人々が集まる場について考える上で、戦後様々な形で展開されたサークルがどのように論じられたのかを参考にしたい。

2. サークルについて―前回(第1回目)の補足
・1950年代の鶴見俊輔のサークル論

参考

・サークルの特徴
①    生活綴り方運動≒サークル活動
②    反近代、人びとの抵抗
③    日本文化への無批判性
④    平等主義
⑤    実感主義
⑥    善意
⑦    日本文化への批判の目線 ※ただし、少数

後年にみられるような、人々のユートピア的思想が底にあるという言及されていない。

3. 『日本の地下水』について(今回の範囲)
1956年より開始。『中央公論』から『思想の科学』へ
→サークルの興隆期に始まり、その後波の引いた後も紹介し続けた。
→サークルが1960年の安保闘争を境に下火になったという鶴見の認識。(「なぜサークルを研究するか?」『 鶴見俊輔集』第9巻、筑摩書房、1991年)
→今回取り上げた範囲は1960年以降のサークル活動が下火になった時期。この時期に鶴見はサークル活動に何を見出していたのかがポイントを思われる。

※ページ数は『日本の地下水』による。

P127
母親の生活記録運動、マスコミの女性投書欄
→前者は鶴見和子が進めていた活動、後者は鶴見俊輔も注目していた。(「身の上相談」の思想)
→ただし、「いえないことはない」という表現をしている。背景に大人の生活記録運動には課題があるという認識あり?
→「子供にとっては生活がたえざつ驚きなんですね。一つ一つの行動をやってみては驚いている。実感が新鮮なんだ。大人になると実感がぼやけてくる。子供にとっては、すべての子供は、生活綴り方の方法でおもしろい綴り方が書ける。大人の場合は、行動のプログラムを持ち、独自の行動のコースをひくことによってしか、生き生きとして実感を持つことができないし、生活綴り方も書けない。大人の生活綴り方の場合は、子供とは違う方法論が必要だ。行動の設計の概念がなければならない。」(「討論 大衆の思想 生活綴り方・サークル運動」鶴見俊輔、藤田省三、久野収『戦後日本の思想』、中央公論社、1959年)

鶴見和子の生活記録運動参考:

P134 『CATニュース』
・デザインの鮮やかな雑誌→デザインへの注目

P134、135
・独創性を育てる練習⇔上からの指令に従うサラリーマン
→ただし、そのアイディアを持ち続けられるかという課題あり。

P142
・もう戦後は終わったということが言われているが、そうでもないという訴え。
→当時の言論環境は?戦後は終わったという意味合いは?

P145
・考えを深めるという方向性。昼の会員と夜の会員は意見が異なる。
→対話、付き合いの論理(≒村の寄り合いの論理 宮本常一『忘れられた日本人』)

P149
・矢部喜好の反戦をつらぬく生き方(日露戦争時に兵役拒否)
→ベトナム戦争の問題(その時の時代状況に連動している。)
→明石順三(灯台社)につらなる兵役拒否の系譜
→素朴な態度の重要性

P155
・1965年から1968年の空白はベトナム戦争反対運動に力を入れていたためだと思われる。鶴見は後年べ平連の活動は消耗したと回想している。

P156
・「日本の地下水」は思考実験の場としたい。
→主流から外れているが、今後の可能性を考えさせられる思想。

P160
・敗北した後の思想、行動の重要性。
→学生運動に関わった人物のその後。敗北後もその問題意識を持ち続ける。
→学生運動(全共闘)の沈下

以上で時間切れ。想定していた範囲が終わらなかったため、次回引き続き同じ範囲で読書会を実施。

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