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文芸翻訳に出会うまで③
少し話が飛ぶので③にしてみました。
私が文芸翻訳を勉強したいと思い、迷わずSOAS(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)を選んだ理由は、最初にお話を聞きに行った佐藤=ロスベアグ・ナナ先生に、「翻訳とは研究です」と言い切られたことだった。
ロンドンに来て間もない頃、文芸翻訳、という選択肢がぼんやり頭にありつつも、まだ現実味のなかった頃に、私は一冊の本に出会っていた。「星の王子さま」という日本語を生
始まりと本と映画の話(はじめのnote)
2018年の春、私はロンドン大学SOASの図書館にいた。とある英文小説に出会い、これは、日本で映画にしなければならない、と思った。
よくそこまで飛躍できたと思うけれど、その思いは、四年以上経ったいまでも驚くほど変わっていない。
タイトルは、’The Gift of Rain’
『雨の贈りもの』としたいところだが、この本における ’gift’ は、そう簡単には訳せないのだ。
マレーシア人作家 T
最後の手紙かもしれない
先日、とある出版社の編集者に手紙を書いた。
その出版社は、マイナーだけれど、翻訳書や人文学系の素晴らしい本をたくさん出している。憧れの方も本を出されている。
昨年末に電話をかけて、色々と事情を説明したら、郵送で送ってもらえれば見ますよ、文字化けとかしたら怖いので、と言ってくださった。その気遣いが、それまでに経験したことのない温かさだった。
小さな出版社だから、最初は印税が払えないかもしれない、
『ムーンライト・シャドウ』
生きていく力を本気で手渡してくれる小説には、なかなか出会えない。
吉本ばななさんの『キッチン』を読んだ。収録されていた『ムーンライト・シャドウ』も読んだ。SOAS時代の先生に頼まれたインタビューの翻訳をしていたら、話に出てきて、吉本ばななさんの作品は"quite funny"だというから、どんなのだと思って読んでみたのだ。
ついに、という感じだった。学生時代から書店の平積みで何度も目にしながら