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私の読書日記:日本の芸術家たち

今日は読書日記。ラフに読んでいただければ幸いだ。

(1) 日本の芸術について知らない私

(1-1) 日本の芸術がわからない

日本の芸術がわからない。これが私のコンプレックスである。運慶・快慶、雪舟、俵屋宗達、葛飾北斎、歌川国重、黒田清輝、横山大観、岸田劉生、岡本太郎、村上隆に草間彌生。

パッと思いつくのはこの程度で、浮世絵のことも知らなければ、歌舞伎や能のこともわからず、仏教美術のこともわからない。屏風絵や刀剣、陶器、茶器、彫刻、水墨画にいたっては、何の知識も持ち合わせていない。日本の近代絵画事情や現代美術については、私の居場所すらない気がしてくる。

たとえば、永井荷風『江戸芸術論』を読んでも、まったく歯が立たなかった。知らない浮世絵の作者がこれでもかと出てくる。日本史で浮世絵画家が出題されても、全然答えられずに点数が飛んでいく。そんな苦い過去を思い出してしまう。菱川師宣の書き取りはよく間違えていたかもしれない。「菱」の漢字が難しく「師宣」と続けていくのも苦労した。

(1-2) 西洋絵画には詳しくなった気がする

一方で西洋絵画についてはある程度詳しくなった気がする。小林秀雄『近代絵画』や原田マハ『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『たゆたえども沈まず』などを読んで、興味をもち勉強したためである。

特に、ゴッホとゴーギャンは人生含めて面白い。小林秀雄『ゴッホの手紙』、アーウィング・ストーン『炎の人ゴッホ』は面白かった。また、エッセイとして原田マハ『ゴッホのあしあと』も読みやすくオススメだ。

サマセット・モーム『月と六ペンス』の主人公であるストリックランドのモデルは、ゴーギャンである。他にも福永武彦『ゴーギャンの世界』、バルガス・リョサ『楽園への道』といった作品も面白い。前者は評伝であり、後者は小説である。

これらの作品を読んで、ゴッホやゴーギャンの問題意識を考える余地が生まれた。そのことが重要なのかもしれない。芸術家がどんなことを気にしているのかが理解できれば、作品を鑑賞するハードルも下がっていくような気がする。

もちろん、ゴッホやゴーギャン以外にも偉大な芸術家は数多くいる。ドガにモネ、セザンヌ、ブラック、アンディ・ウォーホル、マグリット、ダヴィンチ、ルソー、レンブラント、ファン・ダイク兄弟、ミケランジェロ……自分が知っているものを挙げるだけでもキリがない。

しかし、彼らの芸術や世界に対する問題意識の解説は充実しており、いくら学んでいても飽きない。

(1-3) 日本の芸術を学びたい

西洋絵画についてはある程度学習したものの、日本の芸術に関してはからっきしである。少なくとも正確に暗記するだけの体力はない。初心者なりにやさしい本を読みつつ学んでいくことにした。

日本の芸術に興味をもつきっかけとして、まずは岡本太郎『美の呪力』と洲之内徹『絵のなかの散歩』を読むことにした。

(1-4) 岡本太郎『美の呪力』

岡本太郎『美の呪力』から日本の芸術が学べるわけではない。取り上げられているのは、世界各地の民間伝承やピカソの絵画『ゲルニカ』、ゴダールの映画『ウィークエンド』、あやとり、曼荼羅まんだらといったものである。日本の芸術家が登場することは少ない。

しかし、日本の芸術家の問題意識をとらえる上では、これほどありがたい教材もないのではないだろうか。小説ならともかく、散文的な説明のない芸術作品をただ鑑賞するのは難しい。作品を目の前にして、何を言えばいいのかわからないし、何を考えればいいのかわからない。

もちろん、その困惑こそが芸術的なものなのかもしれない。芸術作品に対して思考をする必要はないのかもしれない。しかし、作品を見たら掘り下げたくなるのはプロでもアマチュアでも同じだろう。素人なりにも考えてみたい。そのヒントに芸術家の問題意識を把握することは悪くない。

(1-5) 洲之内徹『絵のなかの散歩』

洲之内すのうちとおる『絵のなかの散歩』は、日本人画家のエピソードを知るのにうってつけの本だろう。知らない画家を知る契機になるので、たいへんありがたい。

「岸田劉生の作品が見つかった!」『麗子微笑』でよく知られる巨匠、その絵画の真贋をめぐる冒険はサスペンス的で特に面白かった。この本の詳細は、別の機会に書きたいと思う。

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