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崖っぷちコンビニ、その先は? ~ものづくりと店づくり~ (前編)

0.欲望と利便性に応えて来たコンビニ

この記事では、これからものづくりに出会うであろう18歳(±5歳)のあなたに、ものづくりの楽しさをお伝えしようと思います。
商品を開発する基本のキを、「コンビニのものづくり」を通じてお伝えしていきます。

この記事では、フランチャイズ・コンビエンスストアをコンビニと略してお話いたしします。

略して「コンビニ」

では早速、コンビニの今を共有いたします。

2010年代までは、物や金銭への欲望を叶える事が、居心地の良い生活を提供できると、小売業で働く多くの人が感じていたと思います。
その代表選手として、コンビニが上げられます。

コンビニを始めとした多くの小売業が、2020年代前半の感染症拡大を経て、大きな崖っぷちに立たされているようです。

そのひとつの要因は、感染拡大を経て、お客様の中で強くなった欲望へ対応する方向性を見失っているからだと思います。 さらにお客様の中には、近い将来起きるであろう大震災への、漠たる不安も入り交じっているかもしれません。

この記事では、大きくは以下の4つについてお話します。
◆欲望仮説(「飲食」「健康」「教養」)にものづくりのヒントを探る
◆小売業と欲望充足の歴史から店づくりのヒントを探る
◆ものづくりの基本のキを確認する
◆店づくりのイメージを膨らませる

1.ものづくりの行き詰まり~欲望仮説~

お客様の意識・行動仮説

感染拡大は、様々な欲望を満たす機会を奪ったばかりではなく、不自由さをも強いて来ました。
結果、居心地の良くない生活を実感しているのではないでしょうか。
特に、「食」(飲食する)、「健」(健康でいる)、「養」(教養を身につける)という欲望を不自由にし、あなたの将来を脅かしているのでは。
これらを満たすのが、コンビニものづくりと考えております。

仮説①「飲食する自由」の提供

大皿を真ん中にして仲間たちで食べる幸せ

食べたい時に、食べたいものを食べるという欲望と利便性が、2020年代前半には不自由を強いられたと思います。
もちろんデリバリーサービスや移動販売が提供する利便性は、2010年代と比べて格段に充実しました。
そのような中、コンビニは、時間と距離の利便性と、主力品揃えである「中食商品」の、そのポジションを見失っているように感じます。
特に、デリバリーサービスなどで体感した、メニューの豊富さ、彩りの驚き、味や香りの新しさなどが、身近にあるコンビニで提供されていないように感じます。 そう感じているのは私だけでしょうか。

仮説②「健康でいる自由」の提供

健康維持商品

2020年代前半、多くの人が、マスク着用・手指消毒・ワクチン接種で健康を手に入れています。 健康体を維持する生活が強いられて来ていると言ってよいかもしれません。
「健康体を維持する」という行動や買い物は、「お腹が空いた」「眠い」よりもっと切実な活動になっていたと思われます。

この期間を通じて、「来春は○○したい」「来春も健康で元気でいたい」という欲望が刺激され続けているのではないでしょうか。

サプリメント、健康機器、ダイエット法などなどの一過性の健康ブームとは違う、起床、洗顔、朝食・・・という日常生活の中に組み込まれるものがあるのではないでしょうか。

身近なコンビニの品揃えに欠落が生まれてはいないでしょうか。
商品開発することで補強できることはないでしょうか。


仮説③「教養を身につける自由」の提供

自分らしく生きていくいくための武器

2020年代前半の多くの場面で、オンラインを通じたコミュニケーション機会が増えたと思われます。
昨日まで、対面で話していた仲間や先生・上司などが、画面越しになった事で、相手または自分を客観的に観る事になりませんでしたか。 そう感じたのは、私だけでしょうか。

知らなかった情報や知識があったことに、あらためて気づかされた事がありませんでしたか。
話題の伝え方、説明の仕方などなど学ぶことが多かったと思います。
幅広い教養を身につけることが、2020年年代後半の生活を豊かにするように、私は感じています。
有形無形の商品やサービスの中に、コンビニが提供できるものはないでしょうか。


2.そもそも「コンビニ」って何モノ?

コンビニ雑学

2-①あらためてコンビニエンス・ストア

1973年7月、埼玉県に日本初のコンビニが誕生しました。 創業目論見は、アメリカでガソリンスタンドの付帯施設として誕生した小売業を、日本独自の小売業にすることにあったと聞いております。
「小規模多拠点」の「セルフ販売小売業」を誕生させる。 そして「フランチャイズ・チェーン」という経営手法を導入する。 このような目論見があったようです。

それから40数年、お客様にとって好都合な立地と営業時間で、豊富な品揃えをセルフ販売で提供する小規模多拠点として、お客様の支持を集めて来ました。

2021年12月末現在、日本全国55,950店舗、年間売上10兆7千億円、年間来店客数155億8千万人と、日常生活の基盤としての確固たる機能を担っていると思います。(数値は、日本チェーンストア協会HPより抜粋)

電気、ガス、上下水道、コンビニ・・・は言い過ぎかもしれませんが、50年弱前に企画・実行・成長させた先人達に、感謝しかございません。

2-②フランチャイズ・チェーンって何?

チェーン事業のイメージ

本部・本社が中心となって多数の小売店を繋いで運営する方法が大きく3つあります。
レギュラー・チェーン、ボランタリー・チェーン、フランチャイズ・チェーンの3つです。
同一資本同一経営か、別資本別経営かの違いで、レギュラー・チェーンとそれ以外に分けられます。

フランチャイズ・コンビンエンスストアは、別資本別経営です。

本部(フランチャイザー)が、同一商標・システム・ノウハウ・オリジナル商品推奨などを行い、加盟者(フランチャイジー)が個々のお店を運営していきます。


3.この先どんなお店が誕生するのだろうか

欲望と小売業の変遷イメージ

3-①店づくりの行き詰まり~再構成チャンス~

お客様に近いところで商売をしている小売業にとって、欲望と利便性を満たした居心地の良い生活を提供していくことが、最大の存在価値と考えています。

欲望と利便性に対応して来た、小売業の変遷を振り返ってみましょう。

衣食住の欲望は、様々な業種の商店が充足させてきました。
洋服屋、魚屋、布団屋などなど、様々なお店が満たして来ました。

衣食住が充足され始めると、欧米生活への憧れを叶えたいという欲望が生まれました。 それを、デパート(百貨店)が、欧米ブランドショップやレストラン、催事場、宝飾売場、化粧品売場、ケーキ売場などを一堂で揃える事で叶えて来ました。 

憧れの欲望が買う物を増大させた結果、安く買いたいという欲望が生まれました。 それをスーパー(量販店)が満たす事となりました。

右も左も一様な生活や物に溢れてくると、今度は自分らしさを表わしたいという欲望が生まれました。  それを、品揃えの幅の広さや深さや、独自性や流行デザインにこだわった商品を揃える専門店が生まれました。 婦人服専門店、大工用品専門店などが、全国展開や大型店化を行うことで満たしていきました。

これだけ欲望が多様になってくると、店頭の品揃えだけでは充足できず、無店舗販売という利便性で、簡単に手に入れる喜びを満たしました。

そして欲望は更に高まり、「今欲しい」という時間と距離の利便性を求め始めました。 これをコンビニが満たしました。 コンビニ誕生の背景には、
時間消費を謳歌する為のアルバイト先需要商店の代替わりとしての事業承継先需要も後押ししていたようです。

コンビニは、生活基盤型小規模多拠点として、2000年代後半まで急成長
しました。

2011年東日本大震災、2020年COVID-19が、「店舗の大きさ」「価格」「立地」「営業時間」といった、2010年代までに築いてきた小売業個々の魅力を薄めて来たように感じております。

欲望の大きな流れのひとつが、「食」「健」「教養」にあるとしたら、小売業は対応を急ぐ必要があると思います。

この先、「食」「健」「教養」に特化した専門店が生まれていく事は想定できると思います。 また、デパート、スーパーが売場変更をして対応していく事も想定できます。

「食」「健」「教養」という欲望を満たす事を、機能性と言い表して見ました。 「食」機能性、「健」機能性、「教養」機能性とした場合、コンビニはどうなっていくでしょうか。 

コンビニが位置している生活基盤型小規模多拠点を、様々なパートナーと再構成するチャンスではないかと思います。

3-②ユニットストアというご提案

ユニットストア・イメージ

コンビニものづくりを、目の前の店舗ではなく、将来生まれるであろう小売業をイメージしてはいかがでしょうかというご提案です。
ものづくりという自由な創造力を発揮させる為です。 

コンビニが位置する生活基盤型小規模多拠点は、将来に亘って必要とされると思います。
次世代エネルギー供給拠点整備など、様々な業界を越えて、新しい店づくりを企画する時期に来ているように感じております。

ガソリンスタンドチェーン、ボランタリーチェーンなどなど生活基盤型小規模多拠点は、店づくりやものづくりの機会として、可能性を秘めているように感じます。

そのひとつの検討方向性として、ユニットストアをご提案いたします。 
生活基盤としての小規模多拠点が再構成された時、感染症拡大にも大震災にも強い地域が生まれていく事をイメージしております。

小規模拠点の再構成イメージは、モバイルスペース、ドームハウス、キッチンカーなどをブロックのように組み合わせていく店づくりを想定しております。

地域のお客様が欲する機能を、ひとつひとつモジュール化して、その立地にあったユニットストアとして展開していきます。

スマートストアとして無人運営するタイプも考えられます。 また、ショップマイスターまたはチームを常駐させ、よりお客様の欲望に応えるタイプも考えられます。

品揃えは、現コンビニを中心に考えるタイプ、エネルギー供給中心に考えるタイプなどいろいろ想定できます。
小売店にとって一番大切な「あなたに一番近いお店になります!」を満たす
ことが大事だと考えております。

基本機能には、トイレ・モジュール、イベント・モジュール、シェルター・モジュール、エネルギー・モジュール、ロッカー・モジュールなど想定できます。

最小品揃えとしては、例えば、「食」に対応したアジアン・ファーストフーズ・モジュール、「健」に対応したアウトドア(兼防災用品)・モジュール、「養」に対応した地球科学・モジュールや古代エジプト・モジュールなど創造できるのではないでしょうか。

ショップマイスターの得意分野を活かせるモジュールが、お店の魅力になっていく事も考えられます。

モジュール化し、自由に組み合わせられるものづくりは、あなたの得意分野や関心の高い分野から、発想し、企画をしていけると思います。

このように柔軟な発想ができる状態を作ると、新しい小売業の誕生が近いように思います。


4.基本は、お客様の欲望を満たす商品開発

「繁盛する小売店=独自商品×熱烈なファン」イメージ

 ユニットストア、モジュールを企画する為には、お客様の欲望を商品にしていく商品開発の基本を知る事が、最初の一歩となります。

繁盛する小売店(ストア)は、その店のお客様に合致した豊富な品数(品揃え力)と、そのお店のファン(固定客力)で決まると、教えられてきました。
今日では情報技術などの活用で、品揃え合致や再購入手法などの精度が上がっている企業も出ているようです。

ここからは、ものづくりの基本のキを、あらためてお話しします。


4-①品揃え力がお客様の欲望を満たす

品揃え力の構成要素イメージ

豊富な品揃えで、お客様の欲望を満たし続けるには、1)新商品仕入力2)死に筋処分力と、3)商品開発力の3つが機能することが重要になって来ます。

1)新商品仕入力は、製造メーカーの優れたノウハウの集積である「新商品」を、発売と同時にお店に並べ、販売動向が良ければ追加で用意できることです。 大量製造する商品の納入先は、かつてはスーパーなどが主流でした。 今では、コンビニがその一翼を担っている商品も出てきています。 
この新商品仕入力は、本社・本部のマーチャンダイザーの能力と、お店の販売力に左右されることが多いと考えます。

2)死に筋処分力は、聞き慣れない用語かもしれません。 変化するお客様の欲望が満たされて飽きられた時、いわゆる売れ残りが発生します。 
コンビニの多くが、毎週火曜日午前0時から新商品を販売する為には、前日までに販売動向が弱くなった商品を売り切る必要があります。 新製品を企画されたとおりに陳列できなくなってしまいます。
この力は、本社・本部の優れた販売動向分析力と、顧客分析力に寄るところが大きいと考えます。 また個々のお店の仕入責任者が、本社・本部提供の分析結果を、店頭で活かす力も重要となると考えます。

3)商品開発力は、新商品に不満を感じている、飽きてしまっているお客様の欲望を満たす力です。
お客様を飽きさせない、お客様の欲望に応え続けることが、繁盛する小売店の原動力となります。
製造業者の新商品と、お客様の欲望との差に、コンビニ商品開発の出番が潜んでいます。


4-②お客様を飽きさせないのが商品開発

売場は作り手・売り手・買い手の欲望のルツボ

なぜ商品開発をする必要があるのでしょうか?
それは、お客様を飽きさせない為です。

お客様の欲望は、変化し続けています。去年と今年でも違うし、
昨日と今日とでも違うし、朝と夕方でも違います。
お客様の欲望は尽きません

家で作って食べよう(内食)。 
甘いもの辛いものが食べたい(間食)。 
今日はちょっと贅沢したい(外食)。 
備蓄しとこう(加工食品)。 
時間・手間を節約したい(中食品・冷凍食品)。 
健康第一、地球環境に優しく、食育が大事と、お客様の欲望が尽きることは無いようです。

例えば、じゃがいもを例に、欲望と利便性への対応を整理してみます。
5世紀ペルーでは、じゃがいもを主食としていました。 
その後、ヨーロッパに伝わり、17世紀ベルギーで揚げておかずにするようになりました。 
19世紀アメリカにおいては、付け合せのフレンチフライになりました。 その内、薄くして欲しいという声がありました。 薄いフレンチフライだけ食べたいという声が出ると、専門の製造販売業者が生まれました。 
20世紀中頃、手軽に食べたいという声に応えて袋入りが誕生しました。
そして日本では、1967年量産化規格化されたポテトチップスが発売されました。

商品開発に詰まったら、あなたの大好物がどのように誕生したかを紐解く事で、解決の糸口が見つかるかもしれません。


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