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本棚の奥の「シリウス文書」③ 創作小説全6話

ママ

美和子は本棚を掃除していた。裕和の書斎だ。埃を被った本の中にきれいな本が数冊並んでいた。「ここだけ綺麗だわ」本を取り出してみる。物理や微分積分の難しそうな本だった。空いたスペースを雑巾で拭くと本棚の奥に違和感を感じた。
「隠し棚・・・!」
引き戸を開けてみる。本が数冊出てくる。その中の一冊が一際目を引く。
「シリウス文書2013」全田挟宣著
美和子はページをめくりだした。
《オッコト・・・》
美和子はその本から立ち昇る異様な雰囲気にゾクゾクしながらもページをめくることをやめられなかった。


パパとヨギー

裕和は原稿を書き足し鞄に入れ、昼を食べに外へ出た。公営の物理化学研究所をあとにし大阪城公園の横にあるBuddaという店に向かった。今では当たり前になったグルテンフリーの老舗だ。なんとなくそこで食べたくなったのだ。
店に入ると坊主頭の懐かしい顔がいた。
「おお、TERUTERU!?」
TERUTERUはブッダのように微笑んだ。
「待ってたぞ。」
裕和は二十年ぶりくらいに会う友にまるで昨日まで一緒に過ごしていた気分になった。
若かりし頃裕和とTERUTERUはヨガ教室にともに通い、ウクレレやら三線やらの楽器をともに楽しんだ仲なのだ。
二人ともブッダボールを頼んだ。
裕和は自分のやっている事を全て話したくなっていた。

「魂の正体は素粒子だ。」
TERUTERUはキョトンとした顔をしたが、真剣な眼差しになった。
「お前は何を考えてるんだ?俺は量子力学なんて殆ど知らないぞ」
裕和は説明を始める。
「研究をずっと続けてきた。素粒子を対象としてみても素粒子はわからない。観測しようとすれば粒子になり何もしなければ波になっている、そんなものはこの世のものではない。唯物論の科学者達はいつまで経ってもその事がわからない。幸い俺も瞑想とヨガを重ねてきた。お前ほどじゃないがな。そしてある時、一冊の本に出あった。」


④につづく









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