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『猫は逃げた』見た直後の雑記

新宿武蔵野館で城定秀夫脚本、今泉力哉監督作品『猫は逃げた』を見てきました。


別れそうになっている夫婦とその飼い猫にまつわる大人のラブストーリー。城定と今泉によるコラボレーション企画「L/R15(えるあーるじゅうご)」のRパートの作品。ちなみにLは今泉力哉脚本、城定監督作品の『愛なのに』。『愛なのに』がプラトニックな恋愛・片想いの輪舞曲だったのに対し、『猫は逃げた』は冷めた夫婦の別れ際から始まり、対極を成している。でありながら、登場人物らの不貞、不倫は激しいという。


そんな中で飼い猫のカンタが行方をくらましたり、出てきたり、やはりいなくなったりとフラフラしている。それでもこの映画における猫は潤滑油的なものに過ぎず、後半にわかる真相はちょっと意外なものがある。


タイトルからセドリック・クラピッシュ監督の『猫が行方不明』に通じるものかと思いきや微妙で、猫が出てくるとストーリーが動くエミール・クストリッツァ監督の『黒猫・白猫』と逆で猫がいなくなってからストーリーか動くというちょっと変わった作品である。


終盤のさらにドロドロ仕様の展開はロマン・ポランスキー監督の『おとなのけんか』さながらではあるけど、漫画家の妻、編集者の夫、漫画誌編集者、女性カメラマンによる公私混同のわちゃわちゃは見応えがある。


そんな中、編集者&カメラマンが取材する新進気鋭の映画監督に現実に起こってるとあるスキャンダルにたいするシンクロニシティなおまけのタイムリーもあったりする。


落とし所も猫のごとくふわりとしてはいたがいいんじゃないかな。

大枠では小津安二郎監督の『お茶漬けの味』の系譜の倦怠期夫婦に成瀬巳喜男監督の『驟雨』を混ぜて、猫を巧みに使った邦画ミニシアターの秀作。

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