見出し画像

蔵出し映画レビュー『X エックス』

毎作品傑作というわけではないが、比較的好みの作品が多い制作スタジオ「A24」の新作ホラー映画。『サクラメント 死の楽園』のタイ・ウェスト監督の新作とあって期待したら、ほぼ期待通りのクオリティで、1979年のテキサスの真夏の悪夢を味わえる。

前半はポルノ映画撮影の舞台裏、後半は老人ホラーというか農場ホラー。老人が引き起こす惨劇というと『ドント・ブリーズ』が思い起こされるが、盲目ではないからナチュラルに、理不尽に強いが、怖さと説得力がある。若干痴呆気味の奥さんの方は不気味さもあり、『裏窓』的なショットも決まっている。

また、ポルノ映画撮影舞台裏としても面白い。なかでも金髪美女を演じたブリタニー・スノウのビッチさがお見事。これにブスかわいいミア・ゴスと、カメラマンの助手役のうぶさ、女3人と監督、プロデューサー、俳優の男3人の人間模様も見応えがある。

彼ら・彼女らの若さの特権からくる傲慢さ、刹那、破廉恥がある角度では悪魔と見えるし、老夫婦の所業も悪魔だから、ある種悪魔vs悪魔の壮絶バトル、サバイバルでもあり、単なる怖い・グロいのB級ホラー映画ではない。

農場と母屋、ワニがいる湖といったシチュエーションの巧さにブルー・オイスター・カルトの「(Do n't Fear)The Reaper 」の絶妙なかけかた、背景として使いながら意味深なモノクロテレビに映るテレビ伝道師など演出面もキラリと光る。過度にホラーばかり期待しすぎると前半がややゆったりとした展開なので、そこが唯一惜しい。しかしながら、70年代末期の雰囲気と若さのエゴがムンムンとしたポルノ映画撮影舞台裏など、この映画の個性として味わいがあるアメリカン・カントリー・ホラーである!

 

この記事が参加している募集

#映画感想文

66,467件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?