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俳句の雑文

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気になる俳人のこととか句集のこととか。
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記事一覧

鎌田俊『山羊の角』

鎌田俊『山羊の角』(恵曇舎)

こんにちは!コロナ騒動で外に出かける用事が軒並みなくなってしまい

ならばと本を読んだり映画を観たりと貧乏性全開で励んでいます。

3月は眠くなりやすい時期なので寝だめもしなきゃだし…。

呑気だな。

句集を読みます。5年前の句集。

  カラビナのしづかにひびく白露かな

  アイゼンを洗つてゐたる三日かな

登山の句が多かったです。登山グッズへの愛がひしひしと

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竹岡一郎『けものの苗』

竹岡一郎『けものの苗』(ふらんす堂)

ガロmeetsコミックビームっぽさ。

俳句のフォーマットでマンガをやろうとしているのかな?

これとかめちゃくちゃコミックビームじゃないですか?

 花まみれなる女子高生鋸洗ふ

連作「狐わらし」が良かった。人外ものが好きな人はぜひ。

 雪よりも清き狐の母ならむ

 白き尾に夜をくるみけり狐の母

他に好きな句。 

 長夜の手招き遮断機が上がらない

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前田攝子『雨奇』

前田攝子『雨奇』(角川書店)

最近せっせと句集を読んでは何かしら書いているのは、

とにかく積ん読を減らして、ハイペースでバンバン読んで

俳句の処理能力(というとなんかヤな感じですが)を高めていこう、

となんとなく思うようになったことも関係してるんですが、

この句集は結構読むのに時間がかかりました。

10日くらいかかってますね。

この試みを始めた時は2〜3日ですぱすぱ読了してたのに、

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伊藤敬子『年魚市潟』

伊藤敬子『年魚市潟』(角川書店)

ここ2週間ほどひとり暮らしをしているんですが、

いやーもう家が広い…そして寒い…そして人と喋らない…wwww

日中ほとんど人と会話しない仕事に変わって約4ヶ月というところなので

もう一日の会話量がひどいです。

まあ徒歩5分のところに住んでいる義理の父母と

なんやかんやとやりとりをしているので

かろうじて人間らしさを保っているというかなんというか。

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岡本眸『一つ音』

岡本眸『一つ音』(ふらんす堂)2005年

JR浦和駅から10分ちょっと歩いたところに

「金木書店」という古本屋さんがあります。

結構品揃えがよくてちょくちょくのぞくのですが、

先日会社帰りによりましたらなかなか収穫がありまして。

その中の一冊がこちらです。(いきなり余談なのですが、

長谷川秋子が主宰を務めていた昭和45〜46年ごろの『水明』が

お店に20冊以上あったんで、気になる人は

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甲斐由起子『春の潮』

甲斐由起子『春の潮』(ふらんす堂)2002年

甲斐さんのお名前を最近某所で伺ったので、

大学時代、俳句に真面目に取り組もうと思い始めた時期に読んだ

第一句集をご紹介がてら。

有季定型でやっていきたい人が勉強し始めの頃に読むには

すごくいい句集なんじゃないですかねえ。

黒揚羽ことりと窓を打ちて去る

積み上げし白菜の尻初時雨

冬の日を鳥の話で暮れにけり

ががんぼの素足に触れし夕べかな

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「ねむっておきてバター」を読んだ

ネプリ、自分でも作ったりするんだけど

自分が受け手として出すのはどうも苦手だったりする。

いつの間にか出力期限が過ぎていることが多いし、

意外とコンビニに行きそうで行かない

(会社の昼休みの終わりかけにファミマかローソンに飛び込んで

コーヒーを慌ただしく買っていく、というパターン。

なぜこのふたつかというとTポイントかPontaポイントを貯めたいので…)。

でもこれは頑張って出力する

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金沢大学俳句会誌『凪』二号

金沢大学俳句会の機関誌『凪』二号を拝読。

金沢はいつも俳句甲子園で頑張っている学校があるなあという印象、

あと街としては北陸新幹線ができる前(7〜8年前かな)、

夜行の特急「能登」で遊びに行ったことがあります。

新幹線もできて便利になったし、東京よりちょっとだけだけど

行きやすい街に住んでるし、また訪れたい街のひとつです。

金沢21世紀美術館や忍者寺は楽しかったし、犀川の流れが渋かった

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『俳句年鑑 2018年版』に私が出ているはずなんですという話題。

 いつか俳句に関してやりがいのある仕事を持ちかけられたら、『玉藻』創刊を虚子に勧められた立子よろしく「私に出来るでしょうか。出来ることなら……」と答えたいと、ずっと思っていた。だが今回、鼎談へのお誘いを受けた私の口をついて出たのは「無理です!」というなんとも情けない言葉だった。こんなに立子のセリフにうってつけのシチュエーションは滅多に自分の身に降りかかってこないだろうに…!思い出すたびに悔しさが募

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桜の木の下で 〜一句鑑賞〜

一本の桜が全部知つてゐる  喪字男 (「里」5月号)

 ある場所で、たくさんの時間を一緒に過ごしたふたり。この春、お互いの関係に思いを巡らさなければならないような区切りが彼らに訪れたのだろう。卒業か、環境の変化か、心が離れてしまったのか。自分の気持ちを言葉でぶつけるのではなく、沈黙のままに別れ、その場所を離れることを彼らは選んだ。なぜなら、「一本の桜が全部知つてゐる」から。

 何を言っても無駄

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続・彼女たちの夏

今年の俳句甲子園で大旋風を巻き起こして準優勝した

東京家政学院高校俳句同好会の部誌『Phenomenon』vol.3を読んだ。

彼女たちの準優勝の瞬間を配信で見届けた後に

去年書いた前号、vol.2の感想のnote

https://note.mu/tefcomatsumoto/n/n2360f92de988

のページをツイートしたところ、アクセス数が跳ね上がり

彼女たちがどこか遠いとこ

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片山由美子『香雨』再読

先日、現代俳句協会の勉強会「私の思う現代の俳句150句」にお邪魔した。

http://gendaihaikukyokai-seinenbu.blogspot.jp/2016/03/145150.html

実作と評論を共に精力的に行い、今の俳壇で強い影響力を持つ

(ということになっている)片山由美子に、

莉々香・瑞季・柚紀の若手の3人がどう食らいついていくのか、

そして榮猿丸はどういうスタ

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BLコミックスの中に定型詩の断片を見つける

きっかけは、知人がtwitterで蔓沢つた子さんというBLマンガ家さんのコミックスの話をしていたことでした。

『くさかんむりに化けると書いて』

そのタイトルを見て、あ、七七だ、と思ったんです。

蔓沢さんの他のコミックスで『好物はいちばんさいごに腹のなか』というのがあると知り、あ、今度は五七五、って思いますよね。

それから一年くらい経ったんですが、今日ちょうど蔓沢さんがコミックスを出されてい

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「庫内灯」を読む(散文編)

俳句について書いたから他のパートについても書かないと

平等でないなと思って他のパートのことも書こうと思ったのだが、

小説について何か文章を書くのは大学時代のレポート以来であった。

何年ぶりだ!数えたくない!ので本題に入る。

〈死んで俺が水の中にすんでる夢だつた 河本緑石〉の小説化

まったりした同居ものだな~、いいな~こういう距離感…

でも元ネタが超不穏だよね…なんてのんきに読んでいたら

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