黄梁一炊

耽る妄想と現実の狭間 不定期更新

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ミッドナイトストレンジャー〈第一夜〉

私はどうしようもなく若かった。 恋人も置いて一人で夜の街に出るくらいに。 闇に染まった見慣れた道には疲れ切った人々や夜を謳歌する人たちや、 そして私みたいな何かを探し、彷徨い歩く人がいた。 考えが湧き上がる、感情で心は水浸しになる。 すごく愛してくれている彼も愛してあげたい私もだれも悪くないんだと思う。 だけれど世間の目から見ると私はただただ悪魔のように見えるのだろう。 私も彼らがそう見えるから。 考えを巡らせていると後ろから優しい声がした。 「ずいぶんとや

    • Midnight Stranger: Night Four (English)

      How long had it been since I got into bed? The ticking of the clock echoed softly in the darkness, unsettling me. Sleeping in and lounging without an alarm was my perfect weekend plan, but tonight, for some reason, I just couldn’t fall as

      • ミッドナイトストレンジャー(第四夜)

        布団に入ってどれくらいたっただろうか。 時計の針が静かに暗闇に反響し、私を不安にさせる。 アラームをセットせずにだらしなく寝過ごすのが私の至福の週末だったのに、今日はなぜか全く眠れる気がしなかった。 このまま布団にうずくまっていても、寝れないという漠然とした恐怖に支配されるだけだからいっそ起き上がることにした。 ぼうっとした体を起こし、電気をつける。 ぱっと弾ける蛍光灯の光が目をくらませ、時計に目をやると午前二時前を指していた。 長引く残暑もようやく帰る場所を見つ

        • アルノ/Arnaud

          君はいつも気まぐれだった。 You were always capricious. 君が僕と付き合ったのもほんの少しの気の緩みだったんだろうと思う。 I think that dating me was just a momentary lapse of your composure. 盲目だった僕は君のことばに踊り踊らされ、 Blinded, I danced to your words, 今は一人で夜道、行きついた先は孤独の夏だった。 and now, alone

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        ミッドナイトストレンジャー〈第一夜〉

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        記事

          ミッドナイトストレンジャー〈第三夜〉Midnight Stranger

          出張続きの近頃は妙に疲れがたまる。 Lately, with constant business trips, I feel an unusual build-up of fatigue. 自分の住み慣れたところから離れると少し心も浮ついたような感じになる。 When I'm away from my familiar surroundings, my heart feels a bit unsteady. まるで心が急な移動についてこれずにゆっくりどこかで漂っているよう

          ミッドナイトストレンジャー〈第三夜〉Midnight Stranger

          ミッドナイトストレンジャー〈第二夜〉Midnight Stranger〈The second night〉

          会社終わりの電車に揺られ、 Shaken by the train at the end of work, 遊び疲れた家族連れを見るなりふと気付いた。 I suddenly noticed when I saw a family tired of playing. 世間は大型連休らしい。 It seems like Japan is on a long holiday, which is called something like golden week. 子どもに頃

          ミッドナイトストレンジャー〈第二夜〉Midnight Stranger〈The second night〉

          列車に揺られながら/on the way home

          お久しぶりです、最近エッセイを書いていないなあと思い、 Long time no see. Lately, I've been thinking that I haven't written an essay in a while. 新学期も始まったことだし、近況報告と共にだらりと綴っていこうと思います。 Since the new semester has started, I'll casually jot down some updates along with my

          列車に揺られながら/on the way home

          冬の終わりとともに / As winter draws to a close

          解けない雪がないように、 Like there's no snow that never melts away 明けない夜がないように、 and no dawn that never breaks, 尽きない愛はないのだと、私は冬の去り際に静かに知りました。 When the long winter finally reach to the end , I quietly realised there is no endless love. 凍え、体が震えあがる早朝に、

          冬の終わりとともに / As winter draws to a close

          夢で逢えたら

          続編ですのでこちら読んでない方は是非先に読んでいただけると幸いです。 〈本編〉 ただ静けさがそこには残っていた。 真っ暗な四畳半のワンルームに一人取り残された僕は約束の時を待っている。 耳をすませど何も聞こえてこない。 これが夜の声なんだろうか。 少しの静寂が過ぎ、次は君の声を思い出そうとした。 あれ、どんな声だったっけ。 思い出せたとしても再生されるのは僕の脳内で、 僕という陳腐な物体を通してしか君の声を聴くすべが無くなってしまったのがやけに悲しく思えた。

          夢で逢えたら

          ありきたりな振り返りといろいろあった2023

          いよいよこの時期が来てしまった。 クリスマスが終わり、正月までそわそわとするこの時期だ。 そんなそわそわを相殺するように例年のごとく振り返りを書いていこうと思う。 日本全体の振り返り 2023年は日本にとっても大きな年だったと思う。 まずすごく大きな変化といえば一生外せないといわれていたマスクがやっと今年の五月に外せるようになった。(一部の人を除く…) やはり誰かから言われないと何もできない日本人の悪い癖が露呈したような出来事だったが、 結果的に息苦しさが両方の意

          ありきたりな振り返りといろいろあった2023

          赤と黄のグラデーション

          緑に染まりきっていた葉がゆっくりと色を変えていく、 また早々と葉を散らすものもいる。 そんな季節だからか僕のtendencyや好みも少しずつ変わっていることに最近気づいた。 今回はそんなここ最近の僕の日常を振り返りつつ、 いつも通り面白おかしく綴っていこうと思う。 お風呂を夜寝る前に入るか朝入ろうか問題 タイトルを書いただけでもこの文章のしょうもなさが全開で漏れ出しているが、 僕にとっては重大事項だった。 前まではお風呂を入らず寝るなんてことは不潔極まりない行為

          赤と黄のグラデーション

          ムーンライト・キッス

          あなたの横顔を照らす月明かりのような存在でありたいと思う。 体を徐にベットに預け、 遠くに沈みゆく真っ赤な夕日を目で追いかけていると、 そんな風に感じた。 燃えるような夕日は確かに優しくて魅力的だけれど、 みんなの前で当たり前のように沈んでしまうでしょう。 世界をあれだけ暖かい赤で色づけておいて、 沈んでしまったとたん一瞬世界から色が無くなってしまうような、 あの刹那が私は好きじゃないから。 それに比べて、 月明かりはふとした時に上を見上げると煌々と輝いて

          ムーンライト・キッス

          1 あれは新緑が朽ち始め、世界がゆっくりと秋色に変わっていこうとしていた頃だった。 そんな季節と季節の狭間に取り残された二人は出会うべくして出会ったというより行き場を失った野良猫たちが偶然出会ってしまったといった方が正しい気がする。 僕は君を愛していたんだろうか、君は僕をどう思っていたんだろうか。 小骨が喉に突っかかるようなそんな気持ちが霧のようにまとわりつく。 そして時々僕は目をつむって霧の中に閉じこもることがある。 2 あの夜、満月に照られた君の頬は少し赤らんで

          お風呂について

          お風呂から上がったその刹那に少し寒さを感じ季節の変わり目だと気づかされる。 年々観測史上最高を連呼している日本のいかれきった夏はやっと南半球へとのそのそと向かい始めた。 そこで生粋の日本人心が躍り出してしまう。 寒くなるとなった分だけお風呂の温かみが増す。 長年の、とはいってもたったの21年だが、 経験から身をもってそれを知っている。 どんなにつらかった日でも、遊び疲れた日でもいつでもお風呂は変わらずそこにあって無条件に僕らを温めてくれる。 ただ体の汚れを落とす

          お風呂について

          少年と積乱雲

          せわしなく流れる日々と流されて生きてる少年。 八月はもう終わりが見えていた。 蝉の死骸で溢れたいつもの通学路は彼にとってはなんてこともなかった。 長ったらしい夏休みに、エアコンのききすぎた部屋の片隅で蹲る。 時々勉強をして、時々誰かと遊んで、 そんな日々を過ごしているとどうしようもなく切なさが漂う。 別に不幸せなわけではないけれど、 突然の通り雨にふられるようにどうしようもない感情に静かに襲われては悶える。 彼は他人からは分からない程度に思い悩んでいた。 あ

          少年と積乱雲

          街灯の流星群

          瞬く間に移り変わる車窓風景は夜になると一層魅力的になる。 暗がりの中、人の営みが煌めく。 それは少し君の表情に似ているとふと思った。 少しうつろな君が時々見せる笑顔は僕の目には輝いて見える。 そんな僕にきょとんとして目を逸らす、その一連の動作が愛おしい。 ひょろっとしていて今にも消えてしまいそうな君。 手を掴んで引き寄せてしまいたい、 そんな思いは夏風に乗せて、 できるだけ君と長く過ごせるように、 そんな願いを星一つ見えない退屈な都会の夜空へと昇華させる。

          街灯の流星群