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時は短し楽しめ少年

お久しぶりです。

好きな本なにって聞かれて僕はよくこう答えます。

「夜は短し恋せよ乙女」

確かに大好きだけど即答するほど大大好きでもないような、

そんな半端なものを紹介したくなるその性は、

タイトルの絶妙な、刹那的な、美しさにあると思います。

自分の口から出るその日本語にただ酔いしれてしまう。

そんなタイトルを思いついた森見先生はその功績をどこかしらの神社の隅っこにでも称えられるべきです。

余計なお世話だと聞こえてきそうですが、

そんなそんなどうでもいい前置きはさておき、

今回は京都をぶらりとした時に感じたフィーリングを書き残しておきたいと思います。


生まれて此の方、祇園祭という三文字を腐るほど聞いてきたけれど、

実際どんなものなのか実態も分からず、知ろうともせず、

のうのうと生きてきたのでした。

先日、初めてそれを目の当たりにして、

まだまだ自分の知らない日本があるのだと実感したのです。

けれどどこを歩いても人だらけでお祭り騒ぎ状態だったので、

僕と友達は祭りなどそっちのけで気の向くままに京都を歩くのでした。

二十年弱日本で生きてきて、

京都をろくに知らない僕にポーランドから来た彼に逆に案内してもらうという、

少し日本人としてどうなんだろうかなんて考えたりもしたけれど、

知らないものは知らないんだと開き直って、

頼もしい彼の背中を追いかけるのでした。

人込みをかき分け烏丸へ、

美味しい匂いに釣られ錦市場へ。

軽く昼食をとって、

少し汚い木屋町へ。

京都が綺麗すぎるから逆にああいう少し汚めの街が一つや二つくらいあってもいいなと寛大な心で町を抜けていくのでした。

少し歩き疲れて、鴨川のほとりで静かにゆったりとした時間を浪費する。

こういう時間の使いかたはとてもとても贅沢に感じられ、

そんな時を生きられる自分の人生にこれ以上なく感謝するのでした。

大して素晴らしいこともしなくていい、

悪いこともすればいい、

ただただゆらりと幸せを感じながら流れるように生きていきたい。

願望というよりも現在進行形に近い。

そういう心を忘れずに生を全うしようと、

鴨川に反射する夕焼けに、

夏風に乗ってふわりと香る彼の香水に誓ったのでした。

しばらくしてお酒が無性に呑みたくなって、

彼が以前行ったという幻のバーを探しに先斗町に。

狭い路地に無数に掛かるのれんの色が鮮やかで、

耳をすませば聞こえてくるほろ酔いの声色、

欲望にひたすらに従順な人間の群れがここで幸せに溶ける様がたまらない。

結局そのバーは見つからなかったけれど、

あの夜に彼と先斗町を彷徨った記憶は美しく残り続けるだろう。

再び鴨川に舞い戻って、

夜風のぬるさと川の潺が織りなす絶妙な時間を二人で共有して、

夜も更けたので惜しくも帰路についた。


時は短し楽しめ少年。

一般論的にはもう僕は少年ではないんだろうけれど、

せめて心は少年でいたい。

美しいものにちゃんと美しいといえる、

美味しいものを美味しいと頬張れる、

そんな純粋な心を失くさないように生きていこう、これからも。














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