イギリス生活のとある1日「ニコールキッドマンとの出会いと別れ」

昨日は朝から明らかにエネルギーがぐんと変容したのを感じた1日だった。簡潔に言うと停滞していたことが急に動き始めたのだ。対人や、入ってくるものが活性化し始めた。

午前中は、スコットランド在住のビジネスマンの方に日本語のレッスンをした。彼はとても頭が良く、質問も鋭いものばかりだった。普段何も考えずに使っているこの母国語について、外国人生徒さんの質問を通じて、日本語が持つ尊敬語や謙譲語といった文化背景について「日本語とは、まるで芸術作品のような言語だなぁ」と再び深く感じることができる。

私はイギリスという国に来て、語学というものに翻弄され、そして今語学にとても救われている。思いもよらぬ流れから日本語ティーチャーになったことは、本当に自分にとってのギフトであったと改めて実感している。

午後には、所属する語学学校に立ち寄り、マネージメントを担当してくれているポルトガル人のアンドレアと立ち話を。立ち話のつもりが、お互いの仕事を褒めたたえ合ったり、ポルトガルの国のことや彼女が参加しているブッククラブの話題で盛り上がったり。明るい会話は果てしなく続き、まるで春の花が開花したような気持ちになった。普段コツコツと1人で向き合う作業が圧倒的に多いため、他愛もない話をして笑いあえる時間があることが嬉しかった。

このように人と共振して、共感し合う時間を過ごすことで、私たちは心が軽やかになり癒されることを再認識した。誰かと他愛もない話をすることが、ヒーリング効果をもたらすこともあるのだと思います。自分から波動を上げることで、周りの人々にも良い影響を与えることができる。それが「私たちが共に泳ぐ海をきれいにする」ということだ。日々の生活において、これからもこんな時間を大切にしていきたいと思う。

語学学校を後にし、次にイギリス人アーティスト師匠の誕生日だったのでプレゼントを届けにお宅まで行ってきた。師匠は不在だったのでポストに投函しておく。実はこれが今日の外出のメインの目的だったりもした。師匠には会えなかったけれども、心はほくほくだ。人の誕生日ってやっぱりとてもいいなぁと思う。お祝いさせてもらうこちらもありがたい日だ。

なんだか、今日はほんとにトンネルを抜けたかのようなエネルギーが切り替わった日だなぁと思いながら、ハイストリート歩いていると、
前方から懐かしい女性の姿が！

日本から渡英した私はこの町に13年ほど住んでいた。ここで妊娠出産をし、孤独な子育てを経験したり、自己アイデンティティが崩壊し、物事がいろいろうまくいかない時期を過ごすこともあった。メンタルが爆落ちしたり、泣いたり、笑ったり、いろんなことがあった。この町に来たばかりのまだ英語が全くしゃべれない頃、家の目の前にアロマテラピーのサロンがあり、心身ともにくたくたに疲れていた私は、わらにもすがる思いでサロンのドアを勇気を出して叩いたのだ。

今でも覚えている。電子辞書を片手に、ド緊張しながらサロンへ行ったこと。オーナーは175cmはあるだろうか長身の、モデルのようにスラリとした、びっくりするほどの美女だった。美しいうねるような赤毛のロングヘアが印象的な、女優のニコール・キッドマンにとてもよく似た女性だった。電子辞書を使いながら、たどたどしくしゃべるカッコ悪い私にもニコール・キッドマンはとても優しく優雅に微笑み、ゆっくりと話してくれ、じっくりと私の話にも耳を傾けてくれた。

その後、彼女とのご近所付き合いが始まり、一緒にお茶を飲んだり、洋服を買いに行ったり、家族でホームパーティーを開いたりと、一時期は私にとってとても励みになる頼れる存在だった。
彼女のサロンが何周年かの記念を迎えた時は、盛大なパーティーも開かれ、私もお祝いに駆けつけた。眩いスパンコールが敷き詰められたシャンパンカラーの床まで届くロングドレスを纏った彼女は、トレードマークの赤い髪が美しくひきたち、いつもにも増して本当に舞台の主役のような輝きを放っていた。

しかし、その後彼女は、私生活でもパートナーと破局したり、ご家族との関係性の何か問題を抱えていたりしたようで、結局サロンの運営もうまくいかずにいつしか店は閉店した。ご近所だった彼女は他の街へ引っ越し、その姿を見かけることも特別連絡を取り合うこともなくなっていたのだった。

おそらく10年は会っていなかったのかと思う。
そんな彼女が目の前を歩いていたのだ！