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火曜日の美術館

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I found! 【小説】火曜日の美術館

I found! 【小説】火曜日の美術館

 わたしの友人には絵を描く人、文を書く人、デザインをする人の割合が比較的多いと思うのだけれど、その中に写真を撮る人ももちろん、いる。そんな友人から素敵な本を借りたので、紹介するよ。

 ダミーブック、手製の写真集。外函を見て、その書籍のサイズにピンと来る人もいるかもしれない。バイテン。フィルムの写真を撮影する人ならニヤリとするんじゃないかと思う。この外函も自作されたもの。そう、彼自身が作成した、今

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さんかく展 【小説】火曜日の美術館

さんかく展 【小説】火曜日の美術館

 本当に久しぶりのギャラリー訪問だ。この「物語」も長い間、更新することができなかった。もちろん、緊急事態宣言下であったことは大きな理由なのだけれど、冬から初夏にかけて寝込んでいたことも、それに拍車をかけた。

 都心へは先月、病院のついでの用事があり出かけたので、電車が久しぶりというわけではなかった。それでも、とても緊張した。ギャラリー訪問の前に薬をちゃんと飲めばよかったな。

 少し上滑りしてい

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羊文学の「POWERS」を聴く そしてひたすら1曲をリピートする 【小説】火曜日の美術館

羊文学の「POWERS」を聴く そしてひたすら1曲をリピートする 【小説】火曜日の美術館

羊文学の新譜のリリース。楽しみにしていた。
Official Trailerはこちら。

職場への行き帰り、全曲をリピートして聴いていた。
そして、わたしは、お気に入りの1曲を見つけ、それをひたすら繰り返し繰り返し聴いている、今も。

3曲めの『変身』。
最初、

嘘つくな

で、始まる曲なので、なんかちょっとやな感じ、と思った。でも、聴いているうちに一番のお気に入りになった。
その理由も、また歌

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「もしかしたらの物語」/「かげおくり」/「THE PARK」を聴く 【小説】火曜日の美術館

「もしかしたらの物語」/「かげおくり」/「THE PARK」を聴く 【小説】火曜日の美術館

今、わたしは比較的調子がよい。理由はいくつかあると思う。ただ、そのうちのひとつは、本来ならば、絶不調に陥らせるような出来事だ。ただ、あまりに素敵なものに出会うと、悔しい気持ちを越えて、伝えなくてはならない気持ちになる。正しさは、分からない。やっぱり涙は流れてくる。それでも、それでも。

「もしかしたらの物語」
夏、7/30-8/10まで、西荻窪にある「URESICA」さんで樋口佳絵さんの個展が行わ

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「画家が見たこども展」 【小説】火曜日の美術館

「画家が見たこども展」 【小説】火曜日の美術館

 わたしの心は、はしゃぐ。
 こどもたちのいろんな表情、仕草、洋服。
 かわいい! キュート! ラブリー! 猫ちゃん!

 都心に出たのは4か月ぶりになるだろうか。久しぶりの美術展。足を運んだのは三菱一号館美術館「画家が見たこども展」。

 ナビ派の絵画が好きなわたしは、コロナ騒動の前から足を運ぶと決めていた展覧会だ。観られないまま終わると思っていた。観ることができてよかった。嬉しい。

 チケッ

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美術館女子 【小説】火曜日の美術館

美術館女子 【小説】火曜日の美術館

 ふうん、それってわたしじゃん、と思いながらサイトを開いてみたのだけれど、ごめん、わたしじゃなかったね。

 美術館女子とわたしが聞いて、ぱっと思い浮かぶのはKIKIちゃんかな。雑誌の上では、そういう企画いくつもあったと思うんだけれどな。とはいえ、わたしが中高生くらいの頃の話だから、もう時代が違うのかもしれないな。

 小学生の頃、母に連れられてサイン会に並んだことがある。それがKIKIちゃんの『

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無理に覚めなくてもいい -統合失調症とわたし- 【小説】火曜日の美術館

無理に覚めなくてもいい -統合失調症とわたし- 【小説】火曜日の美術館

 昨日、半年に一度あるかないか、のような体調のよさに、つい浮かれてしまったわたしだ。午前中から振込やら引出やらの手続きを行い、午後には公園に撮影にまで出かけてしまった。

 今日は、起き上がることができず、午後になってもベッドから抜け出せずにいた。

 そして、夢を見る。
 今日の夢もまた、わたしを呑み込む。

 わたしはそこが夢の中であることを了解していた。それは珍しいことで、初めてかもしれなか

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イントロから好き 【小説】火曜日の美術館

イントロから好き 【小説】火曜日の美術館

 美術館がいよいよ稼働しようとしている今、わたしはずっと不安に絡まれて、起き上がることができないで眠っていた。

 なんども起きる夢を見る。これは本当に起きているのだろうか、と疑いながら、いつの間にか場面は夢の中で、また起きようとしている。

 夢の中に起き続けることを繰り返す。何十回と重ねる。
 まだ現実ではないと気づくたび疲弊してゆく。

 いつか夢の中に呑まれてしまうだろうと思う。
 今、言

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詩を描く 【小説】火曜日の美術館

詩を描く 【小説】火曜日の美術館

 しばらくの沈黙。わたしは働きに出ることもできなくなって、家に篭っていた。今も絶賛休業中だ。COVID-19のせいではない。持病がずいぶんと悪化している。

 そんな状態になる前にふたつの展覧会に足を運んだ。ひとつ目はnoteで知ることができた、冬野小音さんの『詩のない詩 絵のない絵 展』。とても風の冷たい夜だったけれど、夜の吉祥寺は、今でもやっぱりわくわくする。

 ghostのうごめく様をつぶ

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choucho 【小説】火曜日の美術館

choucho 【小説】火曜日の美術館

 もしかしたら、許されるのじゃないかと思っていた。この展示に足を運べたら、苦しむけれど、もう一度洋服を作ることに向き合えるのじゃないかと思っていた。でも、わたしの体が拒否をした。ううん、これは与えられた罰なのだ。

火曜日の美術館:choucho

 本当なら、今頃、わたしは東京都現代美術館にいるはずだった。開催中の「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展を鑑賞するために。だけれど、わたしはまだ自分

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「永遠のソール・ライター」展 【小説】火曜日の美術館

「永遠のソール・ライター」展 【小説】火曜日の美術館

 わたしはたやすい。たやすく変化してしまう。それができる自分で、よかったのじゃないかなって思っている。心をやわらかくすること。そして新しいアイデアを試してみるのだ。

火曜日の美術館:「永遠のソール・ライター」展

 雨にうたれるのが嫌だったわけではない。機能的なレインブーツも手に入れていたし。もしかして、雪だったら出かけていたかもしれない。その時はビーンブーツを履き、ざくざくと積もった雪を踏みし

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「ハマスホイとデンマーク絵画」展 【小説】火曜日の美術館

「ハマスホイとデンマーク絵画」展 【小説】火曜日の美術館

 その絵はもっと不穏なものが隠されているのだと思っていた。実際に観た時、それは思いのほか優しく、静かで、時折、無意識のハミングが聞こえるようだった。

火曜日の美術館:「ハマスホイとデンマーク絵画」展

 コートの襟を立て、マフラーを巻き、最寄りの駅へと向かう。耳にはAirPods。リーガルリリーの最新アルバムから先行配信されている曲を繰り返し聴いている。
 今日は風が強く、冷たい。それでも出かけ

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