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青森の郷土料理を食す旅

 西は日本海、東は太平洋、北は津軽海峡の三方向を囲む海。中央部の奥羽山脈を境に西と東で異なる気候。西側は豪雪地帯、東部は乾燥していて晴天が多い冬と、親潮という寒流から北東方向へ吹く冷たい風「やませ」の影響で低温高湿な夏の気候。こうした環境から、豊富な食材を確保でき、さまざまな郷土料理が存在します。
 今回は、貝焼き味噌、けの汁、せんべい汁、いがめんち、十和田バラ焼きの5品を食べました。

貝焼き味噌

 炉端でホタテの貝殻の上にホタテの貝柱などを乗せて味噌で味付けし、溶き卵でとじる料理。主に、津軽半島で食べられています。江戸時代には存在しており、元々は大きなホタテ貝の貝殻を鍋代わりにして漁で獲れたサバなどの魚と味噌を焼いた料理。庶民にも卵が手に入るようになってから、卵とじに変化しました。
 今回食べた貝焼きの具材はホタテ、岩海苔。塩辛い味噌は卵とじによって中和され、ホタテの甘みもわかります。

貝焼き味噌

 ちなみに、青森県は、ホタテ養殖生産量78600t(2021年)で日本一。全国の養殖生産量の半分近くを占めています。青森市にある浅虫水族館では、ホタテの生態や陸奥湾のホタテガイ養殖の方法について解説されてます。
 青森県でホタテの養殖が盛んな理由は陸奥湾の地形です。陸奥湾は、津軽海峡を通る対馬海流という暖流が入り込みます。さらに、津軽半島、下北半島、夏泊半島という3つの半島に囲まれており、半島の山々に降る雨が川とを経由して栄養豊富な山の養分が海へ運ばれ、植物プランクトンが育ち、ホタテの餌になります。夏泊半島にある平内町では、江戸時代中期からホタテの養殖がおこなわれ、養殖ホタテの生産量が県内の半分以上を占める一大産地であります。陸奥湾のホタテの旬は4〜6月で、特に肉厚で旨味が濃厚です。

けの汁

 細かく刻んだ野菜(大根、人参、ゴボウなど)や山菜(ワラビなど)を昆布だしで煮込んだ汁物。仕上げにすりつぶした青大豆(じんだ)をいれるのがポイント。精進料理が発祥で津軽地方から秋田県の郷土料理。名前の由来は、「粥の汁(かゆのしる)」がなまった説が有力。なぜ、粥の汁と呼ばれていたかというと、米が貴重だった時代に、お米の代わりに具材を細かく刻んで煮込むことによって、おかゆのような食感を再現したため。元々は小正月に、正月に家族の世話や来客対応に追われた嫁が小正月に里帰りする際、男衆のためにつくりおきしたもの。栄養豊富な保存食として、凍りついた汁を崩し温めなおして何日も食べたという。
 飲むと、具材が柔らかくとろけるように煮込まれていて、まるでおかゆを食べている感覚です。

南部せんべい

 小麦粉、塩、水のみで作られたシンプルなせんべい。南北朝の戦乱期に陸奥国に逃げた長慶天皇が、側近から、蕎麦粉、ゴマ、塩を混ぜた生地を兵の鉄甲でせんべい風に焼いたものを受け取り、食べたものが由来。戦国時代に、軽く、たくさん持ち運びができ、保存も可能だったことから戦のときに食べられました。さらに、天保の飢饉の頃に八戸藩で注目され、米が不作だった時の常備食として作られました。蕎麦、小麦は冷害に強く、蕎麦粉と小麦粉を混ぜて練って囲炉裏で炙って食べたのが始まり。現在では、小麦期で作られ、ピーナッツ、ゴマなど様々にトッピングされており、味を楽しむことができます。また、鍋用に開発されており、煮込むことによって、モチモチ食感に変化。まるでアルデンテ。
 はみ出した部分を切り落としたものは、「みみ」と呼ばれます。「みみ」をバター醤油で炒めた「みみバター」は、コシが非常に強く、噛むごとに染みたバター醤油がにじみ出ます。
 南部せんべいを肉、魚、野菜などとともに、だし汁で煮込んだすまし汁。
 お店によって異なる具材。鶏肉でも、魚でも旨味があふれています。煮込むから溶けてしまうのではないか?と思いましたが、実際に食べると、せんべいの概念が覆るようなモチモチ食感。餃子の皮ではなく、すいとんを食べているような感覚です。

いがめんち

 イカの足を細かくたたいて、玉ねぎ、にんじんなどの野菜とともに、小麦粉でつないでまとめて、揚げた料理。弘前が発祥で、ムダなく消費するための先人の知恵です。現代問題になっている食品廃棄の問題解決の糸口になるかもしれません。
 八戸のイカメンチは外カリカリ、中は生地とネギの、イカでまるで揚げたこ焼き。生姜も効いています。

十和田バラ焼き

 

 他にも、今回の旅では、食べていないじゃっぱ汁、いちご煮などの郷土料理もあります。

じゃっぱ汁

 魚の頭、内臓、身のついた骨をじゃっぱと呼び、雑把から由来しています。ぶつ切りにしたじゃっぱを野菜と一緒に塩、味噌ベースの出汁で煮込んだ料理。青森県では、冬になると、大量のタラが獲れます。タラのじゃっぱ汁が青森の冬の風物詩になります。

いちご煮

 出汁でウニとアワビを煮立て、塩、醤油で味付けしたシンプルな料理。ウニが野イチゴの実に見えることからイチゴ煮と名付けられました。缶詰でも販売されています。青森ではハレの日にお吸い物として食べられます。

 青森県のローカルフードは、貴重な食糧を捨てることなく食べる先人の知恵が詰まってました。現在の大量のフードロスの解決にも役立つと考えられます。

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