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正月に余るランキング上位の常連、お餅の活用法→日本各地のお雑煮の食べ比べ

 きっかけは犬山城の城下町散策。「本町スクエア」内の食べ歩きのお店で出会った東西のお雑煮の食べ比べ。(2022年12月には存在せず。)東日本代表は東京のお雑煮、西日本代表は大阪のお雑煮。どちらも650円。東京のお雑煮は親しみがあるため、大阪のお雑煮のみ、いただきました。
 今回は、地域によるお雑煮の違いを考察しました。お雑煮があるのは、沖縄県以外の46都道府県。沖縄県についても、本記事で取り上げます。
 お餅は余りやすい食材上位に入ります。いくらバラエティ豊富なお雑煮でも、消費しきれない、あなたへ向けて、最後に、オススメのお餅レシピを付けましたので、最後までお読みください。

お雑煮をなぜ食べるのか?

 いろいろな食材を餅と一緒に雑多に煮ただから、お雑煮と呼ばれています。
 起源は平安時代。餅は新しい年神さまを迎えるためのお供えものとされていました。それが、現代の鏡餅。丸い餅が当時、神器として納められていた鏡の形にそっくりで、重ねた餅が縁起物とされていました。現在では、みかんを鏡餅の上に置いて供えられていますが、かつて、鏡餅は、海の幸、山の幸両方ささげられ、新年の五穀豊穣、一年平穏の願いをこめられてました。年神さまは1年間滞在されるのではなく、10泊して1月11日、お帰りになられます。そのときに、お供えものの鏡餅も撤収させ、食べます。このイベントを鏡開きといいます。鏡餅を割るから、鏡割りとも言いますが、運が開くというゲンを担いだ言い方に変えられて、鏡開きと呼ばれるようになりました。
 お雑煮は、かつての正月の宮中行事である歯固めの儀式で提供されていた宮中料理。歯固めの儀式とは、天皇に固い食べ物を献上し、歯を丈夫にし、長寿を願う儀式。お供えものだったお餅を用いて歯固めの儀式を行っていました。当時、歯は年齢のシンボルとされており、歯の健康が長寿につながると伝えられていました。これに関しては、医学の発展した現代で証明されており、歯の健康を保つことによって、モノを噛むことができ、肥満の予防につながります。また、歯周病による炎症は、インスリンの分泌を悪くさせ、糖尿病の悪化など、病気の原因につながります。
 その後、室町時代に貴族や武士などの間で食べられ、新年の豊作や家内安全を祈るお祝いの食事として定着していきました。江戸時代まで、餅は高価だったため、庶民には高嶺の花でした。
 庶民に定着したのは、江戸時代以降。1643年、日本最古の料理本、「料理物語」には、当時のお雑煮のレシピが掲載されています。当時のレシピは、スープは醬油ベースの澄まし汁or白味噌ベース、具材は丸餅+里芋、大根、乾燥ナマコ、あわび、菜の花。江戸時代になって、全国の庶民にも普及し、正月三が日の食事は身分関係なく作られていました。

餅の違い

 東日本では角餅を焼いたもの、西日本では丸餅を煮たものが一般的。  
 元々、丸餅が中心。江戸時代に餅を平たくして切り分ける技術が確立されて角餅ができました。角餅には輸送に便利というメリットがあり、江戸を中心に広まりました。境目は岐阜県西濃地方にある関ケ原。1600年に行われた天下分け目の関ヶ原の合戦。その影響を受けていると思われます。境界線の石川県、福井県、岐阜県、三重県、和歌山県では、県内で丸餅を食べる地域、各餅を食べる地域が分かれています。
 例外もあります。山形県北西部の庄内地方は丸餅がメインです。京都から日本海の都市を繋いでいた輸送船、北前船との交易の影響により、西日本の丸餅文化が伝わりました。一方、西日本でも高知県、鹿児島県は角餅がメジャーです。これは江戸時代の藩主であった土佐の山内氏、薩摩の島津氏の江戸に滞在していた期間が長かったため、江戸の文化を持ち込んだ名残です。

つゆの違い

 東日本、山陽地方、四国西部、九州地方では、すまし汁。これは、大名が参勤交代のときに、江戸のお雑煮を地元に持ち込んだため。福井県、近畿、四国東部では、白味噌ベース。江戸より京都の方が近く、京都のお雑煮の影響を強く受けていました。例外として、山陰地方では小豆汁がメインになってます。
 つゆのベースは全国的にカツオ、昆布だしがメジャー。福岡県、長崎県など九州北部では、あごだし(トビウオの焼干し)、香川県、山口県など瀬戸内周辺では、いりこだし(煮干し)が多数派。石川県南部加賀地方のスルメ、鹿児島県の焼きエビ、宮城県仙台市の焼きハゼなど、一部地域ではぜいたくな出汁を使用します。北海道では、鶏ガラスープをお雑煮で使用する地域もあります。

具材の違い

 主に、各都道府県の名産品を入れます。海沿いでは、海の幸を入れることが多いです。例えば、富山県では、ブリの子のフクラギ、広島県では、カキを入れています。
 また、お正月のためだけに栽培されている伝統野菜を入れる地域もあります。愛知県では、正月菜と呼ばれる小松菜に似た青菜を使用しています。
 続いて具の量。愛知県など東海地方のように具材が葉野菜とかつお節というシンプルなお雑煮。一方、東京都などのように具材が豊富なお雑煮。全国各地で比べてみると、個性豊かで魅力を感じます。歴史を知ることにより、理解も深まります。
 具材の中でも、「変わってるな~」と感じた3つのお雑煮について、語ります。

変わったお雑煮3選

くるみ雑煮(岩手県)

 お雑煮のトッピングにクルミだれ。特に岩手県東部の宮古地域では、お雑煮の餅を取り出してくるみだれにつけて食べる習慣があります。これは、岩手県が伊達藩だった頃の餅文化の影響。正月だけではなく、ハレの日のお祝いのときに、餅をたれにつけて食べる習慣がありました。くるみだれ以外に、納豆、大根、納豆などさまざまなタレがあります。このバラエティ豊富なタレは、岩手県南部の平泉のわんこそばに共通していて、飽きさせないための工夫だと思われます。

味噌濃縮雑煮(三重県中部)

 津市など三重県中部では、赤味噌ベースの濃厚なお雑煮。具は、大根、サトイモとシンプル。大晦日に赤味噌だしに大根、サトイモを入れて煮詰めます。三が日に濃縮した味噌汁を水で薄めて温め直し、焼いた角餅を加えて食べます。これは、農村で家事の負担を減らすため、濃縮味噌汁を作っておいて、食べるときに薄めて温め直していた習慣の名残。一方、四日市市、桑名市など三重県北部では、愛知県と同様に具材が青菜のみというシンプルな澄まし汁タイプです。

白味噌あん餅雑煮(香川県)

 香川県のお雑煮の特徴は、白味噌ベースのつゆに、あんこ入りの丸餅。なぜ、香川県であんこ入りの丸餅がお雑煮に採用されているのか?高松藩時代、特産品として奨励されていた和三盆。塩、綿とともに、見た目から「讃岐三白」と呼ばれ、讃岐の名物でした。砂糖は、特に県東部で盛んに生産されていました。香川県は降水量が少なく、温暖だったため、江戸時代に和三盆の原料のサトウキビも栽培されていました。しかし、作っている庶民にとって高嶺の花。正月くらい甘いものを食べたいと餅の中に砂糖入りのあんこを隠すという高度なテクニックを編み出しました。香川県西部の伊吹島で盛んに作られているいりこをベースにした白味噌のつゆの中に入れて煮込むことにより、絶妙な甘じょっぱさがクセになります。

 他にも、日本各地にユニークなお雑煮があります。調べると奥深いお雑煮の歴史を知ることができます。

沖縄の雑煮

 沖縄県では、お雑煮を食べる風習がありません。中国の文化の影響を受けており、餅を食べる文化がありません。また、鏡餅、門松を飾る習慣もありません。
 正月に食べられている汁物は、中身汁。中身とは、豚の中身、すなわち、豚の内臓、モツ。カツオだしに、干しシイタケ、かまぼこ、黒い糸こんにゃくを刻んで煮込みます。沖縄では、中身汁はハレの日に食べる汁物です。

正月に余ったおもちの活用術

 お正月を過ぎると余るもの、上位にランクインする、おもち。地域によって異なるお雑煮の食べ比べ。全国各地の美味しいお雑煮を食べ比べるのはおススメです。お雑煮から地域の歴史、文化が分かり、奥深さを感じました。

まとめ

 沖縄県以外で食べられるお雑煮。正月の宮中行事の名残で食べられている。新年最初の食事に最適な料理である。
 餅は、関ヶ原を境目に角餅、丸餅に分かれる。山形県庄内地方など一部例外もあり。つゆは、昆布、カツオ、いりこ(煮干し)、あご(トビウオの焼干し)がメイン。地域によっては、スルメや焼きエビ、鶏ガラ出汁を利用することがある。具材は地域の名産品が多い。
 岩手県のくるみ雑煮、三重県の味噌濃縮雑煮、香川県の白味噌あんこ餅雑煮など変わったお雑煮も見られる。

レシピ

参考文献

余ったときのおもちレシピ


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