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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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【140字小説】多様性

【140字小説】多様性

冬のさなか、軒先にアゲハ蝶の蛹を見つけた。厳しい寒さに耐え、この小さな虫は一体どんな事を想いながら春待ちしているんだろう。そっと耳を近づけてみた。
「あー出たくない ずっとこのまま冬ならいいのに 頼むから春来ないで あーほんま外とか無理」
…蝶にも色んなタイプの子がいるんだな。

【140字小説】もう一度

【140字小説】もう一度

接客業をしていて気づいた事がある。
ご機嫌な家族は全員ご機嫌で、無愛想な家族は全員無愛想。親の雰囲気が子にも影響するのか、親の性格が子にも遺伝するのか。細かい原理は分からない。
ただ、僕ももう一度だけ頑張ってみようと思うんだ。我が家の冷たいドアノブを回し、ご機嫌に「ただいま♫」

【140字小説】メリクリ

【140字小説】メリクリ

クリスマスなんて結局ただの1/365日だ。フツーにバイトして(いつもよりちょっと浮かれた家族連れやカップル客が多かったけど)、フツーに小雨の降る寒い夜道を歩いて、誰も待ってないワンルームに帰るんだ。
…って…あれ!?私の部屋に電気点いてる。もしかしてサンタさ…って消し忘れかーい!

【140字小説】M氏の受難

【140字小説】M氏の受難

「生きてるだけで偉い」
「辛いなら逃げていいんだよ」
笑顔で優しい言葉をかけてくれる人達。

…馬鹿か!ただ生きてるだけで偉い訳ないだろ!辛いからって逃げてていい訳ないだろ!

俺は哀哭した。この国は変わっちまったんだ。

…誰か厳しい言葉をくれ!叱咤激励してくれ!どうか冷たい目で罵ってくれよ!

【140字小説】部長、どんだけ

【140字小説】部長、どんだけ

在宅勤務のWEB会議中、堅物の部長が乱入した娘ちゃんにデレデレになっていた。

翌日
「ね、昨日の部長可愛かったね」
「意外な一面、的なね」
「鬼部長の別の顔発見だね」

…でも他の子は知らない。私と2人きりの時だけ部長が見せてくれる、もっと別の顔。

…とそこにいる3人其々が心の中で思っていた。

【140字小説】今日も

【140字小説】今日も

「イクメン、カジダンアピールうざ。当然の事なんだから黙ってやりなさいよ」
今日もソファーに寝転んだママは、ネトフリで海外ドラマを見ながらパパに言った。パパは「ごめんごめん」と笑いながら、今日も僕をおぶって夕飯を作ってる。
あっ、今日もパパがママのお皿にだけ微量の何かを入れたぞ。

【140字小説】陰謀論

【140字小説】陰謀論

科学の進歩は凄まじい。
Bluetoothのワイヤレスイヤホンはやがて必要なくなるだろう。
近々、脳波判別機能搭載スマホが登場。貴方の脳波を認識しダイレクトにペアリング可能となる。イヤホン無しで脳内に音楽が流れ込むのだ。
…便利すぎて怖い?怖くないし安全だし我々は何も企んでいませんよ。

【140字小説】リーマンの呟き-ハロウィン編-

【140字小説】リーマンの呟き-ハロウィン編-

「ジャックオランタン」なんて単語、つい数年前まで謎の呪文の様に感じるだけだったが。今となっては「ああ、あのカボチャをくり抜いたハロウィンの飾りか」と即理解できるようになった。慣れって怖いな。
そんな風に俺達は、有無を言わさず始まった「インボイス制度」にもすぐ慣らされていくんだろう。

【140字小説】ここに潜む何か

【140字小説】ここに潜む何か

「全ての友達、こんにちは!」
「この髪型のアイデアは素敵です」

最近Twitter上でAIみたいな文を呟く奴が増えた。ほんのり感じる言葉の違和感。俺の気にし過ぎ?

という呟きをしたら即FF外からリプがきた。

「この素晴らしいアプリはTwitterではありません、Xです」

【140字小説】いつの間にか

【140字小説】いつの間にか

ねぇ、山に餌がないから人里に降りて来てるって…
今年特有の出来事じゃなくて、実は何年も前から言われてるよ…
落ち着いて考えてみてよ…
毎年毎年そうなんだってば!
ねぇ、周りをよく見てよ…
あそこで農作業してる人も、下校中の子供達も、貴方のお隣さんも…
もうみんな熊じゃないの!!

【140字小説】社長が来る

【140字小説】社長が来る

「社長が身分を隠して現場に潜入!従業員達のリアルな姿を視察!」
そんな番組を見て以来、俺の職場にも社長がお忍びでやって来るんじゃないかと常に緊張感を持って働いてる。
…あれから30年。社長、来なかったな。てゆーか社長って実はそんな暇じゃないよな。俺、社長になってやっと分かったよ。

【140字小説】顔で笑って心で泣く

【140字小説】顔で笑って心で泣く

“顔で笑って心で泣く”
そんな器用なこと、人間は本当にできるのだろうか。
僕はいつも気持ちが顔に出てしまって、級友から「なんか嫌そう」「少しは空気読めよ、ムカつく」と虐められた。もう長い間学校に行けてない。
「大丈夫、いつかまた行けるわ」母は毎日優しい笑顔でそんな僕を励ましてくれる。

【140字小説】この物語はフィクションです

【140字小説】この物語はフィクションです

努力が実を結ぶ?
友情が報われる?
勝利を分かち合う?
…違うだろ。現実はさ。上司も取引先もご近所もみんな「自分に都合のいい奴」を引き立ててるだろうが。結局要領の良い奴の一人勝ちよ。
…ていう辛過ぎる現実をまぎらわせる為に物語(フィクション)が存在するんだ。
そこんところを忘れるなよ。

【140字小説】bye-bye

【140字小説】bye-bye

ここの所ずっと
君は僕のそばに居座って、
ちっとも帰ろうとしなくて、
いつも笑顔でまとわりついてきた。
正直ちょっと鬱陶しいと思ってたんだ。
なのに昨夜の君はなんだか元気がなくて
朝起きたらいきなり居なくなってた。
こういう最後が一番堪えるよな。
せめてお別れのキスくらいさせてくれよ、夏。