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サービスの体験品質を診断する「専門家調査」とは

ユーザーに満足度の高いデジタルサービスを利用してもらう。そんな理想的な状況は、サービス事業者が日々、課題抽出⇄改善のサイクルを絶え間なく回し続けていることで成り立っています。

そんな事業者様に対して、私たちTDSは被験者を用意して行う「ユーザー調査」による支援だけでなく、社内のUX専門家(=人間中心設計の有資格者)がサービスの体験品質についてユーザビリティを中心に診断する「専門家調査」を実施させていただくケースも多くあります。

「専門家調査」は、ユーザー調査等と比較して、実際のユーザーの反応を見ることができない一方で、被験者のリクルーティングが不要であることから時間や費用を抑えやすい、というメリットがあります。

今回はサービス事業者には馴染みの少ない、「専門家調査」の中からいくつかをピックアップし、それぞれの特徴や違いをご紹介します。サービス改善をミッションとする皆さまのヒントになりますと幸いです。


TDSが提供する「専門家調査」

以下の図は、既存サービスの改善に関する一般的な流れであり、黄色の箇所が「専門家調査」を実施するタイミングです。

既存サービスの改善の流れ

当然ですが、既存サービスの改善においては、正確な「現状把握・課題抽出」が出発点となります。以降の「仮説立案・要件定義」「施策設計」「改善」の土台となるため、非常に重要度が高い工程です。

ここでは、TDSが専門家調査として提供しているメニューの中から、実施頻度の高い3つをご紹介します。

■「専門家調査」の代表メニュー

A- ヒューリスティック分析
B- エキスパートレビュー
C- 認知的ウォークスルー

これらはどれもUX専門家の間では広く知られた手法ですが、実は「特徴」「定義」「アウトプット」などはUX支援会社ごとで異なり、蓄積している経験、ノウハウ、独自性が色濃く反映される場合が多いです。

TDSの「専門家調査」の特徴としては、以下の7つが挙げられます。

■TDSの「専門家調査」7つの特徴

人間中心設計の資格を保有する社内のUX専門家チームが担当

20年近い歴史があり、独自の評価メソッドがある

③祖業であるデザイン制作で培われた「情緒性」と「理解性」の表現セオリーの保有(UIやインタラクション面での改善施策の引き出しが多い)

「オンライン」と「オフライン」を統合した体験評価にも対応(例|WEBサービスと紙でのコミュニケーションのクロス体験 など)

⑤アウター向けの購買・利用UXだけでなく、インナー向けの業務UXにも精通

「toC向けサービス」と「toB向けサービス」の両方に対応

自社サービス(ステーショナリー雑貨『Re+g』)を運営しており、事業者の業務を想像できる土台がある


A- ヒューリスティック分析

■ヒューリスティック分析のプロセス

1-調査前提を設定
2-評価指標に沿って個人評価(3〜5名程度)
3-個人評価を集約して課題を整理・改善策を検討
4-課題解決に向けた改善レポートまとめ

TDSの「ヒューリスティック分析」は、対象のデジタルサービス(アプリ、WEB)やそれに付帯するアナログメディア(紙やPDF)について、UX専門家がいくつかの指標について経験則を交えながらユーザビリティ評価をします。評価の対象は「ページ単位」であることが特徴です。

TDSのヒューリスティック評価指標は、サービスを開始した20年近く前から少しずつノウハウの蓄積・改良を重ねており、自社でのクリエイティブ調査から得た知見に加えて、JIS/ISO、ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則などの考え方も取り入れながら独⾃に編纂した指標を使って実施します。また、分析にあたっては案件特性に応じて評価指標をアレンジすることも多くあります。

■TDSの「ヒューリスティック評価指標」の土台となっている考え方

・過去の自社でのクリエイティブ調査の知見
・JIS Z 8521:2020/ISO 9241-11:2018
・ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則
・ユニバーサルデザインの7原則
・カラーユニバーサルデザイン など

実際の評価に際しては、例えば、WEBサービス系であれば、以下のような6つの⼤項⽬を設定し、それらを構成する小項目について減点法による4段階で評価を行うことが多いです。

■評価時の6つの大項目例(WEBサービス系)

  1. 実用性・有用性

  2. 視認性・見やすさ

  3. 操作性・設計

  4. 使いやすさ・理解のしやすさ

  5. フォーム設計

  6. 信頼性


■評価の4段階(減点法)

-3:
利用(使用)する上で、見えない、伝わらない、わからない等、目的が達成できないレベル
-2:利用(使用)する上で、見えづらい、伝わりづらい、わかりづらい等、目的は達成できるが、時間や労力などを要するレベル
-1:利用(使用)する上で、目的はほぼ達成できるが、やや不満が発生するレベル
0:利用(使用)する上で、目的が達成できる

ヒューリスティック評価シートイメージ

B- エキスパートレビュー

「エキスパートレビュー」は、ヒューリスティック分析をより拡張したものとイメージしていただくと理解しやすいです。ヒューリスティック分析と同様、対象のデジタルサービス(アプリ、WEB)やそれに付帯するアナログメディア(紙やPDF)について、UX専門家が経験則をもとに、指標に沿ってユーザビリティ評価を行います。

ヒューリスティック分析との大きな差分としては、「ページ単位」で⾒るのではなく、ユーザーが目的を達成するまでの前後関係も含めた行動=⼀連のルート全体のユーザビリティを評価することです。そのため、診断の観点・指標が多岐に渡り、ヒューリスティック分析よりも専⾨的になります。

それに伴い、TDSではヒューリスティック分析の評価指標に加えて、一連の行動を評価するための指標(各種ユーザビリティ関連分野の原則やガイドライン、認知心理学など)も交えて実査を行います。
※分析のプロセスは、ヒューリスティック分析と同様です。

■TDSの「エキスパートレビュー評価指標」の土台となっている考え方
・「ヒューリスティック評価指標」
 +
・TDS独自の経験値と分析データ
・TDS独自のテクニカルライティング・マイクロコピーの指標
(UXライティング)
・ISOの7つの原則(ISO9241-10)
・認知⼼理学の視点
・ダークパターン など

エキスパートレビュー評価シートイメージ(複数の評価指標で診断)


C- 認知的ウォークスルー

■認知的ウォークスルーのプロセス

1- ユーザーのペルソナ、ニーズや⽬的を設定
2- ユーザーの⾏動シナリオ(スタートからゴールまでのタスク)を設定
3- UX専門家が行動シナリオに沿ってゴールを⽬指しサービスを利⽤
4- 分析結果から課題を抽出
5- 課題解決の為の改善レポートのまとめ

「認知的ウォークスルー」は、対象のデジタルサービス(アプリ、WEB)やそれに付帯するアナログメディア(紙やPDF)について、UX専門家が「想定ユーザーになりきって特定のタスクを終えるように操作する」ことで、「使いやすさや学習しやすさを測る」評価手法です。

これまで紹介した2つの専門家調査と大きく異なるのは、UX専門家がペルソナ像になりきって実施する点です。ターゲットユーザーがどんな⼈で(ペルソナ)、どんなニーズやゴールを期待して⾏動するか(シナリオ)を基準に評価するため、ユーザビリティテストに近い性格を持っています。そのため、ユーザビリティテストの代替や補完として実施するケースも多くあります。

ユーザビリティテスト|ユーザーが実際にWebサイトやアプリサービスを利用する様子を観察して、ユーザビリティの課題を見つける手法

実査では⽤意したシナリオに沿って各画⾯ごとに、主に以下4つの質問に対してOK/NGで回答していきます。

■質問内容

・UIを見て何をするかわかるか
・UIを⾒て操作⽅法を正しくイメージできるか
・UIを見て「したいこと」と「操作⼿順」を正しく関連付けできるか
・フィードバック情報から「したいこと」が順調か理解できるか

ユーザーになりきってひとつずつ認識やアクションを確認していくため、ヒューリスティック分析やエキスパートレビューで気づけなかったユーザビリティ上の課題を発⾒しやすいメリットがあります。

認知的ウォークスルー作業シートイメージ

「専門家調査」手法の比較まとめ

このように「専門家調査」は、手法ごとに特徴や使い方が異なります。

それぞれ目線や確認できること、調査対象の幅や深度、かかる時間、費用感などが異なるため、目的や予算に沿って適切な手法を選ぶ必要があります。

最後にサービス事業者が期待した成果を得るために、外部のUX支援会社へ依頼する際のポイントをまとめました。

■外部のUX支援会社へ「専門家調査」を依頼する際のポイント

・同じ調査名称でも各社で「特徴」「定義」「アウトプット」が異なるため、事前に比較検討を行う
・各社(専門家)の経験やノウハウが色濃く反映されるため、実績や強みを確認する
・調査の依頼目的・期間・費用目安を伝え、適切な手法を提案してもらう

TDSでは、サービスやクライアントの状況、問題意識など精緻にヒアリングさせていただいたうえで、適切な手法を提案しています。調査にあたっては複数のUX専門家で対応し、課題の詳細や課題間の関係性はもとより、実現可能な課題改善案まで提示します。

TDSの「専門家調査」レポートイメージ


気になる点やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。


TDSのUXデザインについて知りたい方はこちらをどうぞ。


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