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タクシーの運ちゃんが体験した「外国人旅行者にホッコリして、日本人を考えた話」

今日も、タクシーで都内を巡る。
朝の街を見れば、会社へ向かう人だかりと
その人だかりをかき分け
死に物狂いで急ぐ人もいる。

お昼の街を見れば、財布やお弁当箱を持ってランチに出かける
OLさんがいる。

夜の街を見れば、残業帰りの疲れたサラリーマンも居れば
お酒を、飲み気分の良くなったおじさんもいる。

出会いだけではなくて、街を眺めることもこの仕事の愉しみである。
よく観察していると、面白い人間の性格まで見えてくる。

例えば、信号待ちで私が止まっていると。
目の前の横断歩道を歩行者が渡っている。

渡っていると、そのうち歩行者信号が点滅し始める。
そこから人間の面白味が見えてくる。
点滅したことに気づき、
車の邪魔にならないようにと小走りになる方。
点滅したことで、
渡り始めても間に合わないことに気づき元の場所に戻る方。
点滅したことに気づくが、
自分のペースで歩いている方。
点滅してるけど、
急いで渡り始める方。
点滅が終わり、赤になって渡り始める方。

特に変わった光景ではないが、
その渡る歩行者の様子をみると面白い。

「やばいやばい、取り残される!」
と遊び心を持って渡る様子や
「赤になろうと関係ねぇ!」
と自分の道のように渡る様子、
「ちょっとすみません。」
と運転手へ会釈をして気を遣う様子や
ただただ、赤になっていることに気づかない様子。

渡る人の中にもたくさんの違いを感じることが出来る。

歩行者信号が赤で、車の信号が青になっているのに、
大の大人が「私は赤でも渡れます」
と言いたげに渡る様子には驚くこともある。
中学生じゃないんだから。。。

その一つの違いが、普段の生活においても出てくるのだろうと
自分が信号を渡るときもちょっとは意識することもあるが

この間は、点滅から赤に変わる寸前に渡り始めた歩行者に
ホッコリさせられたことがあった。

夕方の銀座、中央通りと晴海通りが交差する銀座4丁目という交差点。
銀座和光という時計台の付いた建物や三越のある銀座の中心と言える場所。
仕事帰りのサラリーマンや買い物帰りのマダム、
外国人旅行者でごったがえす交差点。
いつも通り、人が渡り始めると人の壁で向こう側が見えなくなるほど
大勢の人たちが目の前を横切る。

みんなそれぞれ上を見たり、スマホをみたり、会話を楽しんでいたり、
歩行者信号が青の間は確実に車は通れない(左折が出来ない)。

歩行者信号が点滅し始めてようやく、人の壁が崩れはじめる。

小走りになる方やスマホを見ていて気付かない方、
変わらず我が道という顔で渡る方がいる中で
もう歩行者信号の点滅が終盤になり、赤に変わる、
というときにわたり始めた歩行者がいた。

その方々は外国人旅行者の3人。
案の定、渡り始めてすぐに歩行者信号は赤に変わる。
小走りよりちょっと早めに渡るその三人は、
ちょうど私の目の前を横切るところになった。
その時、その三人のうちの一人、女性の方が
笑顔で手を合わせ、ゴメンナサイといった表情をしながら横切る。

毎日のように街中を走っていれば、何度も赤でも渡る人がいるので
いちいちそこに苛立ちや邪魔だと思う感情は全く抱かずに、
ただ渡り切るのを待っていた私だが
その笑顔を見せて渡って行く歩行者には逆にほっこりした。

なぜなら、それが満面の笑みで謝意を伝えていたから。

謝意を受ける予想もしていなかったし、
まず日本人でそんな人を見たことがない。
日本人だと逆に、嫌がらせか‽と思うくらい
ゆっくり歩き我が物顔で渡って行く輩もいる。

笑顔を見せてくれると思っていなかった私は、
いちおう笑顔で返したが急だったので口がヘの字になっていたかと思う。

そして、思い返してみると、外国の方は表情を豊かにすることが多い。
横断歩道を横切る際や、タクシーに乗りたい時、
外国の方と目が合うと必ず口角を上げて豊かな表情になる。

一方で、日本人は一切表情が変わらない。
表情に冷たさを感じることや、笑顔を見せても作っているのが見える。

その違いと、よく日本が外国から取り上げられる話題について少し頭をよぎった。

災害時、助け合いの心があったり、スーパーやコンビニで暴動が起きなかったり、外国から見ると
「日本人はなんて素晴らしい心を持っているんだ」
と驚かれる様子をメディアで見たことがあるが、
私が感じることは
タクシーでの出会いを含め、外国の方に比べると日本人は他人に冷たい。
全員が冷たいという訳ではないが冷たい傾向にある。と感じる。

冷たいというか
人を疑い過ぎて、とても警戒心が強い。

タクシーに乗るお客様も警戒心の強い方は多い。
遠回りするんじゃないかと、後ろでナビを使って調べている人が
10人に1人はいる。
こちらは一切そのつもりはないのに。。。

その警戒心を解こうにも、警戒心がある人に話しかけると
なぜだか余計に警戒心が強くなる。

そんなことを、笑顔で横切る外国人旅行者を見たときに感じた。

親切心がない、とか
警戒心を持つな、とか
そういうことを言いたいのではなく、

笑顔を見せる。

という簡単なことが実はとても重要な気がした。




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