見出し画像

忘れられへん親父の言葉 。はまったビー玉の意外な取り出し方



僕が子供の頃の話です。

僕は団地に住んでいました。


当時の団地の洗面台は、ちょうど、この見出し画像の写真ような構造でした。


本当によく見るタイプの古い洗面台です。


白い、陶器製の洗面台です。



最近の洗面台であれば、排水口のところにフタのようなものが被さってますよね。

そういうのも無く、穴が剥き出しの洗面台でした。


そして、その穴の中には、大きなものが流れ落ちないように、排水口の入り口から数センチ下のところに金網のようなものがついているような作りでした。


ここで上手いこと物が止まります

洗面台の排水管そのものが詰まるのを防ぐことが出来る構造ですね。




さて、そんな洗面台。


そこで、僕が子供の頃、ちょっとした事件が起きました。







排水口にビー玉を詰まらせてしまった


当時、僕は幼稚園児だったと思います。


ビー玉で遊ぶのが楽しくてしょうがない時期がありました。


いろんなところでビー玉を転がします。


家中でビー玉を転がしていると、ふと、洗面台が目に入りました。


「洗面台でビー玉を転がせば、グルグル回っておもろそう!」

などと思いました。


僕は、洗面台にビー玉を転がし入れました。


ビー玉は、ぐるぐる、ぐるぐる回ります。


「わー!楽しい!」

僕は眺めていました。


ビー玉は、ぐるぐると洗面台の斜面を回りながら下っていきます。


ぐるぐるぐる・・・


そして、最後に

スポッ!


と、排水口に入りました。


・・・


「あ、入ってもうた。。」


僕は少し焦りました。


排水口に指を入れて、ビー玉を取ろうとします。


でも、排水口の内側と、ビー玉の大きさが、ちょうどピッタリでした。

見事にハマっています。


少しだけ、ビー玉の頭は、排水口から上に出ています


でも、全く隙間がありません。



排水口の入り口から、下に数センチのところに金網があります。

ちょうどその金網に支えられており、ビー玉は下にも落ちていきません。



ビー玉を排水口から取り出そうと、何度も試みます。

でも、指を入れようにも、隙間がないので、取り出せないのです。


洗面台にすっぽり入ったビー玉。


排水口から、少しだけ見えているビー玉の頭も小憎たらしい。


どうやっても取り出せませんでした。






2才上の姉がやってきた


困っている僕のところに、2才上の姉がやってきました。


僕の状況を見て、騒ぎ始めました。


「あー!! これは取れへん!」


うわーっと、僕は思いました。

怒られるんちゃうかな、と。


姉は大声で父を呼びました。


「おとうさーん!

 タツオが、排水口にビー玉詰まらせたで!」



父は、テレビの前で寝転がっていました。


しかし、姉の声を聞いて、父がノッシノッシとやってきます。


父は、ゆっくりと洗面台を覗き込みました。

排水口の内側に、ちょうどピッタリのサイズで、ビー玉がはまっています。



僕は

(お父さん、どうするんやろ?)

と思いました。



父は、無言で、玄関の方にいきました。


ゴソゴソ。


何か、探しているようでした。


すぐに戻ってきました。


そうです。

工具箱から、ビー玉を取り出す工具を選んで持ってきたのです。




僕は、

(おお!お父さん、賢い!

 そうか、道具を使えばいいんや!)

と思いました。



父は、何の工具を選んだのでしょうか。



父は、金づちを手に持っていました。

ハンマーです。

釘などを打つための、鉄の金づちです。



姉と僕は、父がどうするのか、じっと見つめました。






父が金づちを振りかぶった


父はずっと無言です。


父は、狙いをビー玉の頭に定めたように見えました。


きっと、ビー玉を金づちで割ってしまう作戦なのでしょう。



父は、ゆっくりと金づちを振りかぶりました


そして、力一杯、振り下ろしました





ガッシャーン!!!!!!




とても大きな音がしました!



僕と姉は、洗面台を覗き込みました。



見ると、ビー玉は無傷でした。



そして、洗面台に、大きなヒビが入っていました。



洗面台に排水口の数センチ横に、金づちで新しく開けられた穴がありました。

さらに、その穴を中心に大きなヒビが入っていました。




排水口とビー玉は、綺麗なほど無傷です。

ビー玉は、何もなかったような顔で、今も洗面台の排水口におさまっています



そのビー玉の5センチぐらい横に、たった今、父の金づちによって新たに開けられた穴と大きなヒビが入っていました。


その新しい穴とヒビが、こちらを驚いて見ているようにも感じました。




( おわ。。。 )

僕は息を飲みました。


僕と姉は、ゆっくりと父の顔を覗き込みました。



すると、父は、ゆっくりと、とてもゆっくりと、口を開きました。


そして、小さいが、はっきりした声で、こう言いました。







「 手が すべった 」







・・・・・


僕と姉は、顔を見合わせました。

お互いに、同じことを考えていたと思います。


( 手が・・・・


  すべったんや・・・・・)



僕は、もう一度洗面台の大きなヒビに目を落とします。



( 手が、すべったんや・・・ )



父は、くるりと後ろを向いて、またノッシノッシと歩いて玄関に行きました。


ゴソゴソ。


工具箱に、金づちを直したようでした。



そして、何事もなかったようにテレビの前で寝転がりました。






言わずもがなですが、団地ですので、賃貸の家でした。






父から学んだこと


今思えば、あの時の父のはっきりした言い方は、父の強い意図があったように思います。


「すべったのは手であって、俺(父)は悪くない」


それぐらいの強い主張のようにも聞こえました。

でないと、あれだけはっきりした声は出ないと思うんです。





さて、僕にはそんな衝撃的なことがありました。


それゆえ、僕は幼心に、覚えました。




「 手は すべる 」





これが、僕が父から学んだ

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です。









今日も読んで頂いて有難う御座いました😃




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