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新たな「聖地」のつくり方

column vol.1087

今朝起きると、妻が「夜、コオロギの鳴き声が聞こえた」と言っており、間接的に秋の訪れを感じました😊

(…私には、全く聞こえませんでした…汗)

季節の訪れを昆虫から感じるのも日本の生活文化ですが、この昆虫の力を借りて新たな「聖地」をつくろうとする町もあります。

それが、福島県田村市です。

今年7月に「昆虫課」を立ち上げたことが話題になりました。

〈産経新聞 / 2023年8月1日〉

ちなみに聖地とは、平たく言うと「観光地(名所)」です。

もともとはアニメなどの舞台になった場所を「聖地巡礼」として旅することがきっかけになりました。

そんなわけで、本日は昆虫の事例を皮切りに日本各地で行われたている「聖地化」についての話をさせていただきます。

「昆虫」の聖地を描く福島県田村市

「昆虫課」を立ち上げた福島県田村市ですが、もともとは全国有数の葉タバコの産地だった場所で、カブトムシクワガタが多く生息。

同市と合併前の旧常葉町が30年以上前から「カブトムシ自然王国」を掲げてきた経緯もあり、昆虫の聖地化を目指すことになったというわけです。

そんな同市が先月、市内の昆虫関連の拠点施設「ムシムシランド」移転させ、新装オープン

新たにカブトムシと触れ合えるエリア珍しい昆虫と記念写真が撮れる昆虫館を備えたこともあり、夏休みに入り親子連れで賑わっているそうです。

また、昆虫課が今特に力を入れているのが「インセクト・ツーリズム」

定員は1日20人ですが、こうした草の根運動的な地道な啓蒙活動が深い理解、深いつながりを生んでいくことになるでしょう。

関係人口を創出していく上で、今後も注目したい事例の1つです。

他にも福島といえば、伊達市中高生の柔軟な発想力を味方に地域の魅力を高めている事例もあります。

今月「第12回全国高校生地方鉄道交流会」を開かれたのですが、鉄道好きの中高生を主役にローカル鉄道の「阿武隈急行」を活用した地域活性化の企画募集を実施。

〈福島民友新聞 / 2023年8月19日〉

参加したのは、県内外の11校からオンラインを含め約110人の子どもたち

「阿武隈急行を利用した、地元商店街活性化とは」というテーマでアイデアを出し合いました。

アイデアを考えてもらうにあたって、同市梁川町の車両基地の見学を実施。

ここは普段見ることができない場所なので、子どもたちも目をキラキラとさせたことでしょう。

企画を考えてもらうと、子どもたち自らが地域や鉄道の良いところを見つけようとしてくれるので、よりファン心理を高めることにつながります。

昆虫の聖地も含めて、さまざまな取り組みから多くの関係人口が生まれると良いですね。

お土産を通した地域経済の活性

ちなみに、産経新聞の記事は他にも「eスポーツの聖地」として地元を盛り上げる群馬県の取り組みや、「スケートボードの聖地」を目指す新潟県村上市の挑戦が紹介されています。

気になる方は、ぜひぜひそちらも併せてご覧くださいませ。

続いての事例はお土産を通した地域経済活性化の話です。

茨城県日立市にある株式会社常陸風月堂の挑戦に注目してみました。

〈logmi Biz / 2023年7月19日-21日〉

常陸風月堂は和菓子屋さんなのですが、ここで販売している栗蒸し羊羹「万羊羹 常陸」が話題になっています。

何とこの栗羊羹、1本1万円もし…、「日本一高級な羊羹」と言われているのです…(驚)

常陸風月堂

実は、茨城県の栽培面積・生産量日本一

代表的な品種は12品種、細かなものまで含めると20品種まで増える、まさに「栗の聖地」なのです。

その歴史は確かなもので

三栗の 那賀に向へる 曝井の 絶えず通はむ そこに妻もが

と、日本最古の歌集『万葉集』にも、この茨城の地での栗の句が詠まれているほど。

その茨城の栗の中で一際存在感を放っているのが「飯沼栗」です。

この栗の特徴は主に2つで、1つはその大きさです。

いばらきwebタウン

普通の栗は1つのイガの中に3つ実が入っているのですが、飯沼栗は大振りの1つの実のみ

しかも、その大きさは500円玉を凌駕します

そして、もう1つの特徴は一般的な栗と比べて甘くて美味しく、かつて元サッカー選手の中田英寿さんも好んで食べると聞いたことがあります。

それでいて、栗の全国収穫量の0.2%しか収穫できないほど希少価値の高いものなのです。

…とはいえ、1本1万円で出すことは勇気が必要だったでしょう。

地元の声をふまえた確かな計算

しかし、実は単なる強気ではない確かな計算がされているのです。

その裏付けの1つが「地元民の声」を味方につけたこと。

身近な人たちに話を聞いたところ

茨城県の県産品、洗練されたデザイン、この地にまつわるストーリーが加味された贈答品が欲しい

というニーズがあるということが分かったそうです。

希望の価格帯は5,000円~1万円

この「地元の誇りを伝えられる」ギフトというのはポイントだと思っていまして、ただ美味しいだけではなく、価値を伝えるには価格も重要なファクターになります。

今はネットで何でも調べられる時代。

贈り先の方が「美味しかったから」と商品を調べた際、「うわっ!1万円もするのか!?そんだけ価値のあるものなんだね…」と思ってもらえる。

そのことが、地元の誇りを伝えることにもつながるのです。

この「地元愛」という受け皿にふさわしい商品を乗せたことが、成功につながったことは間違いないでしょう。

もちろん、それを納得させられるだけの飯沼栗の品質常陸風月堂の匠の技があってこそなのですが😊

いずれにせよ、この商品がヒットしたことで、生産者から市場価格に左右されない定価買い付けをすることができているので、地元の農家さんの生活が楽になっているとのこと。

企業、地元民、生産者、みんなが喜ぶ好循環が生まれているのです。

これぞ、地元土産の鏡のような商品ではないでしょうか

今後は「万羊羹 常陸」があることで、「栗の聖地、茨城」ということが、より知られていくことになるでしょう。

ということで、本日は【新たな「聖地」のつくり方】と題して好事例をご紹介して参りましたが、いかがだったでしょうか?

ちなみに、福島県田村市の「昆虫課」は、課長に就任した市のゆるキャラ「カブトン」以外に専従職員のいない仮想部署ということを最後に付け加えておきます。

実際は観光交流課の職員さんが昆虫に関する情報発信やイベント企画を展開しているそうです。

こうした小さな取り組みがいつか大きな成果に結び付いていく。

地域活性だけではなく、会社経営のイノベーション事例としても大変参考になる取り組みでした😊

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