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革新を生む「SFプロトタイピング」

column vol.1173

今年はイノベーションデザインの仕事が多いので、頭の中がずっと「未来思考」になっているのですが…

未来思考といえば、最近注目が高まっているのが「SFプロトタイピング」です。

〈Qbook / 2024年3月22日〉

SFプロトタイピングとは、その名の通り科学的な空想・フィクションのストーリーテリング手法や思考法を用いて、未来の可能性を探求し、新たなアイデアを考え出すこと。

「SF思考」は聞いたことあるかも、という方もいらっしゃるでしょう。

なぜ、こうした思考術が広がっているのか?

今日はその背景実例をご紹介したいと思います😊


既成概念を打ち破る思考術

未来を考える上で科学的根拠は押さえておきつつも、架空の状況で発想するため、現実的な制約を受けにくくなるというメリットがあります。

また、SF映画コミック小説といったコンテンツを作成する枠組みを利用するため、抽象的なアイデアを具体的なイメージとして視覚化しやすいのが特徴です。

そして描いた未来の世界からバックキャスティングで、マイルストーンを設定していく。

そうして、未来までの道筋をストーリー立てていくというわけです。

日本でSFプロトタイピングSF思考を初めて紹介した書籍が、2013年に刊行された『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング(PROFESSIONAL & INNOVATION)』

インテル発ということで、製品開発の現場をもちろんのこと、教育分野、都市計画、ビジネス戦略策定など、さまざまな場面に広がっています。

また、既存の問題に対する解決策を探求する際にも役立ちます。

未来の状況を仮想的に設定し、その中で課題や障壁を想定することで、よりクリエイティブな問題解決が可能に。

新たなアイデアやコンセプトを導入することで、業界や市場に革新的なアプローチをもたらすこともあるのです。

日本に「SFプロトタイピング」会社が設立

この手法を使ってイノベーションサポートを行っている会社もあります。

『Web3とメタバースは人間を自由にするか』『キュレーションの時代: 「つながり」の情報革命が始まる』など、テクノロジーと社会の関係性を書いてきたジャーナリスト・佐々木俊尚さんと、SF作家小野美由紀さんが代表を務める「株式会社SFプロトタイピング」です。

〈Forbes JAPAN / 2024年4月3日〉

佐々木さんは今、SF思考が求められる理由をこのようにご指摘されています。

技術の進歩があまりに早すぎて、意識が追いつかなくなっているためです。自動運転に生成AI、Web3。テクノロジーが次々に生まれるなか、自社の技術で新しいものをつくりたいが、何に踏み出せば良いのか分からないという悩みがあるんじゃないかな。

さらに、「会社が自己表現の場所になってきた」ことも挙げていらっしゃいます。

単にお金を儲けるためではなく、サービスや製品を通じて、自分が描く未来をつくろうとする人が増えている。

バーパス・ミッションが重要視されていることからも、分かりますね。

では、実際どんな取り組みを行っているのでしょうか?

SF思考で気づく本心

例えば、下着メーカーのワコールでは、新事業に挑戦するべく、その可能性を探るSFプロトタイピングを実施。

最初に「2050年の身体」というテーマで発想してもらったそうです。

すると

老いがなくなり、病気の心配もなくて、不老不死で幸せ

という、理想の世界が浮かび上がったとのこと。

確かに一見、夢のような未来ですが、次の問いにハッとさせられます。

「本当にあなたは不老不死が幸せなのか?」

確かに、ただ長く生きるのは…と思いますし、辛い状況なら尚更…と考えてしまいますね…

ワコールの社員の皆さんも、そう思ったようで、最終的には

「何歳になっても友達がいて欲しいから、年を取っても人とのコミュニケーションが円滑にできるツールがあったらいい」

という答えに行き着いたようです。

確かに理想とは、深く考えないもの

例えば、「お金持ち」もそうです。

きっと、お金持ちになったから幸せになれるかどうかは、人それぞれだと思います。

ちなみに、物欲のない私にとっては、お金というと「安心」というイメージが近いかもしれません。

人生は、まず悩みや義務などに意識が奪われます

時折、SF思考で夢や理想を描き、深く考える時間をつくるというのは実は想像以上に大切なことなのかもしれませんね🤔

高校生が思い描く「理想の仕事の世界」

最後はSFプロトタイピングのように未来のシナリオを考える教育現場の取り組みについてご紹介したいと思います。

高校生が起業家や社会人の講演を聞きワークショップや体験授業に参加する「アントレプレナーシップ兼社会人講演会」が先月、滋賀県の国際情報高校で開催。

1年生6クラス、約240人が参加しました。

〈びわ湖大津経済新聞 / 2024年3月14日〉

同校卒業生を中心としたメーキャップアーティスト学生起業家滋賀県議会議員シェアハウスオーナーといった方々10人が講師となり、仕事内容や起業した動機などを講演

その後、生徒は参加した講演(2つ選択)で

「この会社で働く人を増やすにはどうしたらいいか」
「どんな職場なら働きたいか」

などを考えるワークショップを行ったのです。

社会に出ていないからこそ固定観念なく理想を思い描くことができるわけで、この時考えた未来の姿は、きっと自分の仕事観の原点となり、いつか社会に出て見失った時のヒントになるかもしれません。

こうした経験が、ますます社会の中で増えていくと良いですね。

また、講師側にもメリットがあったようです。

企画を担当した同校卒業生の中野龍馬さん

「去年は講演を聞くだけだったが、今回は体験やワークショップを取り入れ、自分がその会社で働くとしたらどうするかを考えてもらった。生徒たちからの大人とは視点が異なっているアイデアをもらえるので講師にもメリットがある」

と語っており、実施の手応えを感じていらっしゃいます。

正解不正解がないことを深く考える機会をつくる。

予測不能なVUCA時代を生き抜くための思考習慣として、非常に重要なことだと改めて思いました。

それでは、また明日。

そして、良い週末をお過ごしくださいませ😊


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