「コンセプト」が切り開く未来
column vol.818
本日、当社社長、谷口正和の新刊『擬態社会』がオフィスに納品されました。
〈擬態社会〉
社長の本を手にする度に我が社のコンセプトが頭に浮かびます。
「社会や企業の課題解決をデザインする」
社長の何かに触れる度に、社員皆がコンセプトを思い出す。そんな会社だからこそ40年以上やってこれたのでしょうね。
そのことを改めて感じたのですが、「コンセプト」ということで言えば、最近とても刺激を受けた記事あります。
プレジデントオンラインに掲載されていた東芝の新社長、島田太郎さんの記事です。
〈PRESIDENT Online / 2022年10月13日〉※無料会員登録で閲覧可能
〈PRESIDENT Online / 2022年10月14日〉※無料会員登録で閲覧可能
「抽象化」して伝える
僕より頭の良い人は社内にいくらでもいる。
と、謙遜されつつも、島田社長は頭の良さよりも重視する社長の資質を「コンセプトを立て伝える力」と語っております。
東芝は言わずと知れた大企業。
社員、お客さま、取引先、国や地域社会、そして株主と、複数のステークホルダーが存在する巨大な船の舵取りをしないといけません。
それには皆が向かいたい「コンセプト」を指し示さないといけないのですが、つくり出す上で大切になるのが「抽象化」とのこと。
抽象化とは、「複数の情報に共通する要素を抜き出すこと」を意味します。
重要ではない細部の情報を取り除き、物事の本質を捉えるための思考法です。
例えば、東芝の長期ビジョンの中にある「SHIBUYA型プロジェクト」という言葉があります。
この言葉には島田社長はこんな想いを込めています。
渋谷の街は今、大変貌を遂げています。何百万人も行き来する状態を止めることなく、根本的に変えようとしている。これはまさにわれわれと重なります。モノを売る総合電機の会社から一転、データサービスの会社へと業態を変えながらも、顧客の事業は止めない、投資家の期待に応えるという思いを、「渋谷の街のように、いくつものステップを経てビジネス(電車)を止めずに会社(街)を再生する」という形で表現しています。
この長い文書のままだとなかなか頭に定着しませんが、それを端的に「SHIBUYA型プロジェクト」と言われれば、とりあえず記憶はされていく。
でも、記憶することと腹落ちすることは当然違います。
では、腹落ちするためには何が必要なのでしょうか?
失敗させても「経験させる」こと
もちろん、誠心誠意説明し続けるということは大事でしょう。
人はそんなに簡単に自分が考えているようには理解はしてくれません。
何度も擦り合わせて理解できることもあります。
一方、説明だけで腹落ちすることも無いような気がします。
島田社長は、だからこそ「経験させる」ことが大切だと仰っていらっしゃいます。
スポーツだって、音楽だって、見てるだけ、話を聞いているだけよりも、実際やってみた方が遥かに理解できます(体得できます)。
それはウチの社長も同じ考えで、常にコンセプトを発信し続けている人なのですが、同時に社員に経験させることを重視しています。
例えば、15年ぐらい前に突如「これからは“クラブマーケティング”の時代だ」と語り、これからは「好き」で集まる時代になると示唆していました。
企業も「顧客」づくりではなく、「ファン」づくりをしないといけない。
そのことを社員皆に理解させたい。
そう思った社長は、私たちは先行学習(先行投資)として、「好き(趣味)」をテーマにした自社ビジネスを次々と立ち上げさせました。
代表的なクラブビジネスが、ハワイライフスタイルクラブです。
ハワイが好きな人に、日本にいながら365日ハワイ気分で毎日を過ごせるための情報やイベント、アイテムを提供していく。
私たちは当時、何だかよく分からないでやっていましたが、今は「ファンマーケティング」「コミュニティマーケティング」という言葉で、そういう時代の到来を実感している。
おかげで今、ファンマーケティングを軸にした企業サポートを行うことができています。
当社ではクラブマーケティングのみならず、さまざまなコンセプトから生まれた自社企画を先行投資として経験(学習)してきましたが、同時に数々の失敗も繰り返してきました。
しかし、その失敗の歴史が結果的にサステナブルな会社をつくっている。
やはり「経験」に勝るコンセプト理解は無いのでしょう。
具体的な「ベネフィット」を示す
再び、東芝の島田社長の話に戻りますが、やはり人が信じて動き続けるためには具体的な「ベネフィット」を伝えることが重要だと思います。
先ほどの「SHIBUYA型プロジェクト」というコンセプトも、社長のやりたいことが分かっても、それを行うことで自分たちにとって「どんな良いこと」が待っているのかが見えなければ、モチベーションも上がりません。
島田社長の記事を読んでいて、私が東芝の社員だったら一番気分が上がるなと思うのは、その未来を目指せば「東芝は再び世界に冠たる企業になれる」というメッセージです。
今はGAFAの時代ですが、島田社長はこれらの企業に対して「技術レベルで言えばわれわれのほうが原子力や量子といった難しいことをやっている」という自負がある。
一方で、それでもGAFAがトップランナーとして走っているのは、巨大なプラットフォームに集まる膨大なデータを有効活用しているからだと分析されています。
であれば、データ収集と活用で勝れば良い。
GAFAがデジタル世界だけに対し、東芝には店舗のレジに使われるPOSシステムやエレベーター、照明など、実世界のデータがある。
つまり、「CPS(サイバーフィジカルシステム)」分野を突き詰めれば「GAFAに勝てる」と信じています。
それが叶うかどうかは分かりませんが、「世界に誇れる企業になる」という希望に、私が東芝社員だったらワクワクするでしょう。
「世のため、人のため」が最大の誇り
そして、島田社長が何よりも共感しているのが東芝の経営理念である「人と、地球の、明日のために。」という言葉です。
結局は、No.1であること以上に「世のため、人のため」になっていることが社員一人一人の最大の誇りになると思います。
ステークホルダー経営という視点で言えば、もう1つご紹介したいのが現代ビジネスに掲載されていたIBM社長、山口明夫さんの記事です。
〈現代ビジネス / 2022年10月24日〉
〈現代ビジネス / 2022年10月24日〉
新しい社会や人に役に立つテクノロジーを徹底的に研究開発で作り上げて、それを世の中に役に立つ形で提供して行く。そういった企業になろうと。そして世の中をより良く変えていくカタリスト(触媒)になる。
この想いを社員と共有し合って、実現されようとしています。
社会貢献が先で、利益は後。
もちろん企業なので利益を上げていかないといけませんが、お客さまにとって役に立たないものを提案したら、絶対にビジネスがおかしくなると山口社長は考えており、数字を厳しく求める米IBMのプレッシャーの中、覚悟を持って理想を追求していらっしゃいます。
当社の社長も「文化経済」という言葉を使い、文化(社会に役立とうという想い)が先、経済(利益)は後から付いてくると何十年も言い続けていました。
そんな想いを自分が次の時代に繋いでいけたら良いなぁと考えています。
…と、最後は再び当社社長の話に戻ってしまいましたが…、本日は書籍納品記念ということでご容赦いただけると幸いです…。
島田社長の記事、山口社長の記事、双方とても胸アツ記事ですので、ぜひこちらも読んでみてくださいませ。
それでは、よい週末をお過ごしくださいませ。
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