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100年企業の国

column vol.1195

100年企業の国

実はそのトップに立つのが、日本であることはご存知でしょうか?

〈東洋経済オンライン / 2024年1月1日〉

帝国データバンクの調査によると、日本創業・設立100年を超える企業の数は2022年に初めて4万社を突破

昨年9月時点で4万3631社に達しています。

さらに、今年は新たに2019社が加わる予定とのこと。

もちろん、倒産する企業もありますが、差し引きで毎年1000~2000の会社が設立100年を迎えているわけです。

では、なぜこの国には100年企業が多いのか?

日本の100年企業が持つ強みを体系化、理論化している元中小企業庁長官シン・ニホン パブリックアフェアーズ前田泰宏さんは、その理由に「温故」を挙げていらっしゃいます。


100年企業の源泉は「温故」なある

温故知新「温故」です。

前田さんは「新しいことを学ぶこと」である「知新」については

経営学は、移り変わる時代の中でビジネスモデルを修正し、マーケットを睨み、テクノロジーを駆使しながら利益最大化を図ることが基本である

としつつも、それは「代替可能」であると指摘しております。

例えば、何か新しい技術を導入する際に知財を持っている企業をM&Aをしたり、外部の会社に委託することができるからです。

一方、「温故」はそうはいきません。

前田さんは、「日本の老舗企業は必ずといっていいほど次の3つの理念を所持している」と指摘します。

(1)社会課題の解決
(2)自然との共生
(3)利他の精神

これは、今の時代の言葉でいえば「ステークホルダー経営」ですね。

顧客株主だけではなく、地域地球環境従業員取引先まで至るまで、全てのステークホルダー(利害関係者)に配慮する。

自社の経済的利益だけではなく、社会的利益も同時に大切にする経営哲学ですが、日本にはもともと「三方よし」の精神があるわけです。

世界が学ぶ日本の「温故」

温故の一例として前田さんが挙げていらっしゃるのが、長野県伊那市にある寒天製造会社「伊那食品工業」

同社の名前を知らなくとも「かんてんぱぱ」の名前は知っている方は多いのではないでしょうか?

創業1958年なので100年企業ではないのですが、ある「地域に配慮したルール」があります。

それは「右折禁止」のルール。

こちらは

車で来社した人が右折して敷地内に入ろうとすれば、前方から来た車や、後続の車列を一時的に止めてしまう

ということを防ぐためにつくられたもの。

朝の通勤時間にこの現象が何度も起きれば地域社会に多大な迷惑が及んでしまいます…(汗)

だから通勤時間に車で来た方は敷地をぐるっと回って左折して入ることを徹底しているわけです。

でも、同社の方々はこうした三方よしの精神を当たり前のように守っているそうです。

その背景には、経営哲学として、どんなに業績が苦しくても「リストラなし」「給料カットなし」という従業員を徹底的にに守る姿勢を貫いていることも大きな要因となっている。

よく利他の精神「自分が満たされている状態あってこそ発揮できる」と言いますが

会社からの愛があれば、会社が「誰から愛されているか」ということは自然と頭に浮かぶわけです。

こうした利他の連鎖により、創業以来48年連続で増収増益を達成。

トヨタを始めとする大企業の経営幹部毎年学びに来るほどの企業に成長しているのです。

ちなみに「視察」ということで言えば、近年、中国香港日本の100年企業をめぐるツアーが組まれ、経営者たちがこの国に続々と訪れています

前田さんはこの傾向を

気候変動やパンデミックが頻発する現代で、西側諸国も東側諸国も、日本の100年企業が持つ危機を乗り越える力、持ち堪える胆力がどこから生まれてくるのか気になっているのだ

と分析しています。

そして私個人が最近、100年企業の「三方よし」精神を感じた経営者の方がいらっしゃいます。

富士フイルムホールディングス 代表取締役社長・CEO、後藤禎一さんです。

100年企業とは「人間を育てる学校」

同社は創業1934年ですので、あと10年100年企業の仲間入りとなります。

フォーブスジャパンの後藤社長のインタビューを拝見すると、やはり確固たる温故があると感じるのです。

〈Forbes JAPAN / 2023年12月11日〉

富士フィルムのステークホルダー経営を象徴するのが「ヘルスケア事業」

同社の医用画像情報システム「SYNAPSE」は世界シェアナンバーワンであり、AIを用いた医療システム機器を導入している国は22年度で93ヵ国に達しています。

後藤社長が特に熱意を持って取り組んだのが、新興国での結核検診の支援活動です。

世界では年間1000万人近くが結核に罹患するとされ、そのうち400万人は検査すら受けることができず、150万人近くが命を落とすのが現状となっています…

そこで、富士フイルムは小型で持ち運びがしやすく操作も簡単な携帯型X線撮影装置と、AI技術を活用した診断支援ソフトを組み合わせ、医療アクセスが乏しい国や地域の人々に結核検診の機会を届けているのです。

後藤社長は17年間アジアでの駐在経験があるのです、それはそれは苦難の連続だったそうです…(汗)

ベトナムシンガポールインドパキスタンなどなど、人種も宗教も異なる人々の中で営業から経理人事代理店の指導など、あらゆる業務に目を行き届かせる毎日…

それでも

半歩でもいいから前に出ようという気持ちが運を引き寄せるのだと思います。逃げに入ると運も逃げていく

と、心を奮い立たせ、会社の利益社会の利益を生み出していったそうです。

…それは単なる個人的な野心だけでは踏み止まれない状況だと思います…

実際、「いつかは富士フイルムの社長になってやろうと思ったことはないのか?」というインタビュアーの問いに対しても

即座に「ない、ない、ない」と否定しつつ、次のようなことを仰っています。

「でも、燃えるような思いで大きな仕事をやりたいというのはあったよね」

…胸アツです、、、

温故のない会社では、このような人財が育ち、次の経営者になっていくことはないと思います。

そう考えると、100年企業になる会社とは「人間を育てることのできる会社である」とも考えることができる。

ふと思い出すのが、当社の先代社長がよく言っていた「この会社は、社会の学校でありたい」という言葉です。

当社も今年で43年

私が社員を育てるなんておこがましいですが…、それでも「人間が育つ」環境はつくっていきたいと思うのです。

そうして気がついたら、たくさんの人財が育ち、100年が経っている。

そんな日を見届けられたら、嬉しいかもしれません!

…でも、待てよ…

2081年は…、105歳か……。

…まぁ…、

…とりあえずは、温故の精神を大事にしてみますね…(汗)

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